閑話 我慢……

「あんなに弱った百、初めて見たなぁ」


部屋の前で百が着替えるのを待つ私。


流石の私でも病人相手に何かしようとは思わない……いや、正確には我慢している。


タンスの中に畳んであった服とか探している時にめっちゃ良い匂いしたしあのタンスの何処かに百の下着も……うっ!興奮しすぎて鼻血出そう。


「そういえばまだお昼食べてなかった、百は……お弁当食べれるかな」


あれだけ熱が高いと食欲もあんまりなさそう。


「百〜着替えた?入ってもいい?」


コンコンと扉をノックするがなんの反応もない。


「百?」


再度呼びかけるがなんの反応もない、もしかして何かあった?!


私は急いで扉を開けて百の様子を確認した。


「あ、寝てる」


部屋の中に入ると若干苦しそうだけどスヤスヤと寝ている百がいた。


そして脱ぎ捨てられて放置されている制服。


「もう、シワになるって……」


とっさに洗濯しようと百の制服を手に取るが勝手に洗濯してもらいいものだろうか?


「百の制服……ごくり」


手に取った時にふわりと香る良い匂いがして私の気分を惑わしてくる。


私は我慢できずと百の制服を顔に近づけた。


「くんくん……スーハー」


いつもの百の匂いに少し汗の匂いが混じっていてなんだか癖になりそう。


「んん……紗由佳」

「ヒッ!百、違うの!これは――」


百の制服に夢中になりすぎて隣に百が寝ていることを忘れていた。


流石の私でもこんな姿を見られたら嫌われることは分かりきっている。


恐る恐る百が寝ている方に顔を向ける。


「すぅ……すぅ……」

「良かった、寝言かー……」


た、助かった……。


非常にもったいないけどこれ以上は危険なのでやめよう。


百の制服は……とりあえず洗濯していいか分からないからハンガーにかけてシワにならないようにしておこう。


「じゃあ、帰ろうかな――」


百もぐっすり寝てるし私がやれることはもう無さそうだから帰ろう……と思ったんだけどよく考えたら百の家の戸締まり出来なくない?


今、百と私しかいないし入る時は百に鍵をかけてもらって入ったから私が帰っちゃったら鍵開けっぱなしで病人1人になっちゃう!


「百のお母さんかお父さんが帰ってくるまで待つかー」


私は百の寝顔を眺めながら待つことにした。


そして30分くらい経ってから誰かが帰ってきた。


「百!大丈夫か!薬とか色々買って――」


バタンと勢いよく扉が開いて百のお父さん?が入ってきた。


「シー……寝てるので静かに」

「……すまん、君が百を看病してくれたお友達?」


申し訳なさそうにゆっくりと扉を閉めた百のお父さん。


「紗由佳です、百のお父さんですよね?私はそろそろ帰りますね」

「ああ、本当に百を看病してくれてありがとう……何かお礼をしたいんだが――」

「いえいえ、大丈夫です。友達ですので――充分なくらいのお礼を勝手に貰ったし」


最後の方は聞こえないくらいの小さな声で言った。


「んん……すぅ、すぅ――」

「じゃあ百、またね!」


私は寝ている百に手を振って家に帰った。

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