第57話 天使の神殿

「ま、まあ大体のスキル内容は分かったね」


すぐ横にあるボスゲートから目を離しつつ悪魔転生を解除する。


「ちゃんと元に戻った……ドレスとかずっと真っ黒なのは嫌だもん」


よしよし、じゃあ次は貰った地図だね。


地図"天使の神殿"


地図を見てみると場所はここからほとんど真逆の場所だった。


「ええ……スコーン、はまだ復活してないし――ここまで歩いていくの?」


仕方がないのでのんびり砂漠の景色を楽しみながら歩くことにした。


何もないと思っていたんだけど遠くの方にサボテンが動いていたり、砂の中を泳ぐ魚が時折飛び出てきて跳ねたりと案外ちゃんと見て歩くと意外と楽しめた。


「あれかな?」


神秘的な神殿が見えてきた。


私はゆっくり近づいていく。


「お邪魔しまーす」


ゴゴゴゴと大きな扉を開けて中に入ると大きな銅像が目に入った。


「こんな場所に旅人が来るなんて珍しいですね」


バサッと大きな白い翼を広げてどこからか金髪の女の人が現れる。


「ようこそ、可愛らしい旅人さん……私は天使、名はありませんので天使と呼んでもらって構いません」


天使さんは私の前に降りてきて綺麗なお辞儀をする。


「ここは天使の神殿、昔は辺り一面花畑が広がっていて人々が栄えていたのですが今はこの通り廃れて誰も知らぬ場所となっています」


へー花畑も見てみたかったなぁ。


「あら?この感じ……」


天使さんは何かに気づいたのか私の周りをくるくると見てまた私の前に戻る。


「あなたから悪魔の痕跡が感じられますね」


ぎくっ!やっぱり天使と悪魔って敵対関係?もしかして悪魔になれるのバレた?


「あ、あの!」

「いえ、言わなくても分かります――悪魔と戦ったのでしょう?」

「へ?」


ひょっとして悪魔になれるのバレてない?戦ったことしか分かってなかったりする?


「その顔、やっぱり戦ったのですね……しかし悪魔は強敵、人間には敵わないでしょう。あなたも敗北をしてここにきたのですね」


いや、勝ったけどね……。


これあれだ、あの悪魔って勝っちゃいけないやつだったんだ……負けイベントってやつ。


それでこれは悪魔との再戦イベント?みたいなやつなんだ。


「悪魔も長い封印で弱っていると思いますがそれでも逸脱した存在……本当は天使である私や他の天使が討伐しないといけないのですがいかんせん私はこの通りほとんどの力を失い昔のようには行きません。他の天使の場所も分かりません」


あの悪魔、あれで弱ってたの?!


天使さんもこんなキラキラしてて神々しいのに力を失った状態なんだ。


「しかし悪魔を放っておくことは出来ません!そこで旅人さんにお願いがあります」


放っておくも何も倒しちゃったんだけどね。


「力を失い悪魔を倒す事は出来ませんが人間でも倒せるくらいには弱体化することが出来るアイテムなら作ることができると思います」


なるほど、アイテム!それで弱くなった悪魔を倒すのがイベントの流れだっだんだ!


「そこで旅人さんにはそのアイテムの材料を集めてきてほしいのです」

「材料?持っているものだといいんだけど」


大体はアルマさんに上げちゃったからないかも。


「材料は"サボテンフラワー"5つ、"ドラゴンの血液"2つ、"魔法の瓶"1つ、そして"神秘の雫"1つです」


何一つ持っていなかった……。


どれも聞いたことのないアイテム……いやドラゴンの血液は見たことあるっていうか1つだけ持ってた気がする。


アルマさんにドラゴンの素材まとめて上げちゃったから無いけどね!


「どうですか?持ってこれるでしょうか?」


『クエスト"天使のお願い"が発生しました』

『受けますか?』


どこにあるかが全く分からないしそもそもドラゴンの素材を取るにはまたあのドラゴンと戦わなければいけないということで……1人で勝てるだろうか、やるしかないかな。


正直パラが無双して勝てそうだと思ったのは内緒だよ。


「時間がかかるかも知れないけど集めてみるよ」

「ありがとうございます!素材の場所についてはある程度は分かりますので分からなかったら聞いてください」


素材の場所を教えてくれるならなんとかなりそうだね。


私は全ての素材の場所を聞くことにした。


サボテンフラワー……サボテンゴーレムやサボテンスライムというモンスターを倒すと稀に手に入る。


ドラゴンの血液……ドラゴン系統のモンスターを倒すとごく稀に手に入る。


魔法の瓶……オアシスの街にある魔法研究所が保管しているらしい。


神秘の雫……上記の素材を手に入れたら教えてくれるとのこと。


「じゃあ、ひとまず簡単なやつから行ってみよう」

「旅人さんの無事を祈ってここでお待ちしております」


私は天使さんに別れを言って神殿から出ていった。

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