第77話 予選バトルロイヤル4

『残り時間1時間です』


山までの移動でそこそこ時間がかかった。


移動する最中に通り道にいたプレイヤーを倒しつつ来たからさらに時間がかかった。


「さーて、逃げた魔法少女はどこにいるのかな?」


移動中もマップスキャンを見ている限り私が追いかけてきているからかなるべく逃げようと離れていく感じだった。


ただ最初の転移みたいに凄い距離の移動はしていないから多分走って移動しているんだろう。


「私のスコーンの方が足が速いから追いつくんだよね」


ピコンッ


「あ、スキャンの時間だ」


マップをみるとすぐ横に赤い点があるのが見えた。


「そこだ!スコーン《毒液》」


あの岩裏にいるね!


私の指示通りにスコーンが岩裏に向かって毒液をかける。


「ぎゃあああ!」


あれ?男の人の声だ。


魔法少女ではなく男の人の悲鳴が聞こえたのでゆっくり近寄ってみる。


「別人だった……」


てっきり近くにいたから魔法少女だと思ったんだけどただ単に隠れていたプレイヤーだったよ。


毒液をモロに食らって足とか溶けて無くなってたからトドメをさしておいた。


「魔法少女はどこ行った?」


マップの赤い点をぽちぽちして探すとまたちょっとだけ遠くに逃げていた。


「逃げ足速いね……」


既に山を降り始めているよね、これ。


「スコーン!Uターンして山を降りるよ!」


ちょっとずつ、ちょっとずつ距離が縮まっていく。


「見えた!」


ついに視界内に魔法少女を捉えた。


結局、平原に帰ってきてしまった。


「ひえぇぇ!なんでこんなに追ってくるのぉ!」

「逃がさないって言ったよね?」


私はスコーンから跳んで魔法少女スノーピンクの前に降りる。


「逃げるのうまかったね」


私とスコーンで挟みながらジリジリと距離を詰める。


「無理無理無理!MPが無いんだって!」

「あはは、さようなら」


スノーピンクに接近して思いっきりお腹を殴る。


「ぐへ!」


殴られて吹っ飛ばされスコーンとぶつかる。


そしてスコーンはスノーピンクを尻尾でぶっ刺した。


「お腹刺される感覚ってこんな感じなんだね……流石にちょっとだけ痛いね」

「まだ生きてるんだ、魔法少女って割には意外と防御硬いね」


スノーピンクは尻尾で刺されて力無く宙吊りになっている。


「まさか、そんなに防御は上げてないよ……?スキルで耐えただけ」


あー根性かな?あれ凄く便利なスキルだしみんな持ってるよね。


「最後に言いたいことある?」


私がゆっくりとスノーピンクに近づきスコーンも尻尾を動かしてスノーピンクを私に近づけてくれた。


「いやー予選敗退は勘弁してもらいたいね」


足をぷらぷらさせて抵抗してこようとしている。


「じゃあね!」


私は拳を力強く握りしめ殴った。


「今!《テレポート》」


目の前でスノーピンクが消えて私の拳が空振り勢い余ってスコーンの尻尾に突き刺さった。


「いたあああああ!あの魔法少女!また消えたし!」


どこ行った?!一回転移したっきりしなかったのにまさかちょうどクールタイムが終わったの?!


突き刺さった拳を痛みを堪えながら引き抜いて周囲を見渡すが案の定、全く見当たらない。


「……やられた」


ピコンッ


都合よくちょうどスキャンの時間が来たのでマップを見てみるがまーた山の山頂付近に転移していた。


『残り時間30分です』


残り時間的にもう追いつけそうも無い……いや、まだ可能性はある!


「"破壊開始"!」


これで俊敏を上げて全力で走ればなんとか間に合う!


「スコーン、私は先にいくね!」


スコーンを置いて行って私は全速力で魔法少女のいるであろう山まで走った。


赤い点の数は残り3つ、そのうち森に2つで山に1つ。


山にいるプレイヤーはあの魔法少女だけだ。


「見つけたぞー!魔法少女スノーピンク!」


全力で山を登りついに見つけた。


「嘘でしょ?!」


遠目からスノーピンクが足を引きずりながら逃げようとしているのが見える。


お腹も穴が空いているので回復もしていなさそうだ。


「これで終わりだー!」

「嫌だあああ!死にたく無いよぉ!」


私の拳がスノーピンクに当たる……その瞬間――


『予選バトルロイヤル終了』

『生き残ったプレイヤーの皆様、おめでとうございます!』


「へ?」

「おっ!」


マジ?このタイミングで予選終わり?


しかし私の拳の勢いは止まらない。


「ぐはっ!」


私の拳はスノーピンクの顔面に流れるように当たっていきスノーピンクはゴロゴロと転がるように飛ばされた。


「げほっ!酷い……予選はもう終わったのに」

「ダメージは無いんだからいいじゃん、痛くも無いんでしょ?」


私はスノーピンクを倒せなくて不完全燃焼だよ。


「まあそうなんだけど、とにかく私が逃げ切ったってことで私の勝ち!」

「……決勝トーナメントで当たったら全力で潰すから」


すっごいムカつく〜!もう一発くらい殴っていいかな?


「ヒッ!殴られそうな予感……さいなら!」

「あ!逃げ足速いやつめ……」


また転移して何処かへ行ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る