1-11:部室教会
部活申請の話が出た木曜の内に、
活動要旨については
言及されていない役職については部長に美青、副部長に琴宝、会計に
そして翌日、代表の数名――美青、琴宝、風文子、英の役職四名に加えて映画委員で編集班も兼ねる灯理を加えて担任の
「了承。帰りのホームルームの時までに部室を用意します」
――恐ろしくスムーズに話が進んだ。なんなら伝会は活動要旨をチラ見した程度でしかない。
なんにせよ、生徒ができる範囲は終わり、放課後になると――。
「では、ホームルームは終わりますが、ここにいる全員と一年四組から四名――映像美術研究会の皆さんは部室に移動してください」
伝会は部室の場所を告げる事なく言った。ついてこいというサインと共に。
そして、伝会は
「四人共もう教室の外まできています」
「丁度いいですね。あなた達の部室は部室棟には用意できませんでした」
するりと教室を出ていきながら、伝会は話す。美青達はひとまずその後についていく。美青が教室を出て見てみると、PINK MAD SICKの四人はきていた。「ついてきて」という羊日の後から合流する。
「あの、ツゲ先。部室棟じゃなかったらどこなんすか」
「
思ったより実際的な理由だった。
美青はそれぞれがカメラを回しているのを確認して、英と灯理に手招きした。二人共美青の所にくる。
「英か
美青が尋ねると、灯理が英を映した。
「いや有名な話よみおちー」
途端に英は話し出す。
「元々愛殿ってミッション系の学校だったんだけど、運営のあれこれが変わってそういうのがなくなったの。まあそこのごたごたは知らんけど、その頃使ってた建物については敷地の中に入ってる。まあ……」
英はそこで伝会の背中を見た。
「綺麗な状態で残ってんのかは知らないけど」
灯理は分かっているらしく、伝会を映した。
「定期的に業者が入って掃除しているそうです。今の時点でも軽い掃除くらいで済む筈ですが、今後の清掃についてはあなた達が分担で行なう事。これが唯一の使用条件です」
校舎の玄関まできて、伝会はにこりと微笑んだ。
「まあ部室の清掃って事なら……どれくらいの広さなんですか?」
美青は部長として尋ねた。
「人数がいないと細部までの掃除は厳しいでしょうね。二十四人として三分割して八人は一度の清掃に必要です。しかも最低値」
伝会の解説で、美青は大分大掛かりな所を示されたのを理解した。伝会のいく先には大きな建物が見える。確かに教会と聞いてぱっとイメージできる外観で、伝会は鍵を持ってその扉を開けた。
「さあ、入ってください」
美青達が入ると、中は確かに掃除に八人はいる……正確には全員でやりたいくらいに広く、内装も手の込んだ所だった。なんの用途なのか二階への階段まである。
「建物としては二階建てですが、二階についてはここの関係者が住んでいた所です。設備はありますが、泊まる際は私に申請するように。くれぐれも――」
伝会は全員を見て、笑顔に恐ろしい迫力を満たした。
「文芸部の
引き合いに出される程、
「では……掃除に関しては済んでいますね。活動を決めるならば活動を決め、それ以外にやる事があるならばやってください。初回なので私も監督します」
伝会は正面の教壇から外れた、グランドピアノに附属する椅子に座った。
「じゃあ、まず確認」
美青は全員の前に立ち、話を始めた。
「現時点で決まってる事として……英、メモして全員に共有して。あとホワイトボード調達するって言うメモ」
「うっす」
美青は(一応書記なので)英に頼んだ。
「部長に私、副部長に琴宝、会計に
美青は続いて、カメラを回している計六人を示した。
「次に、
美青は自分の手で六を示した。
「で、それぞれ映画委員が撮った映像を纏める編集班が六人。綿原さんをチーフとして
「はい、おさらい終了。こっからもうちょっと踏み込むよ」
美青が一通り話すと、琴宝が割り込んできた。
「まず、編集班は基本的に所属班の映画委員と連携するけど、唯一、
「よろしくお願いします!」
美青が見ると、風文子が
「で、常に一つの班で動くってのも難しくはあるけど、何か大きな動きがある時はなるべく映画委員六人、もしくは私か美青を呼ぶ事。そこで撮影を行なう。ってか今現時点だと私と美青は二人で一つのカメラしか持ってないけど、週末で美青の分のカメラ届くから撮れるのは合計八人に増える」
美青は昨日、琴宝が勧めてきたので同じ物を通販で買った。週末に使い方を覚えて、来週からは自分も撮る側に回られるだろう。
「編集について、風文子から」
「はい」
編集班長である風文子は、カメラを同じ班の
「編集班とはしていますが、私含め全員本格的な物については経験がないので、外部に上げるのに最低限の物を行なう方針です。幾つか後で動画を共有するので、『このような物』という認識は持っていてください。また」
風文子は三つ、指を立てた。
「監督役の
風文子はそこで琴宝を見た。琴宝は頷く。
「私からは以上です」
風文子は元の位置に戻り、白生からカメラを受け取った。
「で、編集までできた動画については昨日美青が作ったチャンネルで随時公開。チャンネルそのものの管理人に紫姫」
「任せなさい」
紫姫は親指を立てた。
「ただ、映画である以上見られないと意味がないっていうのもあって、何人か広報係を置きたいって話はある」
それは美青も琴宝から聞いていた。美青自身はあまり頓着がないが、女優という立場もある琴宝からすると重要な事だろう。
「英はどうかなって話はあったんだけど、どう?」
琴宝は英に顔を向けた。
「あー、だったらふーみんの時みたいに私が広報班長やって、あと各班から一人選ぶって感じでも大丈夫?」
「まあ英の方で選べるならその方がいいかな」
「じゃあふーみん班は私として、初の班から毬ちゃん、お慶さんの班から十鋒、灯理の班からしづきち、みおちーの班の方とPMSの皆さんについては私からだと選びづらいんだわ」
英はすぐに四人を決定した。
「広報くらいなら私がやっても……」
「あーいやいや、みおちーは全体のバランサーだから……」
「私がやるってのもなんか違うよね」
「お琴さんがやるとみんなマジになりすぎるじゃん。プロ女優の宣伝って。同じ理由で覇子さんを外したくらいだし」
美青はあっさり自分と琴宝を外され、千咲季と羊日を見た。千咲季については映画委員に入っており、羊日の方は編集班に入っているので確かに選びづらい。
「うーん……私の場合影響力がないし、羊日ちゃんはそもそも忙しいのに編集班だしね……」
千咲季の言う通りな事情があるのは確かだ。千咲季は前から愛殿にいるわけではないし、羊日の方はバンド活動と並行しているので選びづらい。
「ピマシの広報は私がやりまーす!!」
流れを完全に無視して、PINK MAD SICKのドラマー、
「おー、おはやちゃんやってくれるんだ。確かにできそう……もう一人か」
「編集班みたいに別の班から取ればいい」
何気なく言ったのはPINK MAD SICKのベース、
「まあそれも手か。英、クラスの中から一人選ぶなら?」
「んー……」
「待て、私がやる」
英が悩んだ時、初の妹である終が手を上げた。
「あれ、終ちゃんいいの?」
「姉様が映画委員として、弓心が編集班としてそれぞれやっているのに私だけ何もしないわけにはいかない」
「じゃあ決定じゃん」
英はすぐにメモした。
具体的な事についてはほぼ決まったと言っていい。ここから、と考えると美青は気が遠くなる。
「係はこれくらい。それぞれどういう事をするかの相談については私か琴宝、もしくは両方に話して。で……」
美青は全員を見回した。
「映美研の活動だけがそれぞれのやりたい事ってわけじゃないと思うから、ひとまず部活やりたい人はそっちの方も考えて欲しい。その上でそれぞれの軌跡を記録してく……この活動については私・琴宝・映画委員の六人に話しつつやる。これが基本的な行動方針になるかな」
「って事で、週明けそれぞれやりたい事募るから、今日はここらで解散。英は記録纏めてグループにアップ、それと広報班の基本方針決めて。風文子は先生と部費のすり合わせ、それ済んだら帰って動画の方を共有。私と美青はやる事あるから千咲季、カメラお願い。各自、後で英の記録を共有するから目を通して、風文子の方で出す動画がどんな感じかもチェックは忘れずに」
琴宝は纏める時はかなり纏めてくれるなと思いながら、美青は少し呼吸が楽になるのを感じた。
その日は解散となり、月曜にそれぞれやりたい事を決める事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます