第147話 一方その頃2

「《自分魔法領域解除》」


領域を解除すると身体が自由に動けるようになった。


自分の魔法の弱点くらい知ってるんだから!


「残念なの」


私の魔法が使えなくなって心底残念がるガブリエル。


正直言って既にMPがほとんどない。


格上相手に自分魔法を使うと物凄い勢いでMPが減っていくからだ。


「デスペナは嫌だから逃してくれない?」

「んーもうちょっと遊んでくれたらいいの」


なんか逃してくれそう?そもそも私を倒す気はない?


「《天使の癒し》」


ペタペタと足音が聞こえたと思った瞬間、目の前にガブリエルが現れて私に触れてくる。


そして何かのスキルを使われてHPとMPが全回復した。


「これでまだ遊べる?」

「なんでもありじゃん……」


一応、そこそこの俊敏は持ってるつもりなんだけどガブリエルの動きが見えなかった。


しかし好都合、MPが満タンならあのスキルを使える。


「《変身覚醒》」


『1分間、覚醒状態になります』


MPが満タンの時にしか使えない私の切り札。


自分魔法の持続数が1つから3つまで解放されてさらにMP消費が無くなる。


格上相手に効きにくいのは変わらないけど今までMP消費が激しすぎて使えなかった自分魔法が使えるようになった。


「《転移》」


まずは自分を転移させてガブリエルの後ろに移動する。


そしてガブリエルの翼を掴んだ。


「……気づかなかった、でもあなたにガブリエルは傷つけられないの」


確かに翼を引っ張ってもびくともしない。


「油断してると痛い目見るよ《ステータスコピー》」


ちょっと前の私みたいにね。


私は掴んでいたガブリエルの翼を引きちぎる。


「っ!!!《物真似》《動くな》なのっ!」


先程とは打って変わって張り詰めた声で私の動きを止めようとする。


私は物真似された自分魔法が効いていないことを確認してからさらに翼を引きちぎる。


「領域が無いから自分魔法を物真似しても意味ないよ?そもそも物真似出来てもステータスが互角になったから抗えるし」


物真似するなら変身覚醒からしないとね。


今まで感じたことのないほどのステータス上昇、これがレベル90の世界……いやNPCだからもっと強いかもしれない。


「正直舐めてたの……これはガブリエルも本気を出すしかないの」

「《転移》……何かスキルを使われる前に勝つ!」


どう考えてもやばそうなスキルを使う雰囲気だったので使われる前にガブリエルの喉目掛けて攻撃をしようとする。


パシッ


「え……は?」


私の攻撃はガブリエルに当たる寸前で止められてしまった。


別の天使に――


「あらあら、ガブリエルちゃん負けちゃってるわね」

「ガブリエルだけ戦っててずるーい!」


私の攻撃を止めた天使、そしてさらにもう1人天使が現れる。


「ごめんなの……」


ガブリエルはしょんぼりと2人の天使に謝っていた。


これはまずい、ガブリエルすら倒せるか微妙なところだったのにガブリエルと同等かそれ以上が2人も追加された。


そして変身覚醒の制限時間も残り30秒くらいしかない。


「さて、この人間はどうしようかしら?」

「ガブリエルをここまで痛めつけられる人間は初めて見たよ!」


ジロリと2人の天使が私を睨んでくる。


どうする、今なら転移で逃れるか……?いやどうせこの天使達も転移が使えるだろうし転移で逃げても制限時間が切れた後に追いつかれそうだ。


「……まってなの」


まさに今、2人の天使が襲ってこようとした瞬間にガブリエルが声を出して止めた。


「ガブリエルが油断したせい……あの人間は悪くないの、2人はどっか行くの」

「ガブリエルちゃんがそう言うならやめとくわ」

「えー!」

「ほら、ミカエルちゃん!いくわよ」

「しょうがないかー!」


そう言って2人の天使はどこかへ消えてしまった。


「この勝負はガブリエルの負け、ここまで連れてきた理由は暇つぶしなの」

「暇つぶしで死にかけたんだけど……」


いや、元々私を倒すつもりはない感じだったね。


『隠しクエスト"対決!天使ガブリエル"をクリアしました』


なんか隠しクエストクリアした……。


「これ、お詫びなの……」


『スキル《物真似》を取得しました』

『スキル《山彦》を取得しました』


うわこれ、ガブリエルが使っていたスキルじゃん!ラッキー。


「あと身分証あげるの」


ガブリエルから手渡しで金色の身分証をもらった。


「これがあればいつでもお城に来れるの、また来るの《強制転移》」

「ちょっ!まだ話したいことが――」


ガブリエルは有無を言わず私を強制転移させた。


まだ色々と話を聞きたかったのに街中に戻されてしまった。

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