第167話 第三回イベント開始
第三回イベント当日
「なんかいつもより見られてる……」
街中を歩くと少しだけ視線を感じることはよくあるんだけど今日は一段と視線を感じる。
「あ、あの!ラビリルさん……ですよね?」
「え?うん、そうだけど」
誰か知らないけど初期装備のプレイヤーが話しかけてきた、初心者さんかな?
「PVでラビリルさんの戦いを見てティニットを始めました!尊敬してます!良ければ握手してください!」
「あ、ありがとう……?」
そんな尊敬されるような戦いしてた?と思いながら初心者さんと握手をする。
私が出てるPVは見たけどすごくカッコいい編集されてただけで実際の戦いは普通だと思うんだよね。
「頑張ってください!応援してます!」
初心者さんはそう言って時々私の事を振り返って手を振りながらどこかへ行ってしまった。
しかし、ここは第三層なんだけど初心者さんが来れるものなのだろうか……?
いや、イベント期間限定で魔帝国や天王国に転移出来るんだっけ?イベント期間中も兵士になれるらしいし。
「ポーション……自作ポーション1本50Gでーす」
この声はアルマさん?
アルマさんらしき声の方に向かってみるとそこそこの人の集まりが出来ていた。
「自作ポーションあと少しで完売です――」
あれだけ売れないと言っていたアルマさんのポーションが沢山売れている。
お店だとそもそも入れる人が少数だからアルマさんのポーションを無条件で買えることが珍しいし欲しい人は多いだろうね。
そんなことを思っていたらチラッとアルマさんが私の事を見てきた、良く私の事を見つけられたね。
「ラビリル、これベルテからプレゼントだって……イベント中に飲むと良いよ」
アルマさんが大きな声で言いながら真っ黒い液体の入ったポーションが私に向かって投げられる。
「ベルテからプレゼント……?」
私は上手くポーションを受け取る。
なんかこのポーション真っ黒だし嫌な予感しかしないんだけど……性能見てみよう。
即死ポーション……飲むとHPが0になる、飲まないと効果が無い。
「いや、殺す気満々じゃん?!」
危なっ!イベント中にこれ飲んだらその瞬間、魔帝国の負けだよ?さてはベルテ、天王国側だね?
アルマさんは魔帝国にいるけどこんなもの渡してくるくらいだしどっちの味方か分かったもんじゃない。
『第三回イベント"天魔戦争"が始まります……』
ついに始まるらしい。
「初めまして兵士の皆さん……わたくしの名はアスタロト、元皇帝です」
どこからともなく現れるアスタロト様。
「本日は兵士としてよろしくお願いします、わたくしの話はほどほどに……現皇帝に変わりますね《転移》」
「え、ちょっ!アスタロト様?!」
私の目の前にアスタロト様が現れたと思ったら広場の中央に連れて行かれた。
「あわわわ……」
めっちゃプレイヤーに見られてる。
「ラビリルしゃまー!」
「負けるんじゃないぞー!」
「ラビリル〜!」
「なんか言ったら?」
なんか知り合いの声が聞こえた気がする、いや最後に聞こえた声はスノーピンクでしょ。
「あー……えっと――」
私が話し始めると皆んなが黙って静かになる。
「全部私が壊して潰します、よろしく!」
私がそう意気込むが何故か誰も何も言わない。
あれ?もしかして滑った?
「やっぱラビリルだわ」
「ついて行きましゅ!」
「ラビリルならあり得るんだよなぁ」
「負けないから!」
良かった、こんな人数相手に黙られたらトラウマものだよ……。
「じゃあ、皆んな突撃ー!」
と言いつつ私は誰よりも先に天王国に向かった。
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