第142話 強制イベント

うわー戦争だよ、戦争。


三大天使とか言ってるしやっぱり天王国の方には天使がいるんだ、それも3人……。


巻き込まれないといいなーとか思っていたらなんかアスタロト様が私の方をジーっと見ていることに気づいた。


「・・・」

「・・・」


いや、たまたま私の方角を見ているだけで私のことは見てない……と思いたい。


「・・・」

「・・・」


完全に目が合ってます。


「貴方……わたくしと同じ雰囲気を感じますね」

「ヒェっ!いつのまに――」


さっきまで目が合っているだけで遠くで兵士で囲まれていた筈なのに気づいた時には私の目の前にいた。


ひー!私の俊敏ですら見えない速度で動いてたよこれ!それか転移スキル、転移スキルだといいなぁ……。


「同じ雰囲気ってどう言う意味――」

「少しわたくしと手合わせしませんか?」

「なんで?!」


急に戦いを挑まれた。


『皇帝アスタロトが決闘を申し込んできました』

『承諾しますか?』


この悪魔、皇帝なの?!


「そんな怯えた顔しなくても手加減はしますので……わたくし、意外と優しいですよ?――もちろん人間でも」


最後の言葉だけ耳元で、私だけに聞こえる声で囁く。


完全に私がアスタロト様のこと悪魔だってことに気づいたのバレてる。


「あの……もし断ったらどうなりますか?」

「そうですね、とりあえず話は聞きたいので取っ捕まえて監禁しちゃいます」


強制イベントですね、分かります。


「受けます!受けるので監禁はやめてください」


『皇帝アスタロトとの決闘を承諾しました』


監禁とか怖すぎ!多分ログアウトすれば逃げれるだろうけど今後指名手配とかされそうだもん。


『決闘開始まで残り10秒』


私はアスタロト様から少しだけ離れる。


いつのまにか周囲の人たちが私とアスタロト様から離れている……兵士さんが多分離したんだよね。


仕方ない、適当に戦って適当に負けよう。多分全力でやっても勝てないしそもそもユニークスキルとか悪魔転生、さっき使ったばっかりでクールタイム全然まだだし。


『残り8秒』


「もし手加減したらどうなるか分かりますね?」


またも気づかないうちに離れたはずのアスタロト様が私の頭に触れてきた。


『スキル《前借り》の効果で現在クールタイム中のスキルが使用可能になりました』


嘘でしょ……?マジで言ってる?!


「もしわたくしに勝てたら少しだけ力を分けてあげます、今使ったスキルとか……ね」


そう言って私のことを見つめてくる。


はぁ……これ、絶対勝てないやつ。


『残り1秒』

『……決闘開始』


アスタロト Lv100


私の倍近いレベル差、勝てるかなぁ……。


「《風龍の加護》」


早速、短剣を手に持って全力でアスタロト様に向かっていく。


そしてアスタロト様の首元に短剣が――


「興味深いですね、どこから短剣を出したんですか?」


なんともない顔で私の短剣を素手で掴んで止めてきた。


「あはは……」


勝てるかな……?

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