第10話 "破壊開始"

「おっき……過ぎない?!」


ジャイアントトレント Lv15


扉の先に待っていたのは巨大な木のおばけ。


その場からは動けないっぽいけど木の根を動かして今か今かと私に向かって攻撃したそうに動かしていた。


「速っ!危っ!」


トレントと目が合うと凄い速さで木の根を動かし私に攻撃してくる。


予想外の速さに避けきれず顔の頬が擦れてヒリヒリした。


「これ打撃攻撃じゃない……木の根なのに鋭すぎるよー」


打撃攻撃以外脆すぎるパラは一旦送還して攻撃を避けるのに専念する。


「このままじゃ埒が開かない!《疾風》!」


俊敏を上げて攻撃を仕掛ける。


避けた木の根を思いっきりぶん殴ると木の根が少し凹んだ。


「効いてるよね?よし!」


避けては殴り、蹴り、少しづつダメージを与えてHPを削っていく。


「そこぉ!」


少しの凹みは積み重なって数十本のうちの一本の木の根がへし折れた。


「さらにパラを召喚!パラ行くよ!」


パラの頭を片手でガッチリと掴み思いっきりジャイアントトレントに向かって投げ飛ばす。


ジャイアントトレントの根本付近に直撃してベキッと音がなる。


「そこで《麻痺粉》!」


ボフンと根本で麻痺の粉を撒き散らすパラ。


若干木の根の動きが鈍った気がする……ボスでも麻痺が効くのか分からなかったけど効いたのかな?


それでもウルフとか私みたいに完全に動けなくなるというわけではないのでやっぱり耐性とかあるのだろう。


「そして《捕食》!」


だんだん可愛く見えてきている大きな口を開けてガジガジとジャイアントトレントを齧る。


青い光のダメージエフェクトが見えたのでダメージは与えられているっぽい。


「良いよ!とてもいい感じだよパラ!そのまま食い尽くしちゃえー」


動きが鈍っているからか攻撃しているパラには木の根が向かわず私にしか攻撃してこない。


「あれ?木の根の動きが止まった」


急にピタッと動きを止めたジャイアントトレント。


「なになに?第二形態とかある感じ?」


そんなくだらないことを言っているとジャイアントトレントの巨大な葉っぱの部分が光り始めた。


「何あれ……水?」


光り輝く巨大な葉っぱの上には水滴が付いていた。


水滴はどんどん巨大な葉っぱから垂れ下がっていきポチャンとジャイアントトレントの根本に落ちる。


「あ、ああああ!!回復してるぅ!!」


凹ませたりへし折った木の根は元に戻りパラの噛み跡も綺麗さっぱり無くなっていた。


そして麻痺も治ったようで素早く木の根を動かしてパラを弾き飛ばす。


「パラーーー!」


ピンボールのように壁や天井に跳ねまくるパラ。


あれは打撃攻撃っぽいから大丈夫だと思うけど凄い跳ねたよあれ。


「ガハッ――え」


急なお腹の痛み、視界を下に下げると自分のお腹からジャイアントトレントの木の根が飛び出していた。


新しい装備で防御も確実に上がったはずなのにとてつもない痛みが身体を走る。


「どこか、ら……」


木の根を引き抜かれて更なる激痛が襲うがなんとか立ち上がり後ろを見た。


「地中から攻撃って……反則でしょ」


そこそこ大きな穴が地中に空いていた、地面の中で木の根を動かして私の背後から奇襲したのだろう。


弱った私をジロリとジャイアントトレントが見て追撃をかけてくる。


「し、《疾風》……」


なんとか俊敏を上げて避けようとするがいつもの身体が軽くなる感じがない。


『セットスキル《疾風》の装備品が破損しているのでセットスキル《疾風》を発動できませんでした』


嘘でしょ……確かにお腹に風穴空いているけどさぁ


HP60/210


体力はまだ残ってるから大丈夫、でもポーション飲むほどの時間はこの木の根が与えてくれない。


パラは……どっかに転がってると思う。今は自分の事に集中しよう。


「ふぅ……やるか、あれ」


今の今までずっと躊躇っていたスキル、使っていいと言われたけどなんとなく使っちゃいけない気がしたやつ。


すぐそばまで木の根が迫ってきて絶体絶命、身体はめちゃくちゃ痛いけど動くっちゃ動く。そもそもゲームで身体が動かなくなるのは状態異常と部位欠損だけ。


痛みで身体が動かなくなるのは精神的な問題だ。


「"破壊開始"」


『破壊モードに移行します』


グンと身体が軽くなる、全ステータスが俊敏に集まっているから当たり前だ。


「アハ、アハハ」


凄い気分が良い、そして何かを壊したくなる衝動で頭がいっぱいになる。


ニッコリと笑い目の前まで迫ってきている木の根に拳を撃つ。


鈍い音と共に木の根が壊れる、そして私のHPも削れた。


HP7/210


「叩き合っちゃだめだね……なら全て避けて壊せば良い」


実を言うと俊敏は装備品が破損していることもあり《疾風》を使用するのとあんまり変わりが無い、変わっても10程度だが破壊のみに集中しているラビリルの動きは無駄のない華麗な避け方で全ての攻撃を避けていた。


そして私は全ての木の根を破壊した。


「アハハ!回復はさせないよ」


キランと葉っぱが光り始めるがそれをみた私は瞬時に葉っぱを毟り取る。


「残念でした」


ジャイアントトレントの顔を殴るとベコッと凹んだ。


「楽しいねぇ、ホラ、こんなにも殴っているのに壊れない!」


バキッ

ボコッ


連打につぐ連打で木の根を無くしたジャイアントトレントに攻撃手段は無い。


ジャイアントトレントが破壊されるのも時間の問題であった。

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