第49話 ノープランデート

「見てこれ!どう?」


オーバーサイズの白いTシャツにチェック柄のズボン、そして何故かサングラスをかけて紗由佳が試着室から出てくる。


「似合ってるけどサングラスなんてどこにあったの……」

「普通に置いてあったよ?しかも結構安い」


サングラスをかけているのにドヤ顔しているのが分かる。


「次はモモの番だよ」

「そんな見せるものじゃないと思うんだけど……普通のワンピースだし」

「私が見たいの!」


紗由佳が私のワンピース姿を見たいと言ってくるので仕方なく見せることにした。


「ど、どう?」

「ほうほう……シンプル清楚な感じでとても似合ってるよ!」


そうマジマジと見られるの恥ずかしいからやめてほしい。


「ちょっとこれつけてみてよ、あとこれも」


紗由佳からベルトとネックレスを渡される。


「これつけるの?」

「シンプル清楚ってのもモモらしくていいと思うんだけどそこに何個か加えるのもいいと思うんだ!」


私にはよく分からないけどそう言うもんなのかな?


言われた通りに渡されたアイテムをつける。


「こんな感じ?」

「ベルトでモモの身体のラインが出て……うへへ」


紗由佳は私の姿を見てにやけた顔をしている。


ハッ!身の危険を感じる!


「まさかそれが目的かー!」

「チッ!ばれたか」


よく考えたら私が試着室から出た時には既にベルトとか手に持ってた!私につけさせる気満々だったよ!


私は隠れるように試着室のカーテンを閉めようとする。


「待って待って、似合ってのは本当だから!最後の仕上げにこれ!」


そう言って紗由佳はサングラスを渡してきた。


「なんでサングラス?」

「いやカッコいいじゃん」


確かにサングラスはカッコいい感じするけど今の格好とは合わないと思うんだけど……。


そう思いつつ私はサングラスをかける。


パシャッ


「ふぇ?!」


紗由佳がスマホを構えて写真を撮ってきた。


「なんで撮った?!」

「ふへへ、壁紙にしよ」


いや普通に盗撮だから!


私は紗由佳の腕を掴む。


「紗由佳〜」

「え、なんかモモが怖い」

「勝手に撮るのはやめようね?」

「……はい」


サングラスがいい感じに圧力になってくれた、これ買おうかな。


「……勝手に撮らなきゃ別に良いのに」

「え?今なんて言った?!」

「なんでもなーい!」


私は適当にはぐらかして数着、服を買った。


「お腹空いたね」

「モモは何か食べたいものとかある?」

「うーん、美味しいものならなんでも良いんだけど」


高いお店は流石に無理かな。


「じゃあ、適当にファーストフード店で良い?デートらしくはないけど」

「安いし美味しいもんね、楽だし」


私たちは各自好きなものを注文して席に着いた。


「これからどうする?」

「私は特にやる事ないけど」


デートという割にはノープランだよね。


そして何故、紗由佳はサングラスをずっとかけているの?紗由佳も買ったの?


「適当にぶらぶら歩くかー、ゲーセンとか行く?」


そんな感じでご飯を食べ終えた後、私たちは適当に歩きながら雑談することにした。


「ところで聞いてなかったんだけど紗由佳はテストどうだった?」

「……それ聞いちゃう?」


急に紗由佳の元気な勢いが無くなる。


「お、教えないからね?」

「えー私は別に教えるよ?」


頑なに紗由佳はテストの結果を教えてくれない、そんなに悪いの?


紗由佳、テスト期間はログインしてなかった気がするし勉強してると思ったんだけど……。


「あー、教えてくれたら手を繋いであげても良いんだけどなー」

「教えます!」


いや、切り替え早っ!


自分で言っといてなんだけど少し引いたよ。


「教えると言ってもあんまり覚えてないから5教科の合計だけね、確か190点くらいだったはず」

「低くない?」

「それ言っちゃあおしまいだよ」


5教科平均40点以下じゃん……。


「モモだって前と違ってゲームばっかりしてるから点数落ちてるんでしょー?」

「合計430点くらいだよ、いつもより20点くらい低いね」

「たっか!意味わからないって!」


まあ、今回は平均点が低めだったからしょうがないってことで。


「それでモモ?教えたからさ――」


紗由佳の視線が私の手に……。


「私が言ったことだし良いよ」

「やったぁ!」


飛びつく勢いで私の手を掴んでくる。


「やっぱり柔らかくてすべすべだぁ」

「私の手で頬擦りをするなー!」


そして逐一感想を言うのやめて……。


「ごめんごめん、ちょっと興奮しすぎた」

「手を繋ぐだけだからね」


やっと落ち着いてくれた紗由佳が謝ってくる。


「もうこんな時間かー、楽しい時間は終わるのが早いね」

「ずっと喋ってたね」


結局夕方になりつつある時間帯になるまで私たちは雑談していた。


そろそろ帰らないと夕飯までに帰れなくなる。


「じゃあ駅にレッツゴー」

「ちょっと、そんな走らなくてもー」


私は紗由佳に手を引かれながら駅まで走った。

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