作業ゲーは得意なもので
唐突だが、一つ自分語りをさせてくれ。
俺は初見でRPGをする時は、必要以上にレベリングをするタイプだ。
……いや、ついつい無心でレベリングしまくっちゃうタイプだ。
シンボルエンカウントなら目に映る的は片っ端から倒すのは当たり前、ランダムエンカウントであっても、欲しいスキルやアイテムがゲットできるまで延々と戦闘を繰り返し続けるのは日常茶飯事だ。
おかげでボスまでの道中で非効率なレベリングを数時間こなした後、推奨攻略レベルを大幅に上回った状態でボス戦に挑むなんてことはザラだった。
つまり、何が言いたいかというと……やり過ぎちゃった。
サンタクロースが持っているような巨大な麻袋二つにぎっしりと詰め込まれた魔物の素材——倒した際に霧散せずに残った魔物の一部を見つめて俺は、内心頭を抱えて項垂れていた。
こうなった経緯をざっくり説明すると、こんな感じになる。
1.最初はノルマ+α程度を目処に、普通に魔物を倒し始める。
2.入手できる魔物の素材の部位が原作のドロップアイテムとはちょっと異なることに気が付く。
3.『ヘイスト』かけてスピードアップ、ついでに術発動までの時間短縮の練習とドロップアイテムの検証を兼ねてどんどん魔物を倒すようになる。
4.そして、やってるうちにどんどん楽しくなった末、現在に至る。
ちなみに麻袋は、たまたま近くを通りかかった行商人から譲ってもらったものだ。
もしこれが無ければ両腕に抱えて持ち帰らなきゃならなかった……ってのは、どうでもいいとして。
——どうしよう、これ。
重くて持ち運べないとかそういわけではない。
身体強化と『キーネスト』を重ねがけすれば、どうとでもなる。
問題は、これだけの量を集めてしまったことだ。
このままギルドに持ち帰れば、確実に衆目を浴びることになる。
……正直、もう既に手遅れなような気もしなくはないけど。
多分、俺が魔物を狩りまくっていることは、通りがかった人間に目撃されてるだろうし。
というか、麻袋を譲ってくれた行商人がドン引きしてた時点で手遅れではあるか。
「貴様……妾には、悪目立ちするなと言っておきながら、自分はこの様とは何事か」
ティアマトがジト目でため息を吐く。
くそ、返す言葉がねえ……!
というか、なんで逆に俺が呆れられる立場になってんだよ。
普通、俺が常識を説く側に回るはずだろ。
「お前、ドレイク様の行動にケチをつけるつもりか!」
「ケチはつけておらぬ。ただ、説得力が皆無であることに辟易しているだけじゃ」
「何だと〜! 確かに最近のドレイク様は、よく突拍子もない行動をするけど、どれも全て何かお考えがあってのことなんだぞ!」
「ゔっ!」
ブラム、それ援護射撃のようでフレンドリーファイア……。
今回のやらかしは、単に俺の浅慮が招いただけだ。
だからこそ、その純粋さ故の擁護が逆に心に突き刺さる。
「……そのスライムに免じて、そういうことにしておくかのう。——帰るぞ。腹が空いたしの。その荷物は主が一人で運べ。妾は手伝わぬからな」
「元からそのつもりだよ」
自分でやったことを他人に後始末させるわけにはいかないしな。
「ドレイク様! ぼくもお持ちしますよ!」
「ブラムは持つと潰れそうだからダメ」
「そんなあ……」
がっくしと肩を落とすブラム。
お前の善意は有難いが、この量は頼めないって。
比喩でなく本当に潰れそうだし。
「では、代わりに妾のを持たせてやろう」
「お前は自分で持て!」
夕暮れ、ギルドに戻れば案の定というべきか。
受付嬢が大量の荷物を見て、見事に引き攣った笑みを浮かべていた。
「えっと……念の為、お伺いしますが、ドレイクさん。……これは?」
「……頑張って倒した結果だ」
当然ながら、周りにいる人間もこちらを見て騒然としている。
半日で袋一杯×2(追加でティアマトの分もある)にして戻ってきたら、そりゃこうもなるよな。
話題にされたくないなら数を控えて持ち帰れよって話だけど、ここに来るまでの道中にすれ違った人の反応を窺う限り、やっぱり俺が外で魔物を狩りまくっているのは目撃されていたと見ていいだろう。
だったら下手に隠すよりも、開き直った方がまだマシというもの。
それに外面を気にして、自分からみすみす収入源を手放すのも馬鹿馬鹿しいだろ。
「これだけの量だと大変だろうけど、鑑定してもらってもいいか?」
「かしこまりました。ですが……この量だと今日中には終わりそうにないので、明日のお昼頃にまたお越しください。それまでには、換金も済ませておきますので」
「分かった。じゃあ、また日を改めて来るよ」
本当はこの場で換金して欲しかったが、無理を言って急がせるのも気が引ける。
依頼報酬分だけでも今日の宿代は事足りるはずだし、こんなことで悪評が広まるのも御免だしな。
そんなわけで依頼報酬だけ受け取ってギルドは後にした。
推測通り、宿代は報酬だけで事足りた上、ティアマトの分と合わせて二部屋取ることができたから、部屋は男女で分けることにした。
ブラムからは、ティアマトと一緒は嫌だと猛抗議を喰らったが、見た目成人男性と年端もいかぬ少女が一緒の部屋ってのは、流石に社会的によろしくないので、どうにか説得して渋々ながら納得してもらった。
あと、これを機にティアマトとの親睦も深めてもらおうって狙いもあったりする。
いつまでも犬猿の仲(※一方的だけど)ってわけにもいかないし。
——というわけで、その解決の一歩としてこれから飯に行こう。
俺もめっちゃ腹減った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます