第13話 リームとの夜



 シンタロウがその部屋に忍び込むと

 微かなリームの寝息が聞こえて来るのが解る

 まるで夜這いにでも来たみたいだと

 シンタロウは思ってしまうが、頭を軽く振り

 本来の目的を、まずはたさなければと、思いなおす


 シンタロウは、ベットの横まで移動すると

 リームの傍らに立ち、肩をゆすり始める


「うーーん」リームが目を覚ましたようだ

 リームは徐々に覚醒してるようで

 自分の眼の前に誰かいることに気付くと

 一瞬で目を見開き悲鳴を上げようとするが

 それは、シンタロウの手によって、ふさがれる

 

「リーム、、シンタロウ、、シンタロウ」


 シンタロウは片言の言葉でリームを安心させようと

 自分の名前を繰り返し、リームに聞せ、笑顔をみせる

 リームもようやく気づくと、目をシンタロウにあわせ頷く


 シンタロウはゆっくりとリームから手を放すと

 リームの隣に腰を下ろす

 リームはそんなシンタロウを、少しオドオドしながら横目で見ている


(さて・・・どう話そうかな?)


{いや・・・話す事も決めていなかったのかい?}


(いや、なんとなくは決めていたよ)


{じゃあ、それで良いだろう、早く言いたまえ

 ああ・・・言葉が解らないなら教えてあげるから

 なんて言うつもりなんだい?}


(別にいいよ・・・そんなに複雑じゃないし)


 シンタロウは一回、深呼吸をすると、リームの方を向き口を開く


「リーム・・逃げよう・・・・リーム自由にする」


 シンタロウの言葉を聞いたリームはポカンとした顔をしている

 発音が悪かったのだろうか?、ちゃんと通じていないと思った

 シンタロウは、再度同じ言葉を繰り返してみる


「リーム、逃げよう、リーム自由にする」


 今度はどうだと?シンタロウは、リームに注目する

 リームの方も、さすがにシンタロウが何を言いたいのか理解できたのか

 少し考え込むような顔になるが・・・すぐに答えがだたのだろう

 シンタロウの顔を見ると笑顔になり


「わかりました・・・・ありがとうございます」


 そう言いシンタロウの体に抱き着いてきた

 リームの言葉に感激したシンタロウもリームの体を強く抱きしめ返す

 シンタロウは本当に感激していた・・・大賢者には大きな口を叩いていたが

 実は、少し不安でもあったりした

 でも・・・ついにリームの気持ちも解り自分は間違っていない

 そう確信が持てた


「リーム」そうシンタロウは呟きリーンの顎を持ち顔を上にあげる


 リームもシンタロウにされるがままに、上目使いの潤んだ眼で見つめてくる

 二人は見つめ合い、自然に唇が近づいて行く

 しかし、リームの唇に触れる直前に、シンタロウは思い出してしまう


(あの・・・見ていますか?・・・もし見てるなら恥ずかしいんですけど)


{見ているが気にするな・・・私は、君の初体験の時も一晩中見ていたんだぞ

 今更恥ずかしがるな}


(いや・・・あの時は、自分の一部だと思っていたし・・・それに人に見られても

 興奮してきたりしないんし・・・もしかして大賢者は人のを見て

 興奮する趣味でもあるんですか?)


{人を変態みたいにいうな・・・だてに長生きしてないからな

 人の営みなぞで、いちいち私の心は動かないよ}


 大賢者が気にしないのは、解ったが、そんな事は

 シンタロウには関係なかった

 大賢者に見られながら、続ける気にはとてもなれず

 残念だが今日は、ここまでにしとこう


「リーム・・帰る・・・またくる」


 そうリームに微笑み掛けると

 ベットから立ち上がる

 随分と中途半端なのだがリームも笑顔で

 シンタロウを見送ってくれるようだ

 そんなリームに笑顔で頷きシンタロウは入ってきた窓から消えて行く


{なんだ・・・私の事は本当に気にしなくてもいいのに

 というか・・・私に見られていることに慣れて貰わないとな}


(嫌だよ、なにしれっと無茶な事言い出すんだよ・・・

 なんだよ、見ないって選択肢はないのかよ?)


{その選択肢もあるけど、そうすると君が突然大賢者の

 助けが欲しくなった時とか、しばらく私が気付かなくなるんだけど

 それでもいいのかな?}


(え・・・・・そう言うものなの?)


{ああ・・・・大賢者が都合よく君を助けられるのは

 つねに私が君を見ているせいなんだけど}

 

(そんな、大賢者ってどれだけ暇なの?)


{ふざけた事言うな、私は日常生活を普通にこなしながらでも

 君の監視くらい楽に出来るぞ・・・

 まあいい・・・じゃあ今度から見て欲しくない時はその時に

 言いたまえ、、そのかわり、半日は、何があっても

 助けられないからな、そのつもりでいてくれ}


(解ったよ・・・・)







 あの夜から数日後、シンタロウは表面上は変わらずに過ごしていた

 

「シンタロウさん・・・リームから手紙を預かって来てます」


 リームは字が書けたんだと、まずその事がシンタロウの頭には浮かんでしまった

 マクリムから手紙を受け取り、封をあけ手紙を見ると

 シンタロウは渋い表情になり、いつものように大賢者に助けを求める


(半分くらいなら解るんだけど・・・もう半分が解らないな大賢者なんて書いて有るの?)


 もういつもの事なんで、大賢者からのツッコミはもうない


{そうだな・・簡単に言うと、これからの打ち合わせがしたいので

 近いうちに、来てもらいたいそうだ}


(そうか、確かにリームとも話を詰めておいた方が良いよね

 今夜にでも、行こうかな?)



 さっそくシンタロウはリームの元を訪ねることにした

 

(その・・・大賢者・・・・ームと二人きりでじっくり話したいんで

 遠慮して、欲しいんだけど)


{解った、じゃあ、、明日の昼前まで、消えることにするよ

 じゃあ・・・・気を付けることだ}


 



 あの日と、同じようにマクリム邸に忍び込む

 違うのは、リームの部屋の窓を開けれないので

 軽く窓をノックして中のリームに合図をすると


 中から窓が空き、リームが顔をだす


「お待ちしていました、シンタロウ様」

 

 微笑みながらリームはシンタロウを向かい入れてくれる

 シンタロウも、リームに微笑むと窓から中に入る

 今後の打ち合わせって事で来てるんだけど

 大賢者が居ないと、リームの言ってる事の半分以上が解らないし

 シンタロウの言いたい事も半分以上伝わらないだろう

 

 そんなことはシンタロウも重々承知の上ではある

 今回は、打ち合わせより、長い間会えなかった恋人同士の

 時間を取り戻す、少なくともシンタロウはそう思っている


「リーム・・・・」そう一言いい、彼女の腰を抱き寄せ

 すこし強引に唇を奪うい、そのままベットに押し倒す

 本当に強引だが、シンタロウには我慢の限界なのだろう

 リームも微笑み、そんなシンタロウを優しく抱擁してくれている


 リームとキスを交わしながら、お互いの体をまさぐりあう

 だがそんな、シンタロウにとって幸せな時間は

 それほど長くは続かないようだ

 突然、ドビラが勢いよく叩かれる


「リーム・・・なにか音が聞こえますけど、どうしたんですか?

 早く開けなさい・・・断りもなく、誰か連れ込んだりしていないんでしょうね」


 主人でもあるマクリムの、言葉にリーム慌てだし、シンタロウの顔を

 どうしていいのか解らない、そんな表情で見つめてくる

 

 シンタロウ自身も、マクリムの突然の登場には、慌てさせられる

 間男のように窓から逃げるべきだろうか?

 そんな風に二人が、お互いの顔を見つめてるが何も解決するわけじゃなく

 扉を叩く音と、マクリムの厳しい声は止まることもない


 リームに何か考えがあるのか、頷くと、シンタロウの腕を引っ張り

 なにか荷物を入れる箱なのだろうか?

 人が3人位は入りそうな箱を開けると中を指さし

 シンタロウに隠れるように、促す

 リームの意図がシンタロウにも伝わったのだろう

 シンタロウも頷き、その箱の中に入る

 リームはすぐさま箱のふたを閉めると


 慌ててドアを開けマクリムを部屋の中にいれる

 シンタロウは息を殺し、箱の外の様子を伺うが

 聴覚以外の、情報が無く

 なにやら小声でマクリムとリームが話してるくらいしか解らない

 もしかしたらマクリムになにか怒られているのだろうか?

 そんな心配をシンタロウがしている時


「ガチャン」「ガチャガチャ」


 なにやら、箱の外から音がする

 シンタロウには何の音か解らず、すこし不安になるが

 その後も、さっきと変わらずリームとマクリムの話声が

 聞こえてくるだけだったが


「シンタロウさん」マクリムが突然シンタロウの名前を呼ぶ

 バレたのかとシンタロウは、動くことも出来ずに箱の中で

 じっとしているしかなかったのだが


「ゴー」そんな低い音を響かせ、蓋の一部がスライドする


「え?」シンタロウが驚きスライドして、できた小窓を見ると

 そこからマクリムとリームがシンタロウを見つめている


「すいませんシンタロウをさん・・・元老院からの命令です

 あなたを、逮捕します」


「え・・・・?」


 突然のマクリムの宣言をシンタロウは呆然と聞いている

 たが、そんなシンタロウを見つめるリームの目を見た時に

 シンタロウもすべてを理解する、、自分は裏切られたのだと


 リームは心底汚い物でも見るような目でシンタロウを見つめていた

 そんなリームの目が、裏切りがシンタロウの心に

 悲しみとそして怒りを、沸かせてくる


「くそーーーふざけるなーーー」そう怒鳴り箱を破壊しようと暴れるが

 勇者専用に作った檻なんだろうシンタロウがどんなに暴れようとも

 ビクともしない


 暴れるシンタロウをみてリームやマクリムは抱き合い脅えるが

 シンタロウがいくら暴れても檻が壊れないのを見て、安堵すると

 マクリムは部屋を出て行き

 リームは蔑みの目でシンタロウを見ると


「XXXXXXXXX」シンタロウには理解できないがそう怒鳴り

 唾を吐きかけると、マクリムの後を追っていった・・・・

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