第14話 分岐点



シンタロウがこの狭い檻に閉じこめられて

 結構な時間が経った、外が見えないので

 詳しくは、解らないが、あの部屋から持ち出され

 移動してるのは、間違いないだろう

 それくらいのことは、シンタロウにも解る

 

 だがシンタロウには、できる事は

 この檻の中で、うずくまっていることくらいだ

 

 暫くすると、目的地に着いたのか

 シンタロウを入れた檻が何処かの床に降ろされたようだ

  

 何人かの人間が周りで動いている音がしているが

 それ以上の事が解らずシンタロウを不安にさせる

 

「ザーー」勢いよく、小窓が開かれると

 なにか、解らない液体が、檻の中に流し込まれてくる

 なんの液体かシンタロウには、解らないが

 どんどん状況が悪くっなっているのは間違いが無い

 液体を見つめるシンタロウの目は恐怖に支配される


「シュ」小窓から火種が落とされる

 シンタロウも火種に気付くが、下に落ちるのをただ

 見つめる事しか出来ない・・・・

「ごぉおおおーー」火種が液体に触れた瞬間

 檻の中は炎に包まれ、シンタロウの体を容赦なく焼き始める


「ぐぁあああーー僕の体が、焼けていくーーー誰か助けてくれ

 お願いだもうやめてくれーーー」


 シンタロウの全身はもう完全に炎に焼かれ凄まじい

 熱さと痛みが、シンタロウを痛めつける


 シンタロウは、あまりの苦しみに、気絶と覚醒を

 繰り返し、この苦しみはこの体が燃え尽きるまで

 終ることがないことに気づき・・・絶望と恐怖で

 おかしくなりそうだ・・・

 どれくらいの時間が過ぎたのか、シンタロウには解らない

 もう一刻も早くこの苦しみから逃れる事しか頭にない

 消滅するか、気が狂うか・・・どちらでもいい

 





{シンタロウ・・・・次に気絶したら私がこの体を乗っ取る

 いいな?・・・助かりたかったら、余計な抵抗をするなよ}


 シンタロウが待っていた声がやっと聞こえてくる

 シンタロウは何度も頷き、早くこの苦しみから救ってくれと

 炎の中で悶える、崩れ落ちる


{よし・・・いけるな・・・シンタロウ暫く、体を借りるぞ}


 シンタロウの体を焼く炎は何も変わらない

 大賢者も同じ苦しみを味わうが


{シンタロウと違って私は痛みを無視できるが・・・・

 随分と頑丈な檻だな・・・・破るのは随分と骨がおれそうだなこれは

 そうだな・・・・シンタロウを焼きつくす為に

 大量の可燃物が、この檻の周りにはあるはずだ

 それを使わせてもらうぞ}


 大賢者が集中を始めると、シンタロウの体を焼く炎は

 揺らめくのを止め、大賢者の支配をすぐに受け入れる

 

「さあ炎の蛇よ・・・すべてを飲み込め」


 そう大賢者が呟くと檻の中の炎が小窓から外に飛び出す

 大賢者はその様子を見つめながら

 この檻をどうするか考え始め・・・頷くと


 大賢者は手を小窓から出すと、錠前があると思われるほうに

 手を伸ばす・・・・勿論この檻を作った者たちは

 手を伸ばせば届く所に錠前を作ったりはしていない

 だが、構わず大賢者は手を伸ばす

 大賢者にはこの体が自由に使える

 そう・・・・この体は普通じゃない

 手がどんどん伸びていき、大賢者は錠前を見つけ

 そのまま錠前の鍵穴に指を突っ込むとアッサリと開けてしまう

 

 蓋を開け檻からようやく、大賢者も出ることができる

 大賢者が周りを見回すと、炎の蛇が、荒れ狂い、可燃物が燃え上がる

 蛇の暴れぷりと、どんどん大きくなる火の勢いに大賢者は満足すると

 すぐにこの場を逃げることにする






{ようやく起きたか・・・・シンタロウ}


 シンタロウは慌てて飛び起き自分の体を抱きしめるように震えだす

 

{シンタロウ、落ち着くんだ・・・君の体はもうなんともないし

 ここは安全だ・・・まず落ち着くんだ}


 大賢者の言葉はシンタロウにはまだ届いていない

 全身を焼かれ続けたんだ、こうなってもしょうがない

 大賢者もそう思い、暫くシンタロウが落ち着きを取り戻すのを

 待つことにした



 震えながらも、ようやく状況が理解でき始めたのか

 シンタロウも周りの事を気にすることが出来るようになる


(大賢者・・・・ここは何処?)


{下水道だよ・・・・さて落ち着いたなら行動するぞ、すぐに首都から逃げようか}


 そう言われるても、シンタロウはなかなか動き出せないだせないでいる


{シンタロウ、ひどい目の合ったのは解るが、このままここに居ても

 何も解決しない、もう共和国は敵になったんだ、

 ここに留まるのは、危険なだけだ}

  

 大賢者の言葉に、シンタロウが動けないのは別の訳があった

 その訳を、シンタロウは震えながらもハッキリと口にする


(いやだ・・・このまま逃げれるもんか・・あいつらに復讐してやる

 元老院に、マクリムにサイラスに・・・・リームに)


{いや・・こう言っては悪いけど・・・それは逆恨みってやつだよ

 私は前に言ったはずだよ・・共和国の敵になると

 それにも構わず君は行動した・・その結果 

 君は捕まり、火炙りになった・・・・

 私には元老院も、サイラス、マクリム、、

 そしてリームも罪があるとは思えないよ}


 大賢者の冷めた言葉にシンタロウは衝撃を覚える

 信じられない、そう思い、大賢者に反論する


(たかが奴隷女一人を、攫おうとしただけじゃないか

 なんでそんな事、くらいでここまでの目に合わないといけないんだよ?)


{たかが奴隷女一人の為に、共和国の法を破り、共和国から逃げようとした

 初代勇者と一緒になり、共和国の脅威になる可能性を元老院に見せたんだ

 初代クラスの脅威になる前に消そうと思うのは、当たり前のことだよ}

 

(なに言ってるんだよ、僕は火やぶりにされたんだよ

 敵になったって言うなら、僕にもやり返す権利が 

 あるよね?・・・・それにリームは僕を裏切ったんだ絶対に許せない

 ・・・・そうだ。XXXXXXXXってどんな意味

 ちょっと違うかもしれないけど・・・・僕に唾を吐きながらリームが

 そう叫んでいたんだ?)


 確かにシンタロウの発音はおかしく、微妙に聞いたものとは違うんだろうが

 ニュアンスで大賢者にはリームが何を言ったのかは、だいたいわかった

 教えるべきか、迷うが誤魔化しても、どうせシツコク聞いてくるだろう

 大賢者は諦め、シンタロウに教えることにする


{微妙に違うかもしれないが・・・・・その気持ち悪い顔を二度と見たくない

 ・・・・直訳するとこんな感じかな}


 シンタロウはまた膝を抱えだし、静かに涙を流し始める

 ・・・・シンタロウは笑い始めると、静かに口にしだす


(絶対に殺してやる・・・皆殺しにしてやる)


{シンタロウ最初に言っておくぞ・・復讐には私は一切力を貸さないからな}


 シンタロウは動揺すると、大賢者に食って掛かる


(なんでだよ?・・・僕は裏切られて、火炙りにされたんだよ

 少しくらい力を貸してくれてもいいじゃないか)


{さっきも言ったが君の逆恨みには、付き合えない

 裏切られたと、言ってるが君は裏切られていない

 共和国に敵対するような行動したんだから

 殺され掛けるのは、当たり前の事だし

 サイラス、マクリム夫婦は共和国市民だ

 その二人が、共和国に敵対行動を取る君を罠に嵌めるのは

 それも当たり前・・・・・リームにしても

 君以外の誰の目から見ても彼女は君を嫌っていた}


(そうだとしても・・・リームはあの夜、僕を拒まなかったし

 僕を好きな振りをして、罠に嵌めたんだ・・・絶対に許せないよ)


{シンタロウ、夜中に突然忍び込んでくる男に、話を合わせるのは

 なんの力もない女にとっては、取るべき当然の行動だと

 私は思うんだけどね}

 

 大賢者の冷たい指摘にシンタロウは暫く、言葉を失うが

 攻めるように口を開く

 

(じゃあ、なんでそう教えてくれなかったんだよ)


{あの夜のリームの行動については、私もすこし迷っていた

 もしかしたら君の方が正しいのかもしれない・・なにせ女の気持ちは

 摩訶不思議だ、同じ女ながら、私にも理解できない時もある

 第一、私は君の母親じゃないんだよ・・・1から10まで君に

 教えないといけないのかな?}


(母親とは言わないけど、もう僕の保護者みたいなものじゃないか

 ちゃんと言って貰わないと・・・その・・・)


 もう大賢者は呆れる事しかできなかったが

 ふと考える、もしかして自分にも、まずい所があったのか?

 そう考え込んでしまうが、だがその前に


{解ったよ・・・じゃあ保護者として言うけど

 復讐など止めて、すぐに逃げるぞ、いいね?}


(それは嫌だ・・・せめてリームには僕が味わった苦しみの

 何十分の一でも味合わせないと気が済まない)


 平行線に大賢者もいい加減、嫌になってきた


{シンタロウ、選びたまえ、今すぐ逃げるか、復讐をするか

 逃げるなら、私は力を貸す、復讐する気なら

 私は君からもう手を引く・・・・どうするね?}


 これが大賢者の最終宣告だとシンタロウにも理解できた

 復讐を諦めきれないが、大賢者の助けがない状態で

 また捕まれば、今度こそあの地獄から逃げられず

 死ぬことになるだろう・・・・・


 シンタロウは、悩みながらも答えをだした

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