第127話 カニが食べたい

キングクラブ Lv35


ボスゲートに入ったら早速ボスが現れた。


大きなハサミを持ったカニだね、美味しそう。


「腕とかもぎ取ったらそのままドロップしないかな?じゅるり」


既にボスとしてではなく食べ物として認識しているラビリルであった。


「その腕をよこせー!」


私はカニの腕に飛びついて引っ張る。


意外にもあっけなくカニの腕が引っこ抜かれるが中身が無い。


「そんな……中身がないカニなんてカニじゃない」


ちょっと運営さん!こういう手抜きはやめてちゃんと中身も作ってよ!


私は中身のないカニの腕をポイッと捨てる。


「いや、カニ本体の中身は無いけどドロップ品はあるかも!」


気分はカニ鍋、皆んなを呼んで賑やかなカニ鍋パーティーをしよう!


「カニさんには悪いけど速攻で倒すから!パラ召喚、《超麻痺粉》」


私はパラを召喚してカニを麻痺にする。


麻痺にしてからカニの頭部分をボッコボッコに殴る。


「なかなか死なないね、HPが高いのかな?」


結構な時間殴っているんだけどタフだね。


ちなみにパラは私が捨てた中身のないカニの腕に齧り付いている。


あれ、美味しいの?出汁とか取れたりする?


「私も齧ってみよ」


麻痺で全く動く気配が無いのでカニの腕に齧り付いてみた。


「かたぁ!歯が欠ける!」


なんの味もしないし単純にダメージ受けただけじゃん!


パラの方は……なんか齧り付いているだけじゃなくて普通にバキバキと硬い甲羅を食べてる。


パラの筋力は低いはずなんだけど噛む力?は別なのかなぁ。


齧るのはやめて再度殴って攻撃をする。


『"キングクラブ"を討伐しました』


あっ死んだ。


「なんかボスなのに弱かったね」


まあ、キングクラブより私の方がレベル高いし弱いのは当たり前か。


さてドロップ品はなんだろうなー。


「えー……キングクラブの甲羅?」


あの硬くて味のないやつじゃん。


いや、防具にはなるだろうけど私にはいらないし……やっぱり出汁?お味噌汁作っちゃう?


この甲羅だけがドロップ品とは限らないし何度か倒してみよう。


「はっ!宝箱忘れるところだった」


カニに釣られて宝箱を開けずにボス部屋から出るところだったよ。


宝箱にもカニの素材あるかもだもんね。


「ん?スキルオーブ《根性》ってもう持ってるスキルじゃん!」


普通に良いスキルだしこれ欲しい人多いんじゃ……高く売れる!


「これ売ったお金でお味噌汁とか鍋の具材買っちゃおー」


その為にもカニ周回するぞー!


レイドボスのことなんか忘れて私はカニの素材集めを始めた。


「甲羅、甲羅、目玉、甲羅」


うーん、カニの身は存在しない?ドラゴンはお肉出たのに。


カニの場合、身だけ出るのはおかしいっちゃあおかしいか。


「出汁だけでもカニっぽくはなるかな」


そんなに時間があるわけではないのでこの辺りでやめておこう。


今日は眠いから寝て明日にでもカニの出汁味噌汁作ってみよう。


私はログアウトしてすぐに寝た。


後日、ベルテから衝撃の事実を知らされる。


「カニ?そんなの普通に街に売ってるけど」


頑張って周回した私の時間を返してほしい。

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