第8話 ノゾミさんの話は、本当に長い
「さて、喉も潤ったことだし、話の続きしようか」
飲み物と言っても、単なる水だが
ノゾミは自分で
シンタロウはまた奴隷の女に飲ませてもらい
一息つくと
「そうだね・・・なるべく簡単にするけど、解らない事があれば
質問してくれ、、重要な事を話すんでちゃんと最後まで聞いて
欲しいのだけど、大丈夫かな?」
解ってくれたのか力強く頷く、シンタロウをみて
ノゾミは、ほんの少しだけ心配そうな表情になるが
すぐに、真剣な表情に戻すと、話を始めることにする
「120年前、初めてこの世界で召喚魔法が成功した
成功させたのは、魔術研究所の研究員のマクガバンと言う男だ
ああ、当時はまだ王立魔術研究所と言う名前だったけどね
王政が倒れ、共和制に移行したのはその30年後辺りなんだけど
それはまた別のお話だね
話を戻すと、マクガバンは長年、召喚魔法の研究をしていたんだけど
なぜそんな研究をしていたと、思う?」
ノゾミは話を切るとシンタロウの顔を見つめながら
問いかけてみる・・・もしかしたらちゃんと
話を聞いているのか、心配だったのかもしれない?
たいするシンタロウは、少し下を向きながら
真剣に考えだすと、独り言なのか答えなのか
どちらともとれる言葉を出し始める
「王政って事は王様がいたんだよね?・・たぶん国家の危機があって
国を救うため?・・・それとも王政が倒れたってことは
王様が殺されたか、追放されたか、したんだよね?
王様が自分の身を守るためにとか?」
シンタロウの答えを聞き、ノゾミは安心したのか
少し微笑みながら
「不正解だ、、実はその研究は、王の許可を貰わずに
勝手にやっていたんだ・・・
なぜ、マクガバンは許可も得ずにそんな研究を続けていたか
その理由はね、、好奇心のためだ・・・
実に単純で、納得のいくものだ、
マクガバンは、異世界の知識を知りたい、その欲求だけで
召喚魔法を生み出したのだよ、、」
シンタロウには意外だったのだろう、
シンタロウの考えでは、世界を救う為とか
逆に世界を支配するためとかそんな事を思っていたのに
そんな、シンタロウの顔を見て
ノゾミは少し苦笑すると
「期待していたのとは違ったろう?・・・すべてとは言わないが
偉大な発見、発明は純粋な好奇心で生まれる事がほとんどだ
それに・・この研究に関していえば、王や研究所の上の
方は、反対していたらしい」
「なぜ・・・反対を?」
「それも単純で納得できる理由だよ・・・
恐怖だ、未知の物、未知の知識に対する恐怖だ
わかるだろう?」
言われてみれば、確かにとシンタロウも思うが
前から少し思っていたのだが、ノゾミは話が長い
「ごめん、ノゾミさん、もうちょっと短めにお願いできるかな?」
そのシンタロウの一言に、ノゾミは一瞬で不機嫌な顔になり
しまったと、シンタロウは自分の言葉に後悔する
ノゾミは説明好きなんだ、気分良く話してもらう為にも
止めるべきじゃなかった
「あ、ごめん・・・その、でそのマクガバンって人がノゾミさんを召喚したんだよね?」
ノゾミはまだ不機嫌な顔をしているが、気を取り直すと
「そうだ・・後でマクガバンに聞いたんだけど、当時は本当に私を
異世界から呼び出すことが出来たと思っていたらしい」
「でも・・そううじゃなかった?」
シンタロウの言葉にノゾミは頷くと
「話を飛ばさずに、時系列どおりに話す事にするわね
まず・・・マクガバンと私は、王都を半年くらいで逃げ出す事になる
さっきも少し言ったけど、当時の王は私の存在を危険な物と思っていた
そしてマクガバンの作った召喚魔法もね」
喉が渇いたのか、ノゾミはカラのコップを後ろに控えている女に見せる
女は頷くとノゾミのコップに水を、注いでくれる
それを見ているシンタロウも、自分も喉が渇いた事に気づかされ
目線でアピールしてみることにする
「あの・・・気づいたよね?・・・僕にも飲ませて欲しいんだけど?」
「彼女は私の命令が無いと、君に水も飲ませてあげることも出来ないのよ」
そうシンタロウに説明するとノゾミは、女に指示を出してくれた
水を一口飲むとシンタロウは、もう十分だと首を横に振る
「やっぱり手が無いのは不便だね、、早く元に戻って欲しいんだけど」
シンタロウの愚痴にノゾミは苦笑しながら
「でも・・・もう痛みは無いだろう?」
そういえば、なにも感じない、たしかに不思議だ
勇者として召喚された特典だと、シンタロウは考えてしまうが
「そう同じ経験をしたことがある、もう随分と昔の事になるけど
マクガバンと一緒に逃げている時ね・・・
私は死んでもおかしくない、はずの傷をいくつも受けた
でも死なない、傷を受けた時は痛いが・・暫くすると痛みを感じなくなる
それどころか2~3日もすればなにも無かったかのように、元通りになる
私とマクガバンは、そのとき初めて考え始めた
こんな生き物が存在するのか?
私は本当に異世界から召喚された生き物なのかとね?
残念な事にマクガバンは、蛮族の支配地域に入ったところで
病に倒れ、その答えにたどり着くことが出来なかったけどね
まあ、私自身もイロイロあり、その事を考えるのは暫く
後回しになったんだけど」
「イロイロってノゾミさん、蛮族を支配とかしてたの?」
「いいや彼らと契約したんだよ、、彼らの土地に住まわせてもらう
代わりに、彼らの依頼があれば、彼らの敵と戦うとね
100年前はその契約を結んだ部族が結構いたんだけどね
残念な事に、その契約はすぐになくなり
今はその契約を続けているのは一部族だけになってしまったんだけどね」
「なんでですか?」
「当時の私には蛮族の野蛮な、やり方が許せなかったからだよ
確か王都から逃げ10年後くらいだったかな?
私は沢山の部族と一緒にナウ河を越え当時のリアン王国に攻め入った
王都近くまで迫り、王国の息の根を止める寸前までいった
だけど、そこで進軍は止まり蛮族は引き上げることになる
当時の私が略奪や女達を犯して、いる蛮族を殺し
ほとんどの蛮族と、そこで手を切った、からだよ
話にちょっと関係ないけどその10年後くらいに
リアン王国は亡び、リアン共和国が建国されることになるんだけど
もちろん魔術研究所は残った」
ノゾミは話を切ると、昔の事を少し思い出したのか
目を閉じ思い出に、心を奪われているようだ
コミュ症のシンタロウも多少は空気が読めるようになったのか
そんな、ノゾミをせかすことなく、黙ってノゾミが話を
再開するのを待っている
「すまなかったね、あまり関係のない話しばかりしてしまって
ここからは関係ある話だから・・・・
共和国になり・・・支配者は元老院に変わったんだけど
前の支配者同様に、私への恐怖がどうしても消せなかった
からなのか再び召喚魔法を使ったのよ
召喚魔法を使った男の前はルスチェル、マクガバンの弟子だった男よ
私とマクガバンを裏切った男でもあったのだけど
マクガバンは彼を恨んではいなかったわね
召喚魔法の知識を残すための、しょうがない決断だったんだろうとね
事実かれの行動のおかげで召喚魔法は今まで残っている訳だしね
彼がどう立ち回ったのか知らないけど
再び召喚魔法が成功し2代目勇者が誕生したわ
2代目はかなり繊細な男だったようで、とても人を殺せるような男じゃなかった
元老院の言う事を疑わず
私を蛮族の女王、平和な共和国を支配しようとしている
邪悪な存在だと信じて疑わなかった
私を倒すことが、平和の為、そう思ったんでしょうね
無理をして人を殺し、私の所まで来た
正直・・・彼と初めて会った時には、もうかなり、おかしくなっていた
彼は私が何を言っても聞く耳を持たない、どうしても私と戦い私を倒す
そう言って向かってきたわ・・・・でも
戦いといっても、私の敵じゃなかったわね
私が一方的に痛めつけるだけ・・・でも彼は死ななかった
・・・・体をバラバラにして頭だけになっても、まだ死ななかった
まあ最終的には、すべて焼き尽くして存在を消したんだけど
こんな生物が存在するはずがない・・・そもそも私たちは
生きていないのでは?・・・そう私は疑いは強くなったのよ
その時はまだ結論がでなかったのだけど
今はもう出ている
私達の体は、血と肉を完全に模倣したエネルギーで出来ている
私達は意識を持ったエネルギの塊、その意識にしても
異世界の人間のコピーに過ぎない
それが100年近く、自分や他の勇者の観察を続けた
わたしの結論よ」
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