第28話 公式生配信1

「はい!ティニット情報配信始めるよー!広告担当の美原由佳でーす!」


ついに始まってしまった公式配信……。


私は緊張で心臓がバクバクになりながら出番を待つ。


『始まった!』

『平日のお昼は辛いぜ』


コメントがずらずらと流れていく、同接人数は5万……。私、こんなに沢山見てる前で喋るの……?


別のモニターにはティニットの始まりの街、そこの広場が映っていた。


ティニットにログインしている人にも見えるようにこの配信はティニットの広場にも映し出されている。


「みんな昨日の第一回イベントは楽しめたかな?」


『レベルはそこそこ上がった』

『楽しかった!』

『緊急クエストやばかったわw』


楽しかった、何もできなかったなどのコメントが流れる。


「では早速、結果発表……と行きたいところなんだけど今回はスペシャルなゲストがおります!」


出番が近づきさらに心臓がバクバクと揺れた気がする。


『誰だろ?』

『プレイヤー?』

『PVの声優とか?』


「どうぞ!こちらに来てくださーい!」


私はその言葉でゆっくりと由佳さんの隣へと近づく。


「今回のスペシャルゲスト!プレイヤーのラビリルです!」

「こ、こんにちは!ラビリル……です」


『ラビリル?!』

『おう……破壊少女じゃん』

『現実世界でも変わらず可愛い』

『良くも俺の顔を蹴りやがったな!』

『見た目変わらんのね』



「運営さんに招待されてきました、あと公認プレイヤーになりました」

「そうなんです!ラビリルはこのティニット公認プレイヤーとして活動していただくことになりました!」


後付けで言った言葉を盛り上がるように言い直してくれる由佳さん。


『公認かぁ、結構ラビリルのこと言ってたやついたもんな』

『すげぇ……』

『ついでに言うことじゃないw』

『公認プレイヤーってことはラビリル単体で配信してくれるんか』

『ラビリルをチーターって言ってたやつ今どんな気持ち?ねぇねぇどんな気持ち?』


さらにコメントの勢いが増す……同接人数もどんどん多くなっている。


「はいはい、みんなラビリルに質問したい気持ちは分かるけどまずはイベントの結果発表だよ!」


まずは?って事は後で私、質問されるの?そういえば私が配信に出て何するか聞いてなかった!


「まずは街貢献度トップ3!」


シュンと画面が切り替わる。


1位.猫の助 貢献度2200

2位.生産者です。 貢献度960

3位.アルマ 貢献度650


あ、アルマさんいるじゃん。


『猫の助さん流石だな』

『めっちゃNPCを助けたりポーション分けたりしてたもんな』

『生産者です。って名前適当すぎだろ』

『。さんじゃん、俺の装備作ってもらったぞ』


確かに凄い名前の人いるけど知っている人は多そうだね。


「次に戦闘貢献度トップ3!」


1位.ラビリル 貢献度3650

2位.あるふぁ 貢献度430

3位.エスクード 貢献度390


うわぁ、私、やりすぎだよ……。何これ。


『圧倒的ラビリル』

『分かりきった結果』

『あ、うん』

『王者の風格』

『ですよねー』

『し っ て た』


「最後にボス貢献度トップ3!」


1位.ラビリル 貢献度1000

2位.アルテナ 貢献度800

3位.あるふぁ 貢献度500


あ……また私――


『うん、まあ大体予想通り』

『アルテナもめっちゃ指揮とって頑張ってたもんな』

『最後のラビリルに攻撃しろとかな』


「実はあのボス、時間的に倒せないかなとか思いつつ実装したらしいよ。全く運営酷いよね」


確かに私だけのステータス収束じゃ倒せそうになかった、けど由佳さんも運営の1人だよね?


『運営が運営を酷いというこの状況』

『公式配信だぞ』

『いや草』

『いやでも実際クソ運……なんでもないです』

『(ラビリルから目を離しつつ)あのボスに勝てるわけないだろ』


「ちなみに緊急クエストの貢献度もある別枠であるから最終結果発表の前に発表しちゃうね」


あ、私が謎に緊急クエストになったやつ。あれも貢献度があるんだ。


1位.アルテナ 貢献度1

1位.エスクード 貢献度1

3位.その他、全プレイヤー 貢献度0


『wwww』

『どういう事だよ!』

『実質、貢献度したの2名で草』

『やったー!雑魚の俺でもランクインしたぞ()』

『確かにただの蹂躙劇だったけど』


コメント欄が大変なことになっている。あんまり記憶がはっきりとしないんだけど、あの時の私はどれほど暴れていたのだろうか。


「補足説明をするとラビリルに1度だけ攻撃を当てたプレイヤーが1位の2名ね。どちらもカスダメだったから倒せなかったけど」


と、いう事らしい。それ以外のプレイヤーは私に攻撃を当てられなかったようだ。


「とにかく緊急クエストを除く、その他色んな貢献度を合計した最終結果発表をどうぞ!」


1位.猫の助 合計貢献度3600

2位.ラビリル 合計貢献度3050

3位.あるふぁ 合計貢献度2400

4位.アルテナ 合計貢献度2380

5位.エスクード 合計貢献度2200

・・・

・・


あれ?私の貢献度減ってない?


『ラビリルの貢献度間違ってない?』

『さっきの合計するだけで4600くらいだと思うんだが』

『なんか減ってて草』

『不正操作されているぞ!』


コメントも私のことを言っている人がほとんどだ。


「猫の助さん!第一回イベント1位おめでとうございます!」

「おめでとうございます!」


とりあえず祝っておく、私は入賞できれば良いなと思っていただけで別に1位は狙っていない、報酬も変わらないしね。


「ここで皆んな疑問に思っているであろうラビリルの貢献度について話していこうと思います!」

「あ、これ計算間違いじゃなくて本当の数字だったんだね」

「ちょっとラビリル?流石にクでゴな運営でもこんな初歩的なミスはしないって」


それならなんでこんなに貢献度減ってるんだろう?私何か悪い事したっけ?ゴブリン倒してる記憶しかない。


あとこの人自分の働いている会社に酷いこと言い過ぎじゃない?なんでこの人が広告担当なの……。ボーナス減るよ?


「じゃあ皆んなこれを見てねー」


また画面が切り替わり私の貢献度が減っている原因が表示される。


城壁破壊 −1000

NPCへの危害 −1000


「あーうん……?」


キングゴブリンに蹴られて叩きつけられた場所が城壁、よく考えたらバキバキだった気がする。


てかそれキングゴブリンのせいで私のせいじゃないよね?!


それにNPCには危害加えてないよ?加えてたとしてもプレイヤーだけだし。


「運悪くラビリルが叩きつけられた時に城壁近くにいたNPCが衝撃で飛ばされて怪我したみたいですねー、とても理不尽!」

「いやそれ私、関係無いようなものでしょ?!」


『これにはラビリルもお怒り』

『意味不明で草』

『NPC避難しとけよ!』

『マイナスの比率がおかしい』

『ク!な運営はAIもク!だな』

『まあ実質1位って事で』


「いやいや、それ以外にも緊急クエスト中に城壁壊してたし。NPCも踏み潰してたよ?」

「……ごめんなさい」


『草』

『言われてみれば確かに』

『あー』


生配信は続く

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