第10話 王太子さまいやそれどころじゃない2



「子供の私が選べる選択肢で一番ましだと思ったからですかね」


「一番まし?」


「ええ 私の実家は貴族としては ほんとに普通の家で


裕福でもなければ貧乏でもない平均的な中流貴族でした」


「上流貴族だったなら家のために結婚を優先させられたかもしれません」


「下流貴族だったなら家のために裕福な貴族か平民の妾にでもさせられたのかもしれません」


「中流貴族でしかも私は三女です、親が私に求めていたのは


早く家を出て食い扶持を減らすことだけでした」


「いや親を非難してる訳じゃないんですよ


成人しても独り立ちできない ごくつぶしを養えるほど家は裕福じゃないですしね」


「子供の私に選択できるのは 結婚して家をでるか 騎士団に入って家をでるか」


「なので騎士団に入ったんですよ まあ騎士団に入った人間にはよくある理由ですね」


考えてたのと全然ちがうな、騎士団にあこがれて入ったとばかり思ってた


「騎士団ってなんとなくって言うか、そんな簡単にはいれるんですか」


「騎士団には簡単には入れませんよ、簡単になれるのは見習いですね」


「見習いになるだけなら王国の市民権を持っていて魔法の才能があれば誰でもなれますよ」


「見習いから騎士になるためには叙勲試験クリアーしなければなりませんけどね」


「へえそんなものが面白そうですね」


「実際にやってみるとそんない面白くないですよ(笑)」


「はあ 試験は難しいんですか? どれくらいの人がクリアーできるんですか?」


「そうですね試験は難しい時もあれば簡単な時もありますね


試験に受かる割合は3人に1が受かるくらいかな」


「簡単な時があるんですか? なんで試験の難易度がちがったりするんですか?」


「それはですね王国騎士団に所属することは たしかに名誉なことなんで」


「騎士団に名前だけでも入れときたい上位貴族の坊ちゃん用とかですかね(笑)」


「見習いは随時募集してるんですよ、しかも給金はでないんですけど


衣食住は保証されますから」


「中流から下級の貴族の子弟はかなりの確率で見習いになりますね」


「なるほど ただで食わせてくれるならそれは いきますよね」


「そうです ただし見習いになってから1年以内に


叙勲できなければ追い出されますけどね(笑)」


「無制限に居られる訳じゃないんですね」


「なるほど 先生さっき止めたいみたいなことこと言ってましたけど 


退団することはできないんですか?」


「いや本気じゃないですよ ちょとした愚痴です(笑)」


「まあ騎士団を退団するには条件があります」


「死ぬまで抜けることができない鉄の掟でもあるんですか」


「そんな掟はありません(笑) そうですね戦闘ができない程のケガをするか」


「10年ほど兵役をすれば退団できるようになります」


「10年結構ながいですね」


「そうですね でも10年務めて退団すれば暮していける位の年金もでますしね」


「へえ 結構待遇いいんですかね?」


「ええ かなりいいですよ なので さっきも言いましたけど中流 


下流貴族子弟の人気職なんですよ」


「でも騎士団って 危ないんじゃないですか?」


「ええ 危ないですよ 詳しくは知らないんですけど


年間で50人から100人くらいは 死んでるんじゃないでしょうか?」


「え それって結構死んでませんか?」


「新人もそれくらい入りますから数の上下はあんまりないですかね」


「わたしは今 勤続9年なので 要塞での勤務が終われば退団できるようになりますが」


「退団はしないんですか?」


「えぇ いまのところするつもりは ありませんね」


「なんでですか?」 「もう危ない真似しなくても暮していける


年金がもらえるんですよね?」


「それは」


これは聞いてはいけなかったのかな


「別に話したくないなら」 「いや いいですよ話します」


「死んだ婚約者の最後の言葉が  おまえは戦いつずけろ だったからですよ」


いきなり重い 聞かないほうがよかったかな?


なんて言えばいいのか 思いつかない


「たぶん その言葉に深い意味はないんでしょう 


彼は目の前の敵と戦えって言いたかっただけかもしれないですしね」


「彼を愛していたんですね」


「それは どうだったんでしょうね?」


「いまでも 彼を愛してたのか私にはわかりません」


「彼が死んだとき じつは私も死にかけていました 


私が助かったのは光の魔法をわずかにでも回復に回すことができたからでしょうね」


「1週間近く 生死の境をさまよいました 


苦しくていっそ早く楽になりたいとさえ思いました」


「でも私は助かりました もう命の心配はないって回復士に言われたとき 


つくずく思ったものです 人間ってなかなか死ねないんだなってね」


「そしてその3日後に彼の死を伝えられました 


そのとき思ったのが 人ってあっさりしんじゃうんだな」


「そのとき なんでそんな思いしかでなかったのか? 私は彼を愛していたのか?」


「彼の最後の言葉を守るのは 彼を愛していたと思いたいからなのかもしれません」


「先生は彼を愛してましたよ」


「そう思いますか?」


「ええ 間違いないです 先生は彼を愛していました」


「なんで そうおもうんですか? お嬢様」


「そう思うからです」


「理由になっていませんよお嬢様(笑)」


「偉大な先人は言いました 考えるな感じろ  


先生は考えすぎですよ 感じてください先生の彼への愛を」


「感じろですか ふふ そうですね(笑)」


「感じろか お嬢様ありがとうございます でも 私は戦いつずけます」


なにを言ってもこの人の決意は変わらないだろう


やっぱりカッコいいな もし男だったら すてき滅茶苦茶にしてって抱き着いているところね


いや女でも迫られたら流されてしまうな(笑)


「先生、今日はありがとうございました」


「いえ お嬢様こちらこそ」


「あと少しの間ですけど先生よろしくおねがいしますね」


「いえ お嬢様こちらこそ(笑)」


要塞に行けば危険なこともあるかもしれない、でも私には何もできない


いや私が何かする必要などなどないだろう、先生は立派な大人なのだから


無事に帰ってきてくださいね 先生

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