第24話 他視点では
「なんだあれは……」
私は目の前で繰り広げられる光景に目を疑っていた。
一週間前に知り合ったラビリルという少女、最速で高難易度のボスをソロ撃破したトッププレイヤー。
そのラビリルはイベント開始と同時に凄い威圧感を放ちゴブリンの集団へと駆けて行った。
そして私の数倍以上の速度でゴブリンに近づき、頭を殴るとゴブリンの頭が消し飛んでいた。
あれほどの速度、かなりの俊敏のはず……なのに低レベルとはいえゴブリンを一撃で倒す筋力もある。
武器のおかげか?装備品は全身かなりの性能がありそうだが……本当にそうか?
「笑っている、楽しそうにゴブリンの頭を潰しているな……」
ラビリルはとても健気で活発的な女の子のイメージだったのだが……。
「ふむ、何かスキルを使っているのは分かる」
ラビリルの目の色は黒だった、なのに今は赤く輝きを放っている。
見た目が変わるスキルがあるというのは知っているがあのようなスキルは知らない。
そしてラビリルの視界に入ったプレイヤーの動きが悪くなっているように感じる、それもかなりの低レベルであろうプレイヤーほど動けていなさそうだ。
「私には何も異常が無い……ならレベル差による攻撃か」
別にプレイヤー同士で戦ってはいけないというルールは無い。ダメージを与えてるわけではないから特に何か他のプレイヤーから言われるということはないだろう。
「ラビリルの事は気になるが……私も上位を狙っているからな、行くか」
私はラビリルから離れつつゴブリンを狩り始めた。
◆◇◆
「まさに大量虐殺っスね……」
不気味と言えるほどの笑い声が前線から聞こえてくる。
『こっわ!』
『笑顔で顔面破壊する少女』
『さっきまでのラビリルちゃんはどこへ?』
『ドSなラビリルも俺は好きだぞ』
視聴者も様々な反応をコメントしていた。
遠くからでも見えるほど目がギラギラ赤く輝いているっスから何かスキルでも使ったんスかね?
沢山のゲームをプレイしてきたウチが予想するにあれは興奮状態……身体の自由がきかない代わりにステータスアップみたいな感じのスキルっぽいっスね。
でもプレイヤーには攻撃してない様子だし無差別で攻撃する訳では――
『考え込んでるところも可愛いね』
『カティアちゃんはゴブリン倒しに行かないの?』
『ちな15分経過』
『無言で考え込むと俺らの事忘れてめっちゃ時間使うもんな』
『いつもの光景』
『しかしイベントは待ってくれない』
『どうにかして気づかせるんだ』
『おーい!』
「はっ!しまった……いつもの癖がでてしまったっス」
ウチ、何か考え込むと気づいた時には朝とかあるんスよ。
無言で数時間配信とかもある。
『今回は戻ってくるの早かったね』
『よく戻ってきた』
「皆ごめんっス、遅れたっスけどウチもゴブリン倒しに行くっス!」
ウチは剣を構えてゴブリンに向かっていった。
◆◇◆
ここはティニットを管理する場所
「あああああ!ちょっ!ゴブリンのリスポーン間に合ってなく無い?!」
「対多数に相性良すぎですね破壊者」
「ラビリルのステータス今どうなってる?!ちょっと挙動がおかしい気がするんだが」
「調べてみます」
ラビリル Lv20
HP280/280 MP0/280
筋力 0 防御 0
賢さ 0 俊敏 2853
幸運 0
SP0
「余裕で4桁超えてますね」
「まああんだけゴブリンいたらそうなるか…」
まあ、その分防御0だから1撃受けたらほぼ即死だ。ゴブリンごときがあの俊敏で攻撃を当てれるわけがないのだが。
「ちなみにどさくさに紛れて他のユニークスキル持ちも隠れながら使ってますね」
「とにかくゴブリンの数増やすか、そういえば破壊者の継続時間大変なことになってないか?」
「現在286分です」
「破壊モードって任意解除出来たっけ?」
「出来ないですね」
ある現象に気づいた俺らの顔がどんどん青くなる。
「このままイベントが終わったらどうなる?」
「現在ラビリルは興奮状態にあり認識能力が低下してますので標的がいなくなったら新たな標的、プレイヤーを狙い始めるでしょう」
破壊者は全てを破壊するように多少認識能力を鈍らせる設定にしてるがそこまででは無いはずだ。
「破壊モードってここまで認識能力低下させるほどの設定にしてたっけ?」
「ラビリルの内に秘めた破壊衝動が呼び起こされてるっぽいですね」
「相当病んだ少女なんだな……ってそんなこと言ってる場合じゃねぇ!別にプレイヤーを倒しちゃいけない訳じゃ無いがどう考えても今のラビリルのステータスで勝てるプレイヤーはいねぇぞ!」
「ゴブリンが倒されたら多少はステータスが下がるでしょうがレベル10以下のプレイヤーでも敵対したらステータス上がりますしね」
初心者プレイヤーはPK出来ないがそれ以外のプレイヤーが全てやられてしまう。
せっかくの第一回イベントが台無しになる恐れがあった。
それにこちらの不手際なのにあの少女も誹謗中傷を受ける可能性が高い、ただでさえ病んでそうなのにそんな事があればどうなるか……。
「いっそのこと、ラビリルを裏ボスにしてしまうのはどうでしょうか」
「それだ!」
「急いでシステムに組み込みます!」
「絶対に間に合わせろ!」
ラビリルに気を取られすぎてある事を忘れているのだがそれに気づくのはイベントが終わってからとなる。
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