第37話 初配信

「よし、配信するぞー」


ポチポチと配信するための設定をする。


そして配信開始のボタンを押した。


すると目の前に見たことのあるキューブ状のカメラがふわりと現れる。


「あーどうも、ラビリルです」


流石に人が多い広場で話すのは恥ずかしかったので人気の少ない場所で配信を開始した。


『初見!』

『一応初見』

『!!!』

『生配信は初見です』

『キター!』


「初見さんいらっしゃい、声とか聞こえてる?」


配信開始したばっかりなのに沢山の人が見に来てくれていた。


カメラの設定は基本的にAIがやってくれるからマイクも大丈夫だと思うけど一応、聞かないとね。


『バッチリ聞こえるよ』

『きこえるー』

『大丈夫だよ』

『可愛い声が良く響く』


「良かった、改めてティニット公認プレイヤーになったラビリルです!よろしくね」


カメラに手を振って挨拶をする。


『うん、可愛い』

『見た目通り礼儀正しいのすこ』

『今日は何するの?』


コメントを見ていたら今日何するかを聞いている人が多くいた。


「今日はまだ行ったことがない東のエリアに行こうと思って……あわよくばボスを倒そうかなと」


『まだ行ったこと無いんだ!』

『最近ラビリル見なかったから東のエリア行ってると思ってた』

『あわよくばで倒されるボス』


「最近いなかったのは勉強してたからだよ、テストがあるからねー」


『偉すぎ』

『そっか、この時期学生はテスト期間か』

『俺も配信見ながら勉強すっか』


だんだん緊張しなくなってきた私は視聴者のみんなと話しながら東のエリアまで歩いて向かった。


「おお、洞窟なのに広いね」


想像してた数倍広かった、なんならついさっき行った試練の塔の方が狭かった気がする。


「ちなみにこの壁とか壊れるのかな?」


私はグッと拳に力を入れる。


『やめとけw』

『なぜすぐに壊そうとする』

『早まるな!ここは洞窟だぞ!』


「ちょっとだけだって!」


今回は止める人がいないので私は壁に向かって殴ってみた。


鈍い音が洞窟内に響く。


「痛ったーい!え?めっちゃ硬いんだけど!」


噴水とかゴーレムとか殴っても最近はヒリヒリするだけなのにこの壁殴ったらめっちゃ痛かった。


『そりゃ岩殴ったら痛いわw』

『痛覚設定100%ならなおさら痛い』

『洞窟崩れなくて良かったね』


よく見たらHPが4分の1ほど削れてた。


「うーん、壊せないのね。気を取り直して先に進もう!」


少し残念と思いつつ先へ進むと早速モンスターが現れた。


マジックゴーレム Lv19


「まーた、ゴーレム?試練の塔にもいたよね」


でも見た目はガラスみたいに綺麗な石像だね。


『なんか防御弱そう』

『簡単に割れそう』

『マジックって名前なら多分魔法使ってくるよ』


呑気にコメント見てたらマジックゴーレムが水の球を私に飛ばしてきた。


「おっと、本当に魔法使ってきた……魔法使ってくるモンスターは初めてだね」


持ち前の俊敏で魔法を避けてから次の魔法を使ってくる前にマジックゴーレムに近づく。


そして胴体部分を殴ってみるとピシッと割れるような音がしてマジックゴーレムにヒビが入った。


「もう一発……うわっ!」


もう一発追撃しようとすると目の前に炎の球が現れて慌てて避けようとするが肩に当たってしまった。


「アチチッ!熱っ!」


装備が燃えるとかはない為、当たった炎の球はすぐに消えたがとても熱かった。火傷とかはないよね?


そういった状態異常はないみたいでただ単にダメージを受けただけだった。


ダメージ的にはさっき壁殴った時の方が痛かった。


「このやろう!やったなー!」


ゴーレムだしやろうでは無いか。


今度こそヒビの入った部分に攻撃をするとしっかりとガラスみたいに割れていなくなった。


いつもは砂みたいにサラサラいなくなるけどガラスっぽいからかキラキラしていなくなった。


『ナイスー』

『すげー』

『魔法食らってたけど大丈夫?』


「全然大丈夫だよ」


そっか、みんなには私のHPが見えないんだった。


ブロックスライム Lv17


なんかカタンカタン音が聞こえてきたと思ったら四角いブロックみたいなスライムが現れた。


「変なスライムだね」


私が拳を構えるとずっと頭の上にいたパラが降りてきてゆっくりブロックスライムに向かっていった。


「パラ?こいつ倒したいの?」


最近分かったんだけどパラって相性が悪い相手には絶対に戦わないんだよね、なんかずる賢い。


このブロックスライムは打撃攻撃しかしなさそうだしね。


『そのキノコって強いの?』

『いつもラビリルに雑に使われてるやつ』

『戦ってる姿は見たことない』

『イベントでは投げ飛ばしてたっけ?蹴ってた?』


「パラはねぇ、強いし可愛いし最強なんだよ!」


そう言っているとパラは麻痺粉を撒き始める。


『強いのか(可愛いというのは置いておいて)』

『まあ、ラビリル曰くレアモンスターだし』

『可愛い……のか?』

『なんか撒き散らしてて草』


ずっと見てたら愛着湧くからそのうちみんな可愛いって思うよ。


「命令しなくても勝手にスキルとか使って勝手に敵を倒すんだよ!これも私の育て方が良いからだね!」


パラは麻痺粉で動けなくなったブロックスライムを捕食する準備を始めていた。


『それ、命令無視では?』

『仲間が命令無視するのって懐いてないからじゃ……』

『シッ!そう思っても言わないの!』


ええっ!これ命令無視なの?!


いやいや、パラは良い子だしそんなことないでしょ!ちゃんと命令だって言ったら聞いてくれるはず。


「パラ、私に《回復粉》使って!」


しかし捕食中のパラは無反応であった。

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