第7話 可愛い仲間(ペット)が出来た。

「よーし、今日の目標はボスの討伐だー!」


破壊者?そんなのは寝たらどうでも良くなった、貰えたんだから別に使ってもいいでしょう。


『メッセージが届いています』


「ん?なんだろう…」


早速ログインすると何度も聞いた通知音がした。


メッセージは運営からだった。


「そういえば昨日破壊者について使ってもいいのか聞いたんだった」


『ラビリル様、いつもティニットをプレイしてくださりありがとうございます。破壊者についてですがこちらで念入りに調べましたがバグや不具合等は御座いませんので問題なく使用していただいて構いません。これからもティニットをお楽しみください。運営より』


「うーん、バグとかの問題じゃなくて性能についてだったんだけど――まあ使っても良いって言うなら使っちゃお」


いつものごとく噴水をぶっ壊してから森に向かった。


「あれ?先客がいる、森に他のプレイヤーがいるの初めて見た」


森のすぐ入り口に剣とか杖とか持った四人組のプレイヤーがウルフ数匹と戦っていた。


少し苦戦しているようだったのでこの森に来たのは初めてなのかな?


私は戦っているプレイヤーを横目に気づかれないように森の奥へと向かって歩いていった。


「私の方にウルフが向かってきてそれ倒したら横取りとか言われたくないし」


ところでボスって何処にいるんだろう、普通に森の奥の方行けば会えるかな?


「ヘルプーボスはどうやったら会えるの?」


困った時はヘルプさんですよ。


『ボスゲートの先に居ます』


うーん、これじゃよくわからないよ。


「ボスゲート……は何処にあるの?」


『自分でお探しください』


どうやらこれは教えてくれないらしい。


仕方ないからとりあえず森の奥へと歩くことにした。


「ん――っ!あれはフォレストマッシュ!」


ノシノシとゆっくりゆっくり歩く毒々しい見た目のキノコが見えた。


フォレストマッシュ Lv16


「強い……!前のも強かったけど今回のはもっと強い」


フォレストマッシュは私に気づいたのかゆっくりとこちらを向いた。


「先手必勝!《疾風》!」


凄い速さでフォレストマッシュに拳をかざす。


直撃したフォレストマッシュはボヨンボヨンとぶっ飛んで転がる……が何もないかのように問題なく立ち上がり私に向かってゆっくりと歩いてくる。


「えー効いていないの?」


疾風が切れる前にもう一度近づき今度は投げ飛ばしてみる。


「はぁ……敵のHPとかわからないし見た目も変わらないからダメージ受けているかすら分からないよー」


ウルフの時は外傷がなくても明らかに動きが鈍ってたしポイズンビーも攻撃したら起き上がっても弱々しく飛んでたから分かりやすかったんだけどこのフォレストマッシュは全く変化無し、今も絶賛攻撃中。


「むむ、若干萎んで……まずい!離れろー」


この動作は例の黄色い麻痺の粉を振り撒くやつだ!


案の定フォレストマッシュは辺り一面黄色い粉を撒き散らすが私がそれを避けたのを見てまた近づいてきた。


「ふむ、やっぱり麻痺にならないと攻撃してこないんだこの子」


私の前まできたが特に攻撃とかする事はなくボーッと立っているだけ。


「……捕食する時の行動は置いておくとしてなんだか可愛く見えてきたかも」


私も攻撃するのはやめてツンツンとキノコの頭を触り始める。


「柔らかいと言うより弾力のあるゴムみたいだね」


しばらくツンツンムニムニして遊んでいるとまたもやフォレストマッシュが萎み始めた。


「おっと、危ない危ない」


黄色い粉を避けてフォレストマッシュを触って遊んでをくり返す。


「これじゃあ埒が開かないんだけど」


だんだんこの弾力が癖になってきた。持って帰って抱き枕にしたい。


「逃げるのもなぁ……なかなか会えないレアっぽいし」


負けてもいないのに逃げるのはなんか嫌だよね。


「ねぇ、フォレストマッシュくん、君、私のペットにならない?」


そもそもモンスターをペットにできるとは思えないので冗談半分でフォレストマッシュに語りかける。


「そういえばフォレストマッシュくん、黄色い粉出さなくなったけどどうしたんだろう」


さっきまで数分おきに撒き散らしていたのに今はパタリと止まっている。


『フォレストマッシュが仲間になりたそうにこちらを見ている。仲間にしますか?』


なんとシステムメッセージが表示された。


「え?!本当にペットにできるの?!するするしまーす」


よくあるRPGの仲間になりたそうにしているやつが出てきてまさか仲間に出来るとは思っても居なかったのですごく驚いた


これで抱き枕だ!


『フォレストマッシュが仲間になりました』

『条件を満たしました。スキル《魔物使い》を取得しました』

『フォレストマッシュの名前を決めてください』


「名前……名前ねぇ、何か希望はある?」


目の前のフォレストマッシュを持ち上げて語るがふるふるとキノコ頭を動かすだけ。


いや口も目も何にもないから喋らないのは当然なんだけどさ、いや口はあるわ……めっちゃ怖いの。


「フォレスト……マッシュ、レスト……うーん、良い名前が思いつかない」


紫色のキノコ……麻痺の粉……。


「パラにしよう、あなたの名前はパラだよ」


今日、私に仲間ができた。

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