第26話 緊急クエスト
「ラビリル!良くやった!」
「……」
「ラビリル?」
「う、ぐ…」
アルテナさんが近づいてくる。
ダメだダメだダメだ、プレイヤーは壊しちゃダメ、収まれ私の破壊衝動!
はぁはぁと息を切らせなんとか破壊衝動を抑えようとする。
「どうした!ラビリル!体調でも悪くなったか?すぐにログアウトしろ!」
すぐに異変に気づいたアルテナが私のことを心配してくれる。
敵対したプレイヤーを壊したくてたまらなくなる、破壊モードの特性だろう。
一度敵対したプレイヤーでも一定時間したら敵対は解除されるはずだけどどのくらいなのだろう。
「ごめん、ログアウトする…ね」
私は街に急いで戻りログアウトボタンを押す……がログアウト出来ない。
何故?
『スキル発動中の為ログアウト出来ません、スキルを解除してください』
いや破壊モードって解除出来ないじゃん!バグだよバグ!おーい、運営さんバグ無いって言ってたじゃん!
「やば……どしよ」
『緊急クエスト発生!プレイヤー"ラビリル"の暴走を止めろ!』
ボスが現れた時と同じようなシステムメッセージが全プレイヤーに送られる。
「ラビリルを止める?一体どういうことだ?」
私に聞かれても分からない。
『ラビリルさん、我慢せず暴れて良いですよ』
システムメッセージがそう囁いてきた。私はその言葉を聞いた瞬間に目の前にいたアルテナさんのお腹を殴る。
「ラビ、リ、ル……!」
「ごめんね」
急な攻撃に対処出来ず、倒れ込んだ所を踏み潰した。
『緊急クエスト中はデスペナルティはありません。また、ラビリルに対してはPK判定になりませんのでレベル10以下でも攻撃可能です』
なんかシステムメッセージが言っているが私は目の前の敵を壊すことしか考えていなかった。
「アハハハ!次は誰を壊そうカナ!」
襲ってくるプレイヤーを殴って蹴って潰しまくった。
・・・
・・
・
「……ん?ここどこ?」
暴れ回っていたのは覚えている。でもその後の記憶が無かった。
「ここ死んだ時の謎空間じゃん」
周りを見渡すが何も無い、いつもの謎空間だ。
『あなたのアカウントはロックされました、強制的にログアウトします』
「はい?ってえええええ!」
でっかく目の前に表示してあるメッセージ。
「嘘でしょ!ねぇ、嘘と言ってくれー!破壊モード使っても問題ないって言ってたでしょー!!」
謎空間で叫びながら私は強制的にログアウトさせられた。
「うぅ……ぐすっ」
ベッドでふて寝する私。
「はぁ……運営に連絡してみよ――ってなんかメールきてる」
株式会社ブラックステラからのメールだ。
「――ってどこ?なに?詐欺系のメール?」
一応調べてみよう……あっこの会社、ティニットの運営だ。
それなら読んでも大丈夫かな?
「どうせなら文句の1つでも返信してやろっと」
内容を要約すると破壊モードの不具合で一時的にアカウントをロックしただけで少し経てばbanは解除されるらしい。
「良かったぁ……アカウント戻ってくるんだ!」
あと、なんか暇な時で良いから会社に来て欲しいとか書いてあるんだけど……。
一度お母さんにメール見せて許可貰わないとなぁ。
側から見たら怪しいメールなんだよ、これ本当に詐欺メールじゃ無いよね?本物の運営だよね?
電話番号とか会社の住所書いてあるし調べた限りは本物っぽいけど。
「お母さん……ちょっと見てほしいものが――」
ガチャリとリビングの扉を開けるとお母さんが夕飯の準備をしていた。
「今日は早くゲーム終わったんだね、ご飯作ってるからちょっと待って」
「うん」
リビングにあるソファに腰をかけて足をパタパタさせながら待つ。
今日はカレーかな?良い匂いがする。
「お待たせ、見てほしいものってなに?」
「これなんだけど……」
私は自分のスマホを渡す。
そして受け取ったお母さんはしばらくメールの内容を見ていた。
「これ、本当?」
「一応調べたんだけど多分本物」
「それでこの会社に行きたいの?」
そう言われると私は行きたいのだろうか?でもこんな機会ないと思うし行ってみたい気持ちもある……ような?
「ちょっと行ってみたいかも」
私が自由に過ごせる世界をつくった会社、行ってみたい気持ちが勝った。
「一度、お母さんが電話してみるから……」
私が行きたいと言うと私にスマホを返してお母さんはリビングを出ていった、多分廊下で電話しているんだと思う。
「一応会社までの道のりと時間調べよ」
ふむふむ、電車で片道1時間半くらいかぁ。
結構遠いね、それに駅とか会社まで歩いたりするからもっと時間かかる。
ピロン
「ん?紗由佳からメールだ」
『モモって今日何してた?』
『急にどうしたの?』
大体の予想はついてる、多分今日のイベントで私を見たんだろう。
『今クラスのグループメールでモモがティニットに居たって話題になっててね。あっ!ティニットは前言ってたゲームの事だよ』
やっぱりそうだった、私はグループメールには入っていないから知らなかったけどそんなことになってたんだ。
『普通に勉強してたよ』
『そうだよね、モモがゲームとかするわけないし別人だよね』
バレそうな嘘をついてみた、そんなに私って勉強してるイメージなの?
『急にごめんね、また明日学校で!』
紗由佳とのメールを返そうとするとお母さんがリビングに戻ってきたので急いで適当にスタンプを返す。
「話はしてきたから明日にでも行ってきていいよ」
「え、でも明日は学校……」
どう考えても学校帰りに行ける距離じゃ無い。
「学校には休むって連絡しておくから、こういうのは自分の気持ちが変わらないうちが良いでしょ?」
「お母さん……ありがとう!」
私は夕飯を食べたあと、明日の準備をしてとにかく文句を言いにいくぞ!と意気込み早めに寝た。
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