第25話 ボス登場

『イベント終了まで残り20分――』


「アハハハ!楽しいねぇー!」


全て一撃で壊してしまうのが少し不満なのだがそれでも数が沢山いるから次々と破壊出来る。


途中から頭以外にも腕だったり足だったり攻撃して手加減したのだが簡単に消し飛んでしまった。


「あれ?なんか殴った時の感覚が違ったような……」


ポヨンとした感触……あっ!


「食事中にゴメン」


目の前にどう考えても食べかけというかゴブリンのお腹の一部が欠けていて、さらにそのゴブリンはまだ死んでいないのに身動き一つ取らない。


明らかにパラの捕食中だった、となるとさっきの殴った感触の正体はパラだろう。


「まあ、パラならノーダメージでしょ」


既に見えないところまで飛んでいったのかどこにも見当たらないけどね。


「私もまだ楽しまないとネ!」


麻痺してるであろうゴブリンを踏みつけて壊す。


そして次のゴブリンを……。


「ヒッ!」

「ん?」


ピタッと相手の頭手前で拳が止まる。


これゴブリンじゃ無いプレイヤーだ。


「私に近づかない方がイイヨ」


私と同じくらいの男の子は驚きで膝をついてコクコクと頷く。


私が見続けると萎縮状態が解けないので男の子の周りにいたいつのまにか増えてたゴブリンを蹴散らして私はその場を離れた。


『イベント終了まで残り10分』

『ゴブリンのボスが現れました、イベント終了までに全プレイヤーで協力して街を守ってください』

『今後イベント終了までゴブリンはリスポーンしなくなります』


「え、ゴブリンいなくなるの……」


どれだけ倒したのかも分からないくらい倒したゴブリンが復活しなくなると知って悲しくなる。


そして遠くからでも見えるほど大きなゴブリンが現れた。


「ムムム……とりあえずここ周辺のゴブリンを蹴散らしてから向かおっと」


どんどんゴブリンの数が減っていき私のステータスが下がると共に破壊衝動も少し収まってきた。


ビッグキングゴブリン Lv30


「レベル高いね」


そして私が初めて倒したボスのジャイアントトレントと同じくらい大きい。


既に他のプレイヤーが交戦しているようだ。ところどころに切り傷などがある。


「ラビリル、話は出来るか?」

「いや、何その質問……」


ボスに近づくとアルテナさんから謎の質問をされた。


「いや、身体の自由がきかないとかそういうスキルだと思ってだな……とりあえずあのキングゴブリンを倒すには圧倒的に火力が足りん。時間があれば倒せると思うが残り5分じゃ無理だ、まだそのスキルの効果時間があるならあいつにラビリルの超火力を叩き込んで欲しい」

「うーん、効果時間はあと1000分以上あるから大丈夫だけど……まあとにかく一応試してみるけど期待しないでよね」

「1000……今なんと?」


ゴブリンがいなくなった私のステータスは300くらいだろうからアルテナさんが言うような超火力はないと思う。


私は力強く踏み込みキングゴブリンに向かって飛び込んだ。


そしてキングゴブリンの足に思いっきり拳をかざす。


鈍い音と共にキングゴブリンの足が少し凹むが私に気づいたキングゴブリンが空中で無防備な私に向かって蹴ってきた。


「あ、むり」


どう考えても死んだ、というか防御0だから通常ゴブリンでも致命傷なのにこんな巨大なキングゴブリンに蹴られると絶対死んだ。


「ラビリルー!」


アルテナさんの叫び声が聞こえ私は街の城壁まで思いっきり飛ばされた。


『スキル《根性》が発動しました』


「げほげほっ!あ、あは……耐えた」


とんでもなく全身が痛いがなんとかスキルのおかげで耐えた。


「おい、人がとんでもない速度で飛ばされたぞ」

「犯人はあのキングゴブリンか」

「てか巻き込まれて死んだプレイヤーいるんだが」

「こんな小さな女の子相手に容赦ねぇな」


城壁近くにいたプレイヤーが何か話している。


「ごくごく……ポーション飲んでもHPが回復するだけで痛みはあんまり変わらないのか」


少しは痛みが和らいだ気がするがそれがポーションなのか破壊モードのせいなのかが分からない。


「とにかく戻ろう」


残り時間はあと3分。


私は急いでキングゴブリンのところへ戻る。


「ラビリル!無事だったのか!」

「なんとかね」


アルテナの鎧も若干欠けていてボロボロになっているのが見てわかった。


「しかしラビリルの火力でダメならどうやってあのボスに勝てるというのだ……」


今もキングゴブリンに大量の魔法や足元にはプレイヤーが次々と攻撃を仕掛けているがそこまでダメージは受けていなさそうだ。


ただ私が足を攻撃したからか動きは少し鈍っている気がする。


「一応、作戦はあるよ」

「本当か?ぜひ聞かせてくれ」

「ここにいる全プレイヤーに言ってほしいんだけど"私に向かって攻撃を仕掛けてくれ"って」

「なっ!――わかった、試してみよう」


時間にして1分程度、アルテナが有名なプレイヤーということもあってすぐにその言葉は広まった。


すぐさま私に向かって様々な魔法が飛んできて武器を構えてくるプレイヤーが現れ始める。


ぐんぐんステータスが上がるのが自分でも分かる。


「アハッ!イイねぇ、昂ってきたよ!」


上がった俊敏で魔法を避けてから私はキングゴブリンに向かって飛び出す。


キングゴブリンは私に気づくがもう遅い、傷ついて少し凹んだ足を思いっきり殴る。


足は耐えきれずへし折れキングゴブリンが倒れ込む。


倒れ込むと同時にキングゴブリンが持つ巨大な棍棒が私に向かって叩き込まれる。


「残念、武器は壊しちゃうヨ」


高い俊敏をいかして棍棒を避け、両手で棍棒を触る。


破壊の呪いで耐久値が1になった棍棒はキングゴブリンの握力に耐えきれず壊れてしまった。


「《断罪》……あ、首なんだね」


隠していた短剣を手に取りスキルを発動する。


赤く光ったのは首。


「じゃあね、楽しかったヨ」


スパンッ


巨大なキングゴブリンの首が宙を舞う。


『"ビッグキングゴブリン"を討伐しました』

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