第31話 誰しも変な趣味はある
「モモ!おはよう!」
次の日、いつもどうりに学校へ行く途中にこれもまたいつも通り走ってくる紗由佳と出会った。
「紗由佳、おはよう」
「昨日は家の用事で休んだって聞いたんだけど何してたの?」
紗由佳が昨日の事について聞いてきた、生配信してたしどう考えてもバレてそうなのだがどうやらバレてないようだ。
「日帰りで旅行行ってたんだよ」
また適当に嘘をつくと紗由佳はスマホを取り出して私に突きつけてくる。
「旅行ねぇ――これのことかな?」
「あっ……」
紗由佳のスマホの画面には昨日の生配信のアーカイブが映っていた。
「今度は誤魔化せないね、ラビリルさん?」
「あはは……流石にバレたかー」
やっぱりバレてたらしい、当然か。
「もう!いつからティニットやってたの?私が勧めた後?」
「――発売日に」
「私が勧めた時からやってるじゃん!なんで言ってくれなかったの?!」
「物を壊したりしたくて始めたからそういうの知られたら絶対引かれると思って」
「そんなことない!誰しも変な趣味はあるしラビリルの戦う姿めっちゃカッコよかったんだから!」
パンチやらキックやらの仕草をしてキラキラした目で私を見てくる。
「そ、そう?カッコいい?私カッコよかった?」
「あんな大きなボスに向かっていくのとか最高だったよ!それに傷ついてボロボロの女の子なんてむしろ最高――なんでもない」
「今なんか変なこと言ってなかった?!」
「なんでもないから!」
顔を真っ赤にして私から顔を背けようとする紗由佳。
誰しも変な趣味はあるって言ってたけどもしかして……。
ちょっと試してみよ。
「ねぇ、誰しも変な趣味があるって言ってたけどもちろん言った本人にもあるんだよね……?」
「うぐっ!あるけど!言わないから!」
私は紗由佳に近づき腕を組む。
「ねぇねぇ、教えてって」
「絶対に言わない!モモの柔らかい腕が……って友達になんて事を――」
さらに私は紗由佳に抱きつく。
「紗由佳〜」
「はぁ、はぁ、言う、言うから!とりあえず離れて……」
やっと観念したらしいので私は紗由佳から離れる。
そして決心した紗由佳が口を開く。
「――が好き」
「声が小さくて聞こえないなぁ」
「私はお――が好きなの」
「もうちょっと大きな声でお願い」
湯気が出そうなくらい赤くなって顔を私に向けて言う。
「私は!女の子が!大好きなの!」
やっぱり私の思った通りだった。
紗由佳って自分からのスキンシップは良くしてくるくせに私から紗由佳を触ろうとすると若干避けられてたんだよね。
「それでモモは私のことを軽蔑した?」
「いや特に」
「これでおあいこ、もう良いでしょ!」
紗由佳も私の秘密知った時こんな気持ちだったのかな?なんとも思わないみたいな。
「あの……モモのせいで身体の火照りが治らないんだけど」
顔を真っ赤にし内股で腕をくねくねさせて私を見てくる。
やべっ!からかいすぎたー!紗由佳が本気になってる!
「私に抱きついてきたしもしかしてモモも同じ――」
「そのようなご趣味はありません!さいならー」
「ちょっ!モモー!」
逃げるように学校へと走っていった。
ちなみに学校ではチラチラと色んな人に見られはしたが特に話しかけて来る人は居なかった。
「モモー!今日は部活休みだから一緒に帰ろ!」
「ええ……ちょっと身の危険を感じる」
「酷い!」
いつも通り、1人で帰ろうとすると紗由佳が後ろから声をかけてきた。
「朝は気が動転してただけだから!それにあれはモモが誘惑してくるせいで……」
「はいはい、私が悪かったから……良いよ、一緒に帰ろう」
「やったー!ティニットの話しようね!」
昨日は疲れたからティニットをしないで寝た、banは解除されているのだろうか。
「モモは今日ってこの後暇?」
「んーやることは宿題くらい?かな」
ちゃんと宿題とかやることはやらないとね。
「なら帰ったら一緒にティニットやらない?アップデートも今日のお昼あったしさ」
「良いよ、1時間くらいしか出来ないけど」
ban解除されてなかったら無理だね、その場合は猛烈に文句言っておこう。
私にはさまざまな視点からの未公開土下座画像があるんだぞ、昨日作ったSNSアカウントに投稿しちゃおうかなー。
「あとちょっとしたお願いなんだけど……」
「何?――え?」
さっきまで普通だったのにまた例のクネクネ始まった……。逃げようかな。
「手、繋いでいい?」
「……」
私はジト目で紗由佳を見つめ、少しづつ距離を取る。
「これだけ!これだけだから!これ以上は何もしない!」
やっぱり朝からかわなきゃよかったかも……。
紗由佳の勢いが凄い。
「……手繋ぐだけだよ」
私は紗由佳に手を差し出す。
それに反応した紗由佳が容赦なく手を繋いできた。
「柔らか……おおっ」
「生々しい反応やめて……」
なんか変な雰囲気のまま私たちは帰宅した。
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