第23話 第一回イベント開始
『第一回イベント開始まであと30分――』
遂にイベント当日、大体のプレイヤーは街の入り口で待機していた。
もちろん、私も待機中である。
「準備バッチリ!頑張るぞー」
やっぱり沢山の人に見られているのだが頭の上にパラが乗っているからだろうか?
「1週間ぶりだなラビリル」
「あっ!アルテナさん、こんにちは!」
イベント開始までちょっとだけ時間があったので準備体操をしていたら1週間前に森で会ったアルテナさんが話しかけてきた。
パラもポヨンポヨンと私の頭の上で飛んでアルテナさんに挨拶しているようだった。
「パラも元気そうだな」
「あれ?他のパーティメンバーの人たちはどうしたんですか?」
見たところアルテナさんしかいない。他の人たちはイベント不参加なのかな?
「皆各自に行動しようと話し合ってな、今回のイベントはソロだ」
「私と同じですね」
アルテナさんの装備めっちゃカッコいいなぁ、鎧ピッカピカ。
「そんなに鎧が気になるか?」
「カッコいいです!」
「そ、そうか……ちょっと照れるな」
ちょっとジロジロと鎧を見過ぎちゃったかも。
「お互い上位に入れるよう頑張ろう」
「はい!」
私はアルテナさんと握手を交わしアルテナさんと別れた。
「――っス!」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「この声は……カティアー!」
「あっ!ラビリルさん!こんにちはっス!」
キューブ状のカメラを前に話しているカティアがいた。
「カティアもイベント参加?ってここにいるってことはそうだよね」
「そうっス!まだレベル3っスけどここでレベル上げまくるっス!」
確かに大量のゴブリンが現れるから相当レベル上げがしやすいのか。
まだまだ普段の始まりの平原はいっぱいの人がいてあんまりレベル上げが出来ないもんね。
「ラビリルさんは上位狙いっスか?」
「うん!限定アイテムが欲しくてね」
なんとかTOP10には入りたいね。
「応援してるっス!」
「ありがと!じゃあ私はもうちょっと前の方に行くねー」
最後にフワフワと浮いているカメラに近づいて手を振ってから私はカティアと別れた。
「うーん、ベルテは見当たらないなぁ」
まあ、こんなにも人がいたら見つからないかぁ。
「おや、こんなところで会うなんて奇遇だね」
「アルマさん?なんでこんなところに?」
ベルテを探して歩いているとポーションの入っているであろう箱を持ったアルマさんがいた。
「なんでこんなところに生産職がってことかい?これを見れば分かるかな?」
「あっ……」
箱の正面に何かが書いてある。
自作ポーション1本 50G
「何故かラビリル以外のお客様が僕のお店に来ないからポーションだけでも販売しようと思っているんだけど未だに1本も売れないんだ」
「あー……うん」
"美味しいよ"とか"自慢の作品"とか"まとめ買いでお得"とかすっごい胡散臭いこと書いてあるんだもん。
それにここにいる大半がレベル上げ兼お金集めなのに市販のより5倍も高いポーション買う人はいないって……。
いや美味しいとか本当なんだけどね、高い分効果も高いし妥当な値段どころか安いとも思うけどさぁ。
「私が10本くらい買うよ……」
「本当?助かるよ、まとめ買いで350Gで良いよ」
「はい、お金」
まだまだポーションはアイテム欄に沢山あるだけど可哀想で……。
「毎度ありー、じゃ僕はもうちょっと買ってくれる人がいないかそこら辺を歩いてるね」
「頑張って……」
私はしばらくアルマさんの売り込みを後ろから見ていた。
「自作ポーション美味しいよー、君とかどうだい?え、要らない?」
さてさて買ってくれる人はいるのだろうか……。
そして刻々とイベントの開始時間は迫ってきている。
「あと5分か……」
最初から全力で行くか迷うなぁ。
もちろん破壊モードのことだ。
継続時間に関しても倒し続ければ大丈夫だけど問題はこのスキルを使うといろんな人たちにバレるということ。
「んーまあどうせそのうちバレる事になるし良いか、私以外にもユニークスキル持ってる人いると思うし」
初手で私が全部倒してもいいよね!
『開始まで残り5秒……4、3、2、1』
『だだ今より第一回イベント"ゴブリンの襲撃から街を守れ!"を開始します!』
『1時間の間ゴブリンの襲撃から街を守ってください!』
イベントが始まり沢山の人の歓声が聞こえてくる。
ゴブリン Lv2
ゴブリン Lv1
ゴブリン Lv4
ゴブリンが現れ始める、そして数はどんどん増えていく。
そして誰かが魔法を使ってゴブリンに当てた。
それに続くように武器を持ったプレイヤーがゴブリンに向かって走り始める。
「じゃあパラ……行ってこーい!」
頭の上にいるパラをがっしり掴み、目の前に落とす。
そして思いっきり蹴り飛ばした。
「おー飛んでった飛んでった」
遥か彼方へと飛んでいくパラ。
なんか周辺にいたプレイヤーが「仲間じゃねーのかよ?!」とでも言いたそうな顔してるけど気にしなーい気にしなーい。
「さて、私もやっちゃおうかな……」
スーハーと深呼吸をした後に例の言葉を言った。
「"破壊開始"」
ドクンッ
心臓が跳ねるかように身体が熱くなる。
「アハッ!イイねぇ、この感じ……」
何かの異変を感じ取ったプレイヤーが私を見てくる。ああ、私に剣を構えると――
さらにグンと身体が軽くなった、無意識でも私に敵対したと判定されたから私のステータスが上がった。
そして私より前にいたプレイヤーやゴブリンの動きが明らかに鈍くなっている。
視線により問答無用で萎縮する無差別攻撃、それでさらにステータス上昇。
「さあ、破壊を始めよう」
私はゴブリンに向かって走り出した。
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