第4話 5代目勇者になります
大賢者は失望していた、シンタロウに対してではない
シンタロウにたとえ、ほんの少しとは言え、期待して
四カ月も付き合っている自分に対してだ
更に大賢者は思う、、自分の教え方が悪かったのだろうか?
この四カ月、言語に、剣術を中心にした体の使い方
まったく、進歩が無かったわけではない
だが、言葉は、ジェスチャ交じりで何とか簡単な事が伝えられる程度
体術は・・・殆ど変わりがない
まあ、シンタロウが勇者召喚による
体力アップの効果があるから、人並外れたパワーが出せるので
並みの相手なら問題がないのだが、、
想定されている敵は、初代勇者、並では無いと
いくら言っても、しょせん、かませ犬だから問題ないと、
すぐに修練を止めてしまう・・・
大賢者はその事こそが一番の問題だと思っていた
シンタロウを観察しての感想は・・・
ハッキリ言えば、何も見るべきものが無い
体力も知力も・・・並以下だと
それなのに、努力もしない・・・
なぜか努力しなくても、自分は強くなり、周りにいるすべての人に
褒めたたえられ、好かれると、どうも本気で思っている
大賢者にはまったく理解できなかったが・・・もうそう言う物だと思う事にしたようだ
(なあ、大賢者、リームの事なんだけど・・サイラスさんが、邪魔してるのかな?
最初の夜以来、1回も、この研究所に来ないし・・マクリムさんに
リームの事を聞いても、誤魔化されるし・・・・どう思う?)
大賢者はまたかと、深い溜息を付きたい衝動に駆られるが
我慢すると、シンタロウにいつもと同じ答えを言う事にする
{シンタロウ、褒美が欲しいなら、まずやるべきことを、した方が良い
何もしていないのに、報酬を要求するな}
シンタロウは不機嫌そうな顔をすると、大賢者に食って掛かる
(言ってる事は解るけど、でも、リームは僕に会いたがってるはずだし
もう恋人同士なわけだしさ)
このシンタロウのポジティブすぎる思考も大賢者には理解できない
なぜもう恋人同士になっているんだ?
そんな約束や、会話の一つでも交わしたのか?
シンタロウがリームに好かれるような事を何かしていた、記憶もない
いや逆だろう・・・大賢者の考えだと
リームが来ないのは、彼女が来たがらないからだろう
彼女が嫌がるので、優しい主人である、サイラス、マクリム夫婦が
研究所に呼ばないのだろう・・・それが大賢者のだした答えだったのだが
シンタロウには、言っていない、言っても無駄だし・・・
大賢者はあの夜を思い出してみる・・・ひどい夜だった
初めての経験だし、下手で速いのは、仕方がない
リームだってそこは解っていたろうし、最初の方はリームの
リードで上手くいっていた・・・問題だったのは、そこからだ
シンタロウの尽きない性欲と、どこから得たのかしらないが
その手の知識だけ、豊富だった事だ・・
そんな体位もあるのかと、大賢者も関心させられたが
力ずくで、人形みたいにイロイロな体位を試させられるリームは
痛々しく、最後のほうは、ぐったりとして、なんの反応もしなくなったのだが
シンタロウは、それは絶頂による失神だと思い込んでいる
大賢者にも奴隷ヒロインとは、何かようやく理解が出来た、恋人とか言ってるが
シンタロウにとって都合が良い物、人として扱っていないんだろうと結論付けた
たしかに奴隷なので、その扱いも、間違ってはいないし
この件にかんしては、そううるさく言う必要も無かろうと
{シンタロウもう一度言うぞ、リームは、サイラス、マクリム夫婦の奴隷だ
欲しいなら、彼女を買い取るか、譲ってもらうしかない
その後なら、恋人にしようが、嫁にしようが君の好きにするといい}
(うーーん、、結局そうなるのか、、かといって僕にはお金が無いしな
どうすればリームを譲ってもらえるかな?)
シンタロウのいつもの、都合が良すぎる物言いにもなれた大賢者は
すぐに答えをだすと、シンタロウに伝える
{金を稼いだらどうだ?・・・この前来た元老院の使い、そいつの言うとおりに
蛮族と戦えば、報酬も、もらえるぞ}
シンタロウにも大賢者の言う事は解っている
元老院の使いが来た時から、考えてはいる
シンタロウは、いいきかいだと大賢者に疑問をぶつけてみることにする
(元老院の約束は信用できるのかな?、いいように利用されて
用済みになったら4代目みたいに殺されないか?)
大賢者は驚愕した・・まさかシンタロウの口から、そんな当たり前の
疑問がでるとは思っていなかったからだ
あまりの事に・・・暫く思考が止まったほどだ
(あの・・・・大賢者?)
{ああ、すまない・・・そうだな元老院の約束か、勿論全面的には信用できない
だが、、君が元老院の敵にならない限り、約束は守られるだろう
この国の民は、可能な限り法と約束を守る、それは元老院も例外ではないよ}
(でも、、4代目は、、元老院に利用されて殺されたんだろ?)
{いや、違うよ、本当に政治的な敵対関係になったんだ
どちらが倒されるか、そんな関係だった、}
前にもサラッと聞いていたが、元老院と敵対して殺された4代目は
シンタロウにとっても、それなりに気になる存在だったのだけれど
問題が複雑そうで、あんまり詳しく聞こうとは思えなかったのだが
(そうなんだ・・・ちなみに4代目は何しようとしてたの、
簡単に教えて欲しいんだけど)
{いや・・・簡単にって難しい事、言ってきたね・・・そうだね
貧富の差を縮めようとして、大地主の土地の所有に上限を
定め、小作人にその土地を安く与えようとした・・・これ以上は
簡単に説明できないな}
シンタロウは大賢者の言葉に、少し考え込むと
(なあ、、結局失敗したんだろそれ、、それがなんで
共和国軍の弱体につながるんだ?)
大賢者は、悩んだ・・・・かなり長い説明が必要になるが
一から話して、シンタロウはちゃんと理解できるだろうか?
そもそも最後まで聞いてくれるだろうか?
大賢者の決断は早かった
{それは・・・そういう物なんだ}
(そうか・・・そういう物なんだな)
シンタロウにも大賢者の気持ちが通じたのか、それともたいして興味も無いのに
聞いたのかは不明だが、取り敢えずは、納得したようだ
{話を戻そうか、、元老院との話しだけど、どうするつもりなんだい?}
(それなんだけど・・・もう1回、元老院のだした条件を教えてくれないか)
{そうだね・・・まず元老院は、君に蛮族と初代勇者からの防衛を求めている
その見返りに、リアン共和国の市民権と年金5万テルを出す
ちなみに一般的な家族4人、奴隷二人の中級家庭の一年で
必要なお金は年2万テルだそうだが・・・わかったかね?}
大賢者の言葉を反芻すると
(なあ・・・それってどんなに働いても稼ぎは変わらないってこと?)
{そうだね、この条件だとそうなるね}
シンタロウは難しい顔になると
(最低5万で、、働きによってはもっと貰えるようにならないかな?)
{それは交渉次第だと思うけど、決めるのは私じゃないから、何ともいえないね}
たしかにそうだな、そんな顔をシンタロウはする
報酬の話はともかくシンタロウにはまだ、心配な事がある
どちらかといえば、そちらの方が、問題に思える
(なあ・・・蛮族って言っても、見た目は普通の人間なんだよな?
それとも・・・・化け物みたいな姿をしてるのか?)
シンタロウが何を聞きたいのか大賢者も暫くは解らなかった
だが・・・・シンタロウの態度を見ているうちに、自分の認識が
間違っていたと、大賢者は少し反省させられる
そう・・・・シンタロウはいや召喚された勇者
誰一人として、人を殺したことが無かった
あまりにも、当たり前の事なんだけど、人を殺すことに
躊躇があるのは、当たり前のことだろう
大賢者は、人を殺すことが、当たり前にできると思っていた
シンタロウは人の命などゲーム感覚で奪えるのだろうと
シンタロウのいつもの言動からそう判断してた
もしかしたら、シンタロウは人を殺すのが嫌で、鍛錬を怠っていたのかもしれない?
とても、そうは見えなかったが、、、、
{そうか、、私の認識が間違っていたな・・・シンタロウは
人の命なんてゲーム感覚で奪えるのだろうと思っていたよ}
シンタロウは大賢者の言葉を、聞くと
(いや・・・1回もやったこと無いんだ・・・やっぱり怖いよ)
{そうだろうね、、シンタロウ、君の困惑は当たり前のことだ
この世界では人の命が本当に軽い・・・でも君は、べつの価値観
大げさに言えば、人の命は地球より重い、そんなこと言ってる人もいたよね
シンタロウ、別に人を殺すことを、推奨はしないよ、実際に2代目の勇者も
その事で悩み、最後は精神をおかしくしてしまった
無理をする必要はない、、自分に出来そうなことで
この世界で、どうすれば生きていけるのか、考えてみるといい}
(けど・・・元老院はそれで許してくれるのかな
だってその為に僕を召喚したんだよね?)
なるほど、なにも考えていないように思えたが
シンタロウも、それなりに考えていたようだ
大賢者は、自分の人を見る目も、まだまだ足りないと反省をする
{確かに元老院は許さないだろう、君の召喚には手間暇、金が掛かっている
元老院と戦わないまでも、疎まれる覚悟は必要になるだろうね}
(やっぱりそうだよね・・・・決めたよ、いや元から決まっていた
僕は勇者としてこの世界に呼ばれたんだ、勇者として生きる)
シンタロウもようやく、この世界でどう生きるのか、決められたようだ
大賢者も、ひとまずは、安心した
{それは、よかった、君もこの世界でどうするつもりなのか
決まったようだし、私も肩の荷が下りた気がするよ}
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