小さな村の魔法使い

わもん

第1話  魔王討伐


「あともうひといきだ!」


 ぼろぼろの体を奮い立たせながら勇者が果敢にも魔王にも立ち向かっていく。


 世界の命運を決める戦いが今決しようとしていた。

 今や魔王城と呼ばれ、かつては国の王城だった場所は戦いの余波でがれきの山となり、その決戦の激しさを物語っていた。


「グオオオオオオオ!」


 勇者の一撃が魔王に届き、その体から大きく力が削られるのを感じる。勇者に続けとほかの剣士や魔法使いも魔王に攻撃を仕掛ける。


 もとは人間の魔法使いだったその姿は、魔力の暴走によっていまや魔王と呼ばれるにふさわしい強大なオーラを放つ異形の化け物となっていた。


 力と力の激突を観測しながら、私は体に魔力をため仲間からの合図を待つ。


 自分を含め勇者パーティは全員満身創痍だが、その目から感じる力強い意志だけは誰一人ゆらいでいなかった。

 はじめは膨大な魔力で圧倒していた魔王もその勢いは薄れ、あまり力は残っていないようだった。



 最強の魔法使いの称号である「賢者」として勇者パーティに選ばれ、この因縁の当事者の一人として。最後の力を振り絞り、杖を掲げて自身の最強の魔法を唱える。

 それは、邪悪なる魂を永久に閉じ込める究極の封印魔法。


「魔王! これで最後だ!!」

「ギャアアアアアアア」


 勇者が渾身の一撃を決め、

 魔王のオーラが切り裂かれ、大きく体勢を崩す。


「今です、賢者さま!!」


 仲間たちの合図とともに、そのすきを逃さず魔法を放つ。


「はあ!!」


 杖の先から放たれた光の濁流が、最後の力を振り絞り暴れまわる魔王を覆いつくす。


 まとっていた邪悪なオーラごと光に包まれ、その異形の体が光の彼方へ消えていくなか、それまで狂気に飲まれていた魔王と目があった。


 そこには、懐かしい瞳の色があった。










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