第62話 ミイラ戦

ミイラ Lv30


「普通のミイラだね」

「良く燃えそうじゃな」


ボスゲートの中に入ると真ん中に白い包帯が全身に巻かれたミイラがポツンと立っていた。


「なんか他のボスと比べるとしょぼくない?」

「大きさも我らと比べると大きいかもじゃが普通に大人くらいの背丈じゃの」


ミイラは私たちに向かって来ているがゾンビ並みに遅い。


とてもボスとは思えないんだけど筋力がめっちゃ高いとかそんな感じなのかな?それとも防御?


「ちょっと気になってることがあるんだけど試して良い?」

「なんじゃ?どうせまた変なこと考えているんじゃろ」

「いや、そんな変なことじゃないよ?あのミイラの中身?がどんな感じかちょっと気になったんだよね」


私がそう言うと呆れた顔であるふぁさんが見てきた。


「はぁ……普通にプレイしてたらそんなこと思いつかないと思うのじゃが――確かにちょっと気になるのじゃ」

「でしょでしょー!包帯剥ぎ取ってみて良いかな?」


やっぱりあるふぁさんも気になってたんだね!


「よし!ラビリルよ、ミイラの包帯を剥ぎ取るのじゃ!」

「よーし!やっちゃうぞー!」


私はノリノリでミイラに近づいていく。


ミイラは近づいて来た私に手をブンブン振り回して応戦しているが動きが遅いので全く当たらない。


やっぱりこれ本当にボス?弱すぎない?


そんなことを思いつつミイラの後ろへ回り包帯をがっしりと掴んだ。


「んー!ガッチガチに包帯が巻かれてるのか貼りついているのか全然取れない!」


何度も引っ張るがびくともしない。


「ラビリル!危ないのじゃ!」

「え――」


包帯を引っ張るのに夢中になりすぎてミイラの攻撃に反応できず攻撃を受けてしまった。


「いたたた……半分くらいHPが無くなった」


やっぱりめっちゃ筋力高かったね……。


私は一度回復するためにミイラから離れる。


「少し油断しすぎなのじゃ」

「調子に乗りすぎちゃった」


ボスがボスらしくないからそこら辺のゾンビと同じ感覚で倒そうとしてたよ。


「どうやらあの包帯は剥ぎ取れないようじゃの」

「残念だね、普通に倒しちゃおっか」

「どれ、我が燃やしてやるのじゃ」


あるふぁさんが魔法を放ちミイラに当たる。


「良く燃えてるねー」

「思った通りよく燃えたのじゃ」


ミイラは燃えているのに気にせずゆっくりと私たちの方に向かって来ていた。


しかしHPが尽きたのかそのまま倒れて消えてしまった。


「あれ?もう終わり?」

「いやボス討伐の通知が来ないのじゃ、まだ何かありそうなのじゃ!」


確かにいつも通知が無い……。


私たちは近くで固まって様子を見ていると地面がピカピカと光り始めた。


「あれは……魔法陣?」


小さな魔法陣が私たちの周りに沢山出現し始めていた。


そして魔法陣からは大量のミイラが現れた。


「ミイラの群れ?それが今回のボスってことかな?」

「恐らくそうなのじゃな、しかし量が多いのじゃ!」


10……20……と数えられないくらいに次々とミイラが現れていく。


囲まれたら一巻の終わりだろう、なにせ防御の高い私が攻撃を1撃受けただけで半分くらいHPが消し飛んだんだからあるふぁさんの防御がどれくらいか分からないけど魔法使いのあるふぁさんよりは私の方が高いはず。


「どれだけ増えるんだろうね」

「圧巻の光景じゃな」


そして光が収まりミイラが一斉に押し寄せてくる。


「普通であれば負けてるじゃろうな」

「私たち対多数の戦いめっちゃ得意だもんね」


私とあるふぁさんの考えていることは一緒だった。


「"魔道の力を"」

「"破壊開始"」


それにしても最近、破壊モードにほぼ毎日なっている気がするんだけど頼りすぎかなぁ。


「全て燃やし尽くすのじゃー!《ファイアボール》×30」

「ちょっと全部はやめてよ!私も壊したいんだからネ!」


あるふぁさんが次々と魔法でミイラを燃やしていく、私もまけじとミイラを殴って蹴って吹き飛ばす。


「もしかして今なら包帯剥ぎ取れるんじゃない?!試してみよっと!」


サッとミイラの後ろを取って包帯を引っ張ってみる。


思いっきり力を入れるとなんと包帯が千切れた。


「おおっ!包帯の中身はどんな感じかな――」


千切れたところの包帯を引っ張るがミイラに変化はない。


そもそもどんなに引っ張ってもミイラに巻き付いているはずの包帯が取れないのだ。


なのに引っ張った包帯は私の足元にどんどん積み重なっていく、意味がわからない。


「中身は設定されておらんということじゃな……」

「そんな……ちゃんと作ってよ!運営さんー!」


私がそんなこと嘆いているとあるふぁさんの後ろからミイラが襲っているのが見えた。


「あるふぁさん危ない!ミイラが後ろに――」

「のじゃ?」


なんとか助けようと私はあるふぁさんに近づくが間に合いそうにない。


「おお、助かったのじゃ」

「へ?」


あるふぁさんはミイラの攻撃を片手でパシリと掴んで受け止めていた。


「邪魔なのじゃ!」


そしてミイラをブンブン振り回して投げ飛ばした。


えっと、魔法使いなんだよね?筋力高くない?


「なんじゃ、そんな我を見つめてどうしたのじゃ?」

「魔法使いなのに凄い筋力してるなと思って……」

「我のユニークスキルの効果じゃな、詳しくは言わないのじゃ」


ユニークスキルってやっぱり桁違いの性能だよね。


「ほれ、手が止まっておるのじゃ!まだまだミイラは沢山いるのじゃ!」

「よーし!どんどん壊すぞー!」


私は張り切ってミイラに殴りかかった。

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