第2話 小さな村の魔法使い
木々が茂った森の中いつものように彼の後ろを歩いていた。
「アルーもう戻ろうよー、子供だけで森に入っちゃダメだって村長さん言ってたでしょー」
目の前の彼はなれた足取りでうっそうと茂った森の中をどんどんと進んでいく。
「ノアは相変わらず怖がりだなあ。狩人のおっちゃんが言ってただろ? 最近村の周りでも魔物が増えてるって。
だから俺たち未来の偉大なる魔法使い二人が村のためにこうしてみて回ってるんだろ? いつものことじゃん」
「なんでわたしまで」
アルはいつもそうだ、私たち二人しか魔法を使える人間がいないからって。正義感があるのはいいけど、私まで巻き込まないでほしい。
私は家で本を読んでいたほうが楽しいのだ。
歩き疲れた足を引きずっていると前を歩いていたアルが振り返るとしょうがいないなあといわんばかりに手を伸ばしてきた。
「俺たちふたりが一緒ならなんだってできるんだ。だからいこうぜ」
「もう、暗くなる前には帰るんだからね」
差し出された手を握り締めると、森の中でもはぐれないよう歩き始めた。
アルは家の近くに住む男の子で、2つしか年が違わないくせにいつもお兄ちゃんぶってくる。
家で本を読むのが好きな私をいつも家から引っ張り出しては絵本に出てくるかっこいい魔法使いごっこにつき合せれていた。
(森に入るのを嫌がったらノアは怖がりだなあって言われるのが気に入らなかった)
私たち二人には村で唯一希少な魔法使いの才能があったらしく、小さいころから簡単な魔法を使って村の人たちの生活を手伝っていた。
それを見ていた村長さんが行商人から魔法の本を二人に買うようになってくれてからは本格的な魔法の勉強をしつつ、魔法の訓練と称してよく森に出て魔物退治をしていた。
「アルー、魔法使いすぎてふらふらする~」
魔力がなくならないよう休憩をはさみながら、森の中を小型の魔物を倒しながら回ったけど明らかにいつもより数が増えてる。
「ほんとに魔物の数増えてるんだなあ」
アルが空を見上げると、いつのまにか日が傾きあたりは夕焼けの色に染まっていた。
「ここ最近さ、村の周りの魔力量が増えてるんだよ」
アルは倒した魔物たちが魔力の結晶になっていくのを見ながら言った。
「動物は人間よりも魔力適性が強いからさ、魔力を多く取り込みすぎて魔物化する動物が増えてるんだと思う。
ノアは俺よりも魔力への適応が高いからさ、魔力の過剰摂取のせいでふらふらしてるんだと思うよ」
「え?じゃあわたし、いつか魔物になっちゃうの!?」
「大丈夫大丈夫、このぐらいの魔力量だと人を変化させるほどじゃない。それに俺たち魔法使いは魔法を使って魔力を体外に放出できるから、それこそ自分から大量の魔力を取り込もうとしない限り問題ないよ」
そうアルは本で読んだ知識を得意げに語っていた。
「へ~、アルは、なんだか研究者さんみたいだねー」
そういうとアルはどこか照れ臭そうにしていた。
村に帰ると重々しい様子で大人たちが集まっていた。手に武器などをもった大人たちもいて、とても穏やかではない様子だった。
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