第3話 初代勇者は、かませ犬?



(いや、リームは、もしかしたらもう、マクリムさんも、僕にくれるつもりなんじゃ?)


{そうか、君はこの世界の奴隷の常識が無いんだったね

 そうだね、女の奴隷が主人から男の面倒を見ろと命令されたら

 夜の相手までするのが、当たり前なんだよ}


(じゃあ、リームが僕の奴隷に、なりたいって言ったらどうすればいいの?)


 あまりにも都合の良すぎるシンタロウの言い草に、大賢者も

 呆れてしまったが、慣れとは恐ろしい物で

 シンタロウなら、こんな馬鹿な事言い出しても、不思議に思わなくなっている


{その時は、一番簡単なのは、金で買い取るのが一番楽だろうね

 どう話し合うにしても、リームの所有権は、あの夫婦の物だ

 かってに扱えば、少々問題があるんだが・・・

 そうだね君はリアン共和国の市民権を持たないし

 この国の法に従うと、、蛮族扱いになるから

 たしか・・・市民の財産に手を出したものは、即死刑だったはず

 まあ、君は勇者だし、そう簡単に死刑にはならないと思うけど

 あえて、問題を起こす必要もあるまい?}


 大賢者の言葉を少し反芻しながら、シンタロウも

 どうすればリームを問題なく自分の物に出来るか考え始める

 

(やっぱりサイラスさんやマクリムさんに頼んで譲ってもらうのが

 一番問題なさそうだな・・・

 大賢者、教えて欲しいんだけど、僕に倒して欲しい勇者って知ってる?)


{ああ、勿論知ってるよ、、マクリムが言っていた悪の勇者は最初に

 この世界に呼ばれた勇者だね、名前は佐藤望(ノゾミ)

 しかしこう言っては何だけど、今の君が初代に勝つのはまず無理だね}


 大賢者の言葉にシンタロウもイロイロと考えさせられたのか

 しばらくの沈黙の後に、再び大賢者に問いかける


(ちょっと確認したいんだけど、まず初代はそんなに強いの?

 あと初代が呼び出されたのって、120年前だよね?まだ生きてるの?)


{質問に答えるよ、まず君を基準にすると、赤ん坊と大人位の差があるだろう

 次に呼び出されたのは120年前で間違いない、そしてまだ生きてる

 他に聞きたいことは?}


(うん・・・じゃあ2代目から4代目も生きてるの?)


{いや2代目と3代目は初代に殺された、4代目は元老院に殺された}


 大賢者よりサラッと出てくる重大な情報にシンタロウは驚きつつ

 初代に殺された2代目、3代目より、元老院に殺された4代目に意識が向かう

 

(元老院に殺された?・・・あの元老院って何?)


{そうか、そこから話さないといけないね・・・このリアン共和国は

 建前上市民が、統治者って事になっている

 120名いる元老議員がいろいろな事を話合い、最後に

 この国の最高機関である市民会議で、市民の賛同をへて初めてすべての事が

 決められる、がこれは今や本当に建前だ、、

 市民会議はまだ存在してるし、市民会議の承認がない決定はすべて無効だ

 ただ、市民会議での決定のしかたに問題がある

 市民会議で、元老議員がある政策の承認を求めたとしよう

 その会議に集まった市民の拍手の方が多ければ承認

 ブーイングが多ければ否決だ

 もう、解ったと思うが、ブーイングが多かろうと、拍手が多かろうと

 初めから決まっているんだ・・・なにせ拍手が多いかどうか判断するのは

 元老院なんだからね}


(ずいぶんと致命的な欠陥のある評決の取り方してるんだな

 誰か変えようとは思わなったのか?)


{うん、王政から共和制に移るときには、問題なく、このシステムは動いていたんだけどね

 まあ、権力は腐敗するってやつなんだろう、あともちろんこの方法を

 変えようと言う意見が出なかった訳じゃない・・・すべて潰されただけで}


(フーンそうか、とにかく元老院ってのがこの国を支配しているのは、間違いなさそうだな)

 

{そうだね、そう思ってもらって、間違いがないね}


(じゃあその元老院になんで4代目は殺されたんだ?)


{詳しく説明するとかなり長い話しになるんだけど、、簡単なほうが良いかい?}


(簡単なほうで頼む、、概要が解ればそれでいいよ)


{わかった、簡単にまとめると、政治闘争に巻き込まれた、

 この国を改革しようとする、奴に肩入れして、元老院を敵に回した

 これで概要はわかったかな?}


(だいたい解った・・・どっちにしても元老院は敵に回さない方が良いってことだよね?)


{その方が無難だね}


 大賢者の言葉を受け再びシンタロウは考え込む、


(初代には絶対に勝てないかな?)


「絶対とは言わないよ、かなり難しいだろうけど}


(そうか・・・・じゃあ、そのうち勝てるようになるだろうし

 マクリムさんに、報酬の前渡しのお願いをしてみようかな)


 自分の説明が悪かったのだろうか?

 なぜそんな結論になったのか大賢者にはサッパリ理解ができず

 思わずシンタロウに問いかけてしまう


{すまないが・・・なぜそのうち勝てると、思うのかその理由を

 教えてくれないか?}


(いや、だって・・・大賢者がそこまで持ち上げるってことは

 その初代は・・・僕のかませ犬キャラに違いないよ)


 シンタロウの説明を聞いて大賢者は理解する事を、諦め

 とりあえずは前向きなのは、いい事だと、思っておくことにした


{そうか・・・ちなみに、これからどうするつもりなんだね?}


(そうだな・・・まずは修行パートかな?魔法は大賢者に使ってもらうから

 いいとして、剣の修行とかなのかな?)


 いきなり初代の居る場所に乗り込もうとか言いださなくて

 大賢者はホッと一安心した


{そうか安心したよ・・・そうか剣術を覚えるのもいいけど

 まず言葉を覚えたらどうだろうか?、私が通訳してもいいけど

 もどかしいだろう?}


(たしかに日常会話くらいは、必要なのかな?・・

 でも面倒くさいな、、僕、英語とか苦手だったんだよな)


 大賢者は、思う、たしか数学と物理も駄目だったハズだが

 シンタロウの得意な科目はあるのか?逆に聞きたくなったが

 お約束通り、保険体育だと言われたら、どう突っ込んでいいのか

 ・・・ここは沈黙を守るべきだと、大賢者は判断したようだ

 

{まあ、、そんなに慌てる必要もないだろう、元老院も、今すぐ

 行けとは言わないだろうけど・・・・

 いや、もしかしたら今年中に・・・言い出すかもしれないな}


 突然の宣告にシンタロウも驚くと

 大賢者に根拠を話してもらう事にした


(今年中?・・・今年中ってあとどれくらい時間があるんだ?

 あと・・・なんで元老院がそんなに急ぐと思うんだ?)


{元老院がどうするか、それはまだ確定じゃ無いんだけど

 蛮族の動きは解る、、奴らの行動パターンは単純だ

 狩をする、争う、子供を作る、そして数が増える

 飢えると、ナウ川を越え共和国に盗みに来る

 だいたいは、数人、多くても二桁はこえないんだけど

 十数年に1回くらいの周期で、すごい数になるときがある

 それが今年の冬に来る・・・まだ半年は先の話なんで

 どれくらいの数になるか、解らないけど・・・

 下手すると10万ちかい規模になるかもしれない}


(10万ってすごい数だな・・・その防衛に僕も呼ばれるかもって?)


{うん、、本当に君が防衛戦に呼ばれるかどうかは、まだわからないけど

 そうだね、、いまの共和国軍は、昔に比べると弱体化している

 さっきの話に少し戻るんだけど、4代目の時の改革が潰されずに

 進んでいれば、問題いなく撃退できたはずなんだけどね

 まあ、前に比べて弱体化したと言っても、私の知る限り共和国軍は世界最強だ

 君が参加しようとも、しなくとも、蛮族を撃退出来る力はまだ

 あるとは思うんだけど、、あとは初代が出てくるかどうかじゃないかな?}


(初代は出てきそうなのか?)


 シンタロウの問いに大賢者は、すぐに答えを出す事ができなかった

 じれはじめたシンタロウを見て大賢者も、ようやく答えだす


{すまない、それは未確定だが、今までのパターンだと初代は出てこない

 蛮族と言っても、一つじゃない、数多くの部族がいる

 まったくの、バラバラなんだ、初代に関係のある部族が

 関わらない限り、初代は出てこない、それは間違いないよ}


(いや・・・いろいろ解ったよ、取り敢えず半年か

 半年あれば今の10倍は強くなってるだろうし

 なにも問題ないな)


 大賢者はもう突っ込むのを止めた

 シンタロウのポジティブすぎる発言が

 どうしても理解できなかったが、、この自信

 もしかしたら、本当に10倍くらい強くなるのかもしれない?

 

{そうか、私も期待させてもらうよ}

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