第30話 なんか居た……
「はぁ……疲れたぁ」
生配信が終了して私は机にぐでーっと身体を前にする。
「お疲れ様ー!初めてなのにちゃんと喋れたね」
ポンポンと頭を撫でられながら私は貰った飲み物を飲む。
「あの、1人で配信するのは良いんだけど毎回ここでする?」
「ラビリル……今は百ちゃんで良いか、実写配信をするなら機材がいるけどまあそれは会社が用意するとしてゲームだと設定とかしてお金使えば誰でも配信出来るよ」
お金いるんだ……そりゃそうだよね。
「お金も会社が出すよ?」
「じゃあ私は特に何もしなくて良いんだね」
「百ちゃんはゲームを楽しく実況するだけ、それで多分めっちゃゲームユーザー増えるね」
そんなに期待されてもそんなに私目当てに人は来ないと思う。
「チャンネルの収益で百ちゃんもガッポガッポだよ!焼肉、スイーツ食べ放題!」
「焼肉……スイーツ、私頑張るね!」
やる気出てきたー!私、色々な物を破壊するのが1番だけど食べるのも大好きだからね!
「そろそろ帰らないと夜になっちゃう」
「じゃあ私が駅まで送るよ」
私はガチャリと扉を開けて部屋から出ようとする。
バタンッ
「ん?百ちゃん、なんで扉閉めたの?」
「なんか居た……」
「なんか居たって…誰か部屋の前にでも居たの――」
バタンッ
由佳さんが扉を開けてすぐに閉める。
「確かにこれは戻りたくなるね……多分というか絶対に百ちゃんが関係してるからもう一度開けてあげて」
「ええ……分かった、開ける」
もう一度私は扉を開ける。
「「「「「「すみませんでしたー!」」」」」」
目の前には複数の人が頭を床に突きつけて土下座している。
良い大人が私みたいな子供相手に何やってるの……?
「大の大人が小さな子供に土下座する図、写真取っとこー」
パシャパシャと後ろから由佳さんがこの光景を撮っている。
「一体どういうことー!」
なんか結構な人数の大人の人が私に土下座してるんですけどー。
「この方たちはティニットでのスキル作成班です、ノリで作ったスキルや適当なテストプレイのせいで加々良さん……ラビリルにご迷惑をお掛けしたので私がお呼びしました」
横から東井さんが説明してくれた、どうやら破壊者などのスキルを作った人たちらしい。
「スキルのバグや不具合が多いのはこいつらのせいなんだよー、百ちゃんも運営も叩かれてる原因ってわけ」
確かにスキル関連以外のバグとかってあったっけ?ほとんどスキルばっかりな気がする。
「あとラビリルをアカウントロックしたのもこの人たちですね、スキル作成しすぎてもいけないのでプレイヤーの監視などもやってます」
あ、うん、banはいけない、凄い悲しかったもん。
「私、最初banとかの文句言おうと思ってたんですけど公式生配信したりしてどうでも良くなってさらにこんなことされたら許すしかないじゃないですか」
由佳さんとか東井さん、それに最初で休憩所にいた人たち、ご飯を食べてた時に話しかけてくれた人も皆んな良い人たちだったもん。
なんでこんな良い人たちなのに運営が下手だと思ったら一部がダメダメだったんだね。
モンスターとかカッコよかったり可愛かったりでめっちゃ良いもん、特にパラ。
あとゲーム内でのご飯も美味しいし装備品もカッコいい。
「土下座はもう良いから早く私のban解除とスキル修正とかアップデートしてください!」
「だ、そうです。急いで作業に戻ってください」
ガタガタと立ち上がって私に一礼してから皆んなどこかへ行った。
てかまだ写真撮ってる音聞こえるし「後で公式アカウントでSNSにあげちゃお」って聞こえたんだけどそれ大丈夫?!
「聞いて良いか分からないんだけど東井さんって何やってるの?」
「私ですか?一応そちらの美原さんと同じで広告担当ですね。美原さんが撮影、私が動画編集です」
どう考えてもスキル作成班どころかこの会社のリーダー?みたいな立ち位置にいた気がするんだけど広告担当なんだ……。
「加々良さんも生配信などもデータを私に送ってくれたら編集しますよ」
「ありがとうございます!そういうのやった事ないので」
「機材などはご自宅に後日届けますので……1番良いのを先程の人達が払ってくれるそうです、あとティニットでの配信もban解除と同時に出来る様にしときます」
1番良い機材をくれるらしい、やったね!どのくらい掛かるんだろう……。
そして私は東井さんと由佳さんの連絡先を交換し帰宅した。
ちなみに本当にあの写真をSNSに投稿したらしくバズりにバズったらしい、私も由佳さんから様々な角度から撮られた写真を大量に貰った。
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