第61話 可哀想なゾンビ

「ラビリル、最初に言っておくがくれぐれも壁を壊すのはやめるのじゃよ?外の壁が脆かったのじゃから中から崩壊する恐れがあるのじゃ」

「う、うん……」


そういえば忘れてたけどいつぞやの洞窟も崩壊して潰れて死んだもんね、私。


「我の魔法も使いすぎると崩壊しそうじゃからあまり使えなさそうなのじゃ」


このピラミッド、ちょっと狭いもんね。


剣とか振り回してたら天井とか壁に当たりまくって邪魔な気がする。


「む、モンスターが現れたのじゃ」

「本当だ、あれは……ゾンビ?」


遠くから見てもゆっくり歩いているのが分かる。


見た目はまあ、気色悪いというか肌は少し緑っぽい感じだし服装はボロボロだし目ん玉飛び出てるし。


「うわぁ、近寄りたく無いのじゃ……」


ゾンビ Lv27


「あの目ん玉どうなってるんだろう?ちょっと毟り取っていい?」

「お主の思考はどうなっておるのじゃ!」


飛び出てても見えてるのか気になるじゃん、片目だけ飛び出てるから飛び出て無い方の目を潰すかして試してみよっと。


グチャ


ゾンビの動きがとても遅いので簡単に近づいて目ん玉を潰した。


「おお!飛び出てても見えてるんだね!」


潰してから少しだけ離れるとちゃんと私の方に向かってのっそのっそと歩いて近づいてこようとしていた。


「じゃあもう片方の飛び出てる目ん玉も引きちぎっちゃお!」


私は再度ゾンビに近づきブチっと飛び出ていた目ん玉をちぎり取った。


「なんかゾンビの方が可哀想に見えてきたのじゃ……ポーションでもかけてあげようかの」

「あはは!結構楽しいよ?あるふぁさんもやる?」

「え、遠慮しておくのじゃ」


目を無くして挙動不審になったゾンビにあるふぁさんが近づいてポーションをバシャバシャかけ始めた。


「ほれ、可哀想じゃから回復してやるのじゃ――」

「ねぇ、あるふぁさんなんかゾンビが痛そうにもがいてるよ?回復してなくない?」


ゾンビがジュウジュウって焼けた音しながらどんどん身体が溶けてるんだけど?めっちゃ煙でてるし。


「もしかして回復ポーションが弱点なのじゃ?それはすまぬ……」

「完全に死んじゃったね」


ゾンビはHPが無くなったのかそのまま消え去ってしまった。


「気を取り直して先に進むとするのじゃ」

「おー!」


私とあるふぁさんはどんどん奥へと進んで行った。


「《ファイアボール》」


あるふぁさんが魔法を放ち、ゾンビを燃やしていく。


「ああ、もったいない……目ん玉引っ張るの楽しいのに」

「全てのゾンビと遊んでいたら朝になってしまうのじゃ!ほどほどにせい!」


ここはとても楽しいから攻略してもまた遊びにこよう。


「それにしてもここは迷路みたいに入り組んでおるのじゃ」

「そうだね、もうどう来たのか分からなくなっちゃったよ」


結構奥の方にまで来たと思うんだけどもしかしたら逆に戻っちゃってる可能性もあるわけでこんなに入り組んでるなら目印とかなにかつけとけば良かったかも。


「む?行き止まりなのじゃ」

「またかー、もう壁壊して進まない?」

「崩壊して死ぬ未来が見えるのじゃ……」


むぅ……しょうがない、分かれ道に戻るかー。


そんなこんなで非常に道に迷ったけどなんとかボスゲートにまでたどり着いた。


「やっぱりボスゲートがあったね!」

「疲れたのじゃ、ボス部屋なら存分に魔法が使えるはずなのじゃ!」


私はゾンビと戯れて遊びながら倒してたけどあるふぁさんは魔法を壁とかに当てないように慎重に戦ってたもんね。


ただモンスターがゾンビしか居なかったし燃えるとすぐに死んじゃうから魔法一発で倒せるのは楽だったのかも?


「それでどうするのじゃ?このままパーティでボス戦に行くかここからはソロかじゃ」

「パーティじゃダメなの?」


私はこのまま2人でボス戦に挑むと思ってたんだけど。


「いや、恐らくというか確実にここのボスは討伐されておらぬはずじゃ、ソロでボスを討伐すれば例のものを貰えるというのもラビリルは知っているはずじゃが」

「なるほど、ユニークウェポンね!でもそれじゃどっちかしか貰えないし取り合いになるね」


私は既に3つあるし要らないっちゃ要らないんだけど。


武器欄とかアクセサリー欄とかもういっぱいいっぱいだし。


「我はどちらでも良いのじゃ、既に2つあるしの」

「じゃあ2人でボス戦行こうよ!私も要らないし!」


せっかく2人で苦労してここまで来たのに争いたくないし。


「そうじゃな、そのまま行くとするのじゃ」

「レッツゴー!」


私とあるふぁさんは一緒にボスゲートの中へと入っていった。

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