第12話 マクリム邸侵入
マクリムは少々困っていた
目の前で、頼みごとをして来るこの男
つまりシンタロウに・・・・
シンタロウがこの研究所に戻ってきて、1週間になる
死んだと思われていた、シンタロウが突然戻ってきたのには
驚かされたが、それはマクリム個人としては嬉しい驚きだったので
構わないのだが、元老院や研究所の上の方は、ちょっと事情が違ったようだ
「マクリムさん?」
シンタロウが少し心配そうな表情を浮かべマクリムを見つめている
たぶん、自分の言葉がちゃんと通じてるか、それが不安なんだろう
シンタロウがこの研究所にきてから、7~8ヶ月になるが
大賢者の通訳がなければ、日常会話もおぼつかない
「シンタロウさん、、そのお話は理解できました、、
少し考えますので、お待ちくださいね」
慌てているのだろうか、随分と早口でまくし立ててしまう
マクリムもその事に気づき、ゆっくり言い直そうとかとも、思うが
どうやらシンタロウはマクリムの言葉はちゃんと理解できてるようだ
なぜかこちらの言う事は、どんなに早口でいっても理解できている
そういえば今までも、そうだったとマクリムは、思いなおす
それにしても、リームを譲って欲しいと言い出すとは
シンタロウが、リームに固執しているのは、なんとなく解ってはいたが
奴隷女が欲しいなら、シンタロウにあてがっても構わない
それくらいの予算はすぐにでも出る
ただ、リームは、明らかにシンタロウの奴隷になることを嫌がっている
マクリムにとっても、リームは忠実な奴隷でなるべくなら
彼女の希望を聞いてあげたい、とも思っていたので
マクリムはその旨をシンタロウに打診してみる事にする
「あの、シンタロウさん、リームは私達夫婦の大事な奴隷なのでお譲り
することは出来ませんけど、奴隷女が欲しいなら、用意することも出来ます
よろしければ、奴隷商人の所に一緒にどうでしょうか?」
シンタロウは返事をせずに、考え込み始めた
そんなシンタロウを見て、マクリムも黙って、お茶を飲むことにする
(つまり、、マクリムさんは他の奴隷を用意するから
リームは渡せないって、言ってるんだね)
{まあ、そうだね、、もうマクリムの言っているとおり
リームは諦めて、他の奴隷を買いにいかないか?}
(駄目だよ・・・リームを捨てることなんて出来ないよ
彼女は僕を待っているはずだし)
{いや何度もいうけど、リームは君に惚れていないから
それに、奴隷女なんかいくらでもいるんだ、彼女に
こだわる必要もないだろう}
大賢者の言葉にシンタロウはこれ見よがしに両手をあげ
お手上げのポーズを取ってみせる
(大賢者には愛や恋が、解らないんですから、もう黙っていてよ)
大賢者の方も、もうお手上げだと思っていた
どれほど言っても、シンタロウは納得しそうにない
無言のシンタロウがする、いきなりの奇行に、驚かされるが
経験上、見ているだけでいい、それがマクリムの出した答えだが
ようやくシンタロウもどうするか決めてくれたようだ
マクリムの方を見ると首を横に振りながら口を開く
「どうしてもリームはだめ?」
あいかわらず喋る方は、簡単な単語の羅列に過ぎないが
シンタロウの言いたい事はよく理解できたようだ
「困りましたね・・・・回この話は終わりにさせてください
サイラスや、リームと話し合ってみますから」
そうマクリムはシンタロウに話すと立ち上がり、部屋を出ていってしまう
{サイラスやリームともう1回話し合ってみるそうだ}
シンタロウは少し考えると
(リームを攫って逃げよう)
ついにそう言いだしたか、大賢者はもう見捨てたい気持ちになりかけたが
{シンタロウ、、それをすると共和国の法に触れる前にも
言ったと思うが、シンタロウは共和国の市民権が無い
市民権の無い者が共和国市民の財産に手を出すと
死刑だ・・・もう共和国を敵に回す覚悟が必要になるよ?}
大賢者はいちおうの忠告と確認をしておくことにする
シンタロウは頷き
(解っているよ・・・それに僕と逃げればリームも奴隷から解放できるし
やっぱり、これしかないよ)
{で、、どうする気なんだい?}
大賢者の問いかけにシンタロウは考えると
(まずリームの所に行って、僕と逃げるように説得する・・・そして
共和国から逃げよう)
{そうか・・・で・・・具体的には、どうするつもりなんだ?}
(・・・・・・どうしたらいいのかな?)
もう見捨てようかな、、大賢者は本気で悩むが
{そうだね、、まずどうやって、この街からリームと逃げるか
私の所に逃げるとして、逃走経路はどうするか
あとリームは君と違って、休息や食事が必要になる
それもどうするか・・・・最低でもこれくらいは
考えとく必要があるだろう}
(そうか・・・・ちょっと時間がかかりそうだし
取り敢えずリームに僕と逃げる心構えをしておいてくれって
伝えておくかな)
{いや、そんなのはリームを攫った後でも、構わないだろう
リームも諦めがつくだろうしな}
(ほんと大賢者は、人の気持ちってのがないよね
いつになるにしても奴隷から解放されて僕と一緒に
なれるって、希望を言っといたほうが、いいに決まっている)
{まあ・・・君の好きにしたまえ・・・}
(どうしようかな・・・やっぱり直接あって、話さないとな
・・・・大賢者、マクリムさんの家は何処か解らないかな?)
{そうだね・・・・前それらしいことを話していたから
なんとなくなら、解るけど・・・これから向かってみるかい?}
いやに乗り気な大賢者の言葉に驚かされる
(え・・・それでもいいけど、、どうしたの?、反対すると思っていたのに?)
{反対しても、聞かないし、もう面倒だからとっとと、終わらせたくてね}
大賢者もやけくそになってきたのか、吐き捨てるように言い始める
{で、どうするね? これから行くかい?}
(うん・・・ぜんは急げだね)
{シンタロウ・・間違いないな・・・そこの屋敷だ結構大きいな
やっぱり、夫婦そろって研究所に勤めるほどのエリートだし
かなり稼いでいるんだろうな}
たしかに大きな屋敷だがシンタロウには
それほど興味を引かれなかったようだ
(いや・・・それよりも、どこから忍び込もうか?)
{君ならそこの塀でも普通に飛び越えられるだろう}
投げやりにも聞こえる大賢者の言葉を聞き
塀を見てみる、確かにシンタロウの倍ほどの高さ
いまの、シンタロウなら問題が無いだろう
(ねえ、、さっきから投げやり過ぎない?)
{そうかい?・・すまないが、もうどうでも良くなってきてね}
(冷たいな・・・僕の幸せの為なんだから、少しは力を貸してくれても
いいじゃないか)
{いや・・・十分貸していると思うけどね・・・そんなことより
早く済まそうか・・・この屋敷の中には4人しかいない
二人はマクリムとサイラスだろうから同じ部屋にいる
二人は、たぶん違うだろう・・・別々の部屋にいるうちの
どちらかだが・・・・そこまでは解らないな
シンタロウさっさと忍び込め・・・これ以上は近づかないと
解らないぞ}
(解った、、)そう一言シンタロウはいうと
少し、後ろにさがり、勢いをつけ塀に飛びつく
{見つけたぞシンタロウ・・・間違いないリームだこの壁の向こうにいる}
(壁の向こう)シンタロウは何処か忍び込めるところがないか
周りを見回し始める・・・・(お、あの窓ぽい所から入れないかな?)
シンタロウは窓に近ずくと、飛び上がり窓の取っ手を引いてみるが
当たり前の話だがカギが掛かっている
(カギが掛かっているね・・・どうしようか?)
{止金とかで止めてる、単純な物だな、私が開けるから
力を抜け、両腕をちょと借りるぞ}
シンタロウが頷くと、すぐに両腕が勝手に動き出す
(いてー)両腕はなぜか髪の毛を2~3本抜くとその髪の毛を
窓の隙間に差し込む・・・・
{開いたぞ・・リームはまだ寝ている、騒がれないうちに済ませろよ}
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