第56話 悪魔転生してみた
「さてと……ここならいいかな?」
誰もいないであろう砂漠の奥の方まできた、というか目の前にボスゲートがあるから最奥だね。
いや、ボスに挑むつもりはなかったんだよ?ただ見つけちゃっただけだから。
一応、辺りを見渡すがモンスターがチラチラと見えるだけで誰もいない。
「ふー……よし!」
深呼吸をして例のスキルを使う。
「《悪魔転生》」
なんか力が湧き上がってくる感覚……破壊モードとは全然違う。
『専用のステータスに変化します』
ステータスが変わるようだ。
ラビリル Lv33
*悪魔転生
HP300/300 MP1000/1000
筋力 300 防御 100
賢さ 1 俊敏 100
幸運 1
スキル《ヘルプ》《悪魔の爪》《狂化》《飛翔》《状態異常無効》《物理攻撃耐性》《魔法攻撃耐性》
なんか装備欄が無くなってる……よく見たらグローブとか短剣とかも無くなってるしシンデレラドレスとかは着ているけど真っ黒になってる。
「今の私、どんな見た目になってるんだろう?」
こんなことなら鏡とか買っておけば良かったかも、そもそも鏡なんてゲームで売ってるのか知らないけど。
そんなことを思ってたら私は気づいてしまった。
「この尻尾みたいなの何?!私についてる?!」
戦った時の悪魔と同じような先がとんがった尻尾が私のおしりに生えているように感じた。
「なんか変な感じする……普通に感覚あるんだけど」
うねうねと動かすことが出来たし引っ張ったらめっちゃ痛かったので感覚があるのだろう。
「……尻尾があるって事はもしかして――」
恐る恐る頭を触ってみるとやっぱり変な突起みたいなのがあった。
「やっぱり角もあるよね……」
そして背中には黒い翼まで生えていた。
「ちゃんと翼も動かせるの凄いね」
なんとパタパタと動かせた、特に何も起こらないけど。
まあそんなこと気にしてても仕方ないしスキルの説明を見ることにしよう。
《悪魔の爪》……両手から鋭い爪を生成する。
戦った悪魔も使ってたやつだね、思いっきり殴ってやっと壊せたやつ。
《狂化》……筋力と俊敏の数値が2倍になるが防御が半減し、状態異常などの耐性が無くなる。狂化中、毎秒MPが1づつ減っていく。
パラの麻痺が効くようになったのはこれのおかげだね。
《飛翔》……自由に空を飛ぶことが出来る。飛翔中、上空10メートルまでは毎秒MP1づつ減っていき1メートル上がるごとに消費MPが1づつ増える。
空飛べるの?!
「悪魔は空飛ばなかったよ?」
私の翼は飾りじゃなかった?!
とにかく試してみよう、どういう風に飛ぶんだろう。
「《飛翔》」
スキルを使うとふわりと身体が浮いていく。
「わわわ!」
何もしないでいると、どんどん高く上がっていってしまいそうだったので止まれと念じてみた。
ちゃんと止まってくれたし、行きたい方向に念じたらしっかりと進んだ。
「わーい!凄い楽しい!」
飛ぶ速さは私が走る速度と同じくらいだね、俊敏が高ければそれだけ速く飛べるかな。
だんだん飛ぶのに慣れてきた私はぐるぐると回ってみたりアクロバティックに飛んで遊んだ。
そして遊んでいて調子に乗った私はそこそこ高い場所まで来てしまい急に飛べなくなる。
「あ、MP切れたー!!」
MPが切れて飛べなくなった私は地面に突撃してしまう。
「あたたた……」
完全にMPのこと忘れて飛んでた……。
「MPのことちゃんと見ないとなぁ、すぐに無くなっちゃうね」
狂化も使うから戦った悪魔は飛翔を使わなかったのかな?それとも飛べるのは私だけ?
戦った悪魔にも翼あった気がするし多分MPの問題だね。
「あとはこれ使ってみよう《悪魔の爪》」
シャキンッと私の爪が伸びたというか生えた?真っ黒な長い爪が現れた。
切れ味はどんな感じかなー。
試そうと思ったのだがなんとも運が悪いことに周囲にはモンスターが見当たらなかった。
「仕方ない、そこら辺にある岩にしよっと」
私は岩に近づいて爪で引っ掻く。
ガキンッ
「硬っ!痛っ!」
岩を切ろうと思ったのに爪が負けて砕けてしまった。
ええ……この爪、脆くない?よく考えたら私も戦っている時に悪魔の爪を破壊したしあまり使えないのかも。
MPとか使わないしこんなもんなのかな。
「この!壊れろー!」
爪で切ろうとした岩に向かって思いっきり拳を握りしめて叩く。
「あ、割れた」
岩に少しの亀裂が入り、少しずつどんどん広がっていって最後には粉々になった。
「殴る方が強いね!」
私は岩を壊すのが楽しくなってきて一通り見える限りの岩を破壊して回った。
「……こんな開けた場所だったっけ?」
結構岩山に囲われて見つけられにくそうにボスゲートが隠されていた気がするんだけど、私が岩を破壊し尽くしたがために周囲がスッキリしてしまった。
「まあ、他の人が見つけやすくなっていいでしょ!多分」
ちょっと待ってみたけど岩が元に戻る事はなかった。
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