第163話 魔帝国乗っ取り

とにかく攻撃だ、攻撃すればHPは回復する。


ステータス的には全然負けてない、互角だ。


「《ロード》」


ちゃんとダメージは入っているのにこのロードとか言うスキルで元通りになってしまう。


何度も使われたからロードを使う時に玉座前に戻ることが分かったけどそれしか分からない。


リミッター解除の効果も切れちゃったし一撃で倒すこともできない、そもそも一撃で倒してもさっきみたいに復活するかもだしどうしよう……。


「絶対に弱点はあるはず……」


MP切れ……何度も使っているしありえるかもしれない。


まずはロードした瞬間に攻撃してみよう。


「《ロード》」

「今!」


アスタロト様のロードに合わせて玉座に突っ込む。


姿勢を低くして足元を狙った。


「おや?」


姿勢を低くして突っ込んだ為かアスタロト様は私を見失っていた。


上手く足を引っ掛けて転ばしながら腕をへし曲げる。


さらに頭を狙って殴ろうとした。


「ま、《前借り》《転移》」


しかし頭に拳が当たる前に転移で逃げられて拳が床にめり込んだ。


「まだまだ行くよ!」


すぐに周囲を見渡して転移したアスタロト様を見つける。


さっき若干焦り気味で前借りを使ったことを見るとそこまで余裕はないはず。


それに前借りを使ったってことは転移はそんなに連発できるものじゃないってことだよね。


「《リリース》」

「もう何度もそのスキルは見た」


アスタロト様に近づいた私に掴みかかろうとして来たのでわざと後ろに下がる。


あのリリースってスキル、いつも触られてから使ってきていたから触られてなければ当たらない。


「《絶対領域》」


アスタロト様の片腕がへし折れているから動きが鈍い、治すこともしないからもうそんなにMPが無いのかも?


領域を展開しつつ片手でアスタロト様の攻撃を止めてもう片方の拳で腹を思いっきり殴った。


「ぐ……《ロード》」


お腹を殴られて苦しそうにしながらまたロードを使った。


ロードを使ったのを確認した瞬間に私はまた玉座の前まで全力で走る。


「《絶対領域》……そこだー!」


ロードして玉座の前に現れたアスタロト様の腹をもう一度殴る。


「がはっ……!」


殴られて体勢が崩れたところにゴリゴリっと足を踏みつける。


「なんとなくそのスキルが分かってきたよ」

「そのようですね……でも、わたくしは負けま――」


アスタロト様が喋り終わる前に私は首を掴む。


アスタロト様は無詠唱でスキルを使えるが何故か強力な魔法やロードなどは喋って使っている。


恐らくは無詠唱出来ないやつと出来るやつがあるんだろう。


「早くロードしないと死んじゃうよ?ロードしたら?」

「……う、ぐ――」


アスタロト様が私の腕を思いっきり叩いて抵抗してくる。


めちゃくちゃ痛いけど私は首を掴むことはやめない。


少しの間、首を掴んでいるとアスタロト様がガクリと力無く崩れて消えた。


そしてまた玉座の前に現れる。


「2度目の《リトライ》……これは厳しいですね」

「もう、復活はないでしょ」

「さあ、分かりませんよ?」


さすがに復活は1度だけと思いたい、前借りで1度だけクールタイムを無くせるとしても3度目はないはず。


ロードだってさっきみたいに声を出せなくしたりしたら大丈夫、あと私の予想だとロードしてから数分はクールタイムで使えないと思っている。


だってさっき腕折れたのにそのままだったし連続で何度もロード出来るならしてるでしょ。


「これはもう無理そうですね、降参です。降参」

「え?終わり?」


私が構え始めるとアスタロト様は杖を落として降参してきた。


「あなたの言う通り、もう《リトライ》は無いのでこれ以上戦うとわたくしが死んでしまいます。流石に死にたくは無いので降参ですよ」


『クエスト"対決!皇帝アスタロト"をクリアしました』

『報酬……対象のスキルを2つ取得出来ます、お選びください』


おお、攻略法が分かれば簡単だった。


『速報 皇帝"アスタロト"がプレイヤー"ラビリル"に敗北した為、皇帝がラビリルになりました』


おっと?なんか嫌なメッセージが見えた気がする。


「おめでとうございます、この魔帝国はあなたのものですよ」

「いや、要らないよ?!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る