第34話 勇者ざまぁ⑯エピローグでもざまぁが続く……

side ????


 ふと気付くと僕は暗い場所を歩いている……。


 ここはなんだ?


 僕はどこからやってきた?


 振り返ってみても何も見えない。


 なんの感覚もない。


 ただただ真黒な空間だ。


 そんな中で、僕はひたすらまっすぐ歩いている。


 何かに躓くかもと一瞬思ったが、そんな気配はない。

 

 こっちに行けと、まるで引き込まれるような感覚の中、ただとぼとぼと真っすぐに歩いていく。


 本当に真っすぐかは暗くて見えないが。


 足が勝手に動いていく。

 

 どういうことだ?僕はどうなったんだ?


 




 あぁ、そうだ。


 僕はエメリアに敗れたんだった。


 スーメリアはどうなった……?


 なにをやってるんだろうな、僕は。


 思い浮かぶのは自分の最後の姿……。



 仲間を失い、聖剣を失い、理性をも失った姿だ……。


 そこまでやっても僕は敗れた。あっさりと。



 そもそもなぜあんな力が僕の中にあった?


 あれではまさに魔物だ。


 まさかエメリアの言うことが本当だったのか?


 いや、そんなバカなことはない。


 僕は勇者だ。


 僕は王子だ。


 僕の中に魔族の因子などない。


 もしあったらそれはもう血の中に含まれていた……まさか国王のやつ……母や祖母が魔族だったとかじゃないだろうな?






 いや、そんなことはもうどうでもいい。


 そんなことは……。



 大事なことはエメリアが許せない、ということだけだ。

 

 僕のことなんか嫌いだったんだろう?


 失墜させ、破滅させたかったんだろ?


 あっさりと僕を倒したな。


 かつての仲間、かつての婚約相手である僕をあっさりと。


 血も涙もないやつだな。


 


 ふざけんなよ。



 なのになんでそんな表情なんだよ。


 ふざけんなよ。

 

 もっと勝ち誇れよ。


 魔王も四天王も、敵は全部倒したんだって。


 闇に染まった元勇者や仲間の魔導士すら倒したって。


 

 

 できないんだろう?


 結局は自分の力じゃないからな、お前は。


 ふざけやがって。



 たくさんの精霊に愛されて幸せか?


 多くの人間に讃えられて嬉しいか?


 そこの無骨な国王さまに求められて満たされたか?


 ふざけんなよ?


 絶対に許さないからな。


 僕だけは絶対にお前を許さないからな。


 絶対に僕がお前を潰してやるからな。



 それまで少しの間、のうのうと生きてればいいさ。



 




 そうして歩いていると、ふと真っ暗な中で何か仄暗い灯が見えてきた。


 あそこに行けばいいのか?


 洞窟の出口のような……?

 

 不穏な空気は感じるが、どうせ足が勝手に動いていく。


 勝手に灯に向かって歩いていく。



 


 その灯に近付いていくと、だんだん暑くなってきた。


 灯は少しずつ大きくなり、赤みを帯びていく。



 そうして僕はその灯に辿り着いた。


 それは出口だった。


 僕は迷わずその灯に飛び込んだ。




 その先には景色があった。


 いままでの真っ暗な場所とは違う、景色。


 決して歓迎すべきものではないが、そこに大地が続いていたことで僕は少し安心した。


 僕はエメリアにやられてもう死んでしまって、どこか違う場所に行ってしまうのかとも思いながら歩いていた。


 もしそうなったら、僕はエメリアに復讐できない。


 


 しかし景色がある場所に辿り着いた。


 ただの真っ暗な世界から抜け出た。



 ここがどこなのかはわからない。


 燃える土砂……溶岩がいたるところに流れる平原のような場所だ。


 草木は1本たりとも生えることはなく、生物は1匹たりともいない場所。


 ただ溶岩が流れている。




 ふと歩いてきた方を振り返ったが、真っ暗な場所はなくなっていた。


 そもそもそんな場所はなかったように、僕の後ろにも同じような燃え盛る平原が広がっている。


 僕はどこから出てきた?


 わからない。


 


 そこへ……


「裁判を始める!」


 突然、凄まじい雷鳴のような大声が聞こえ、僕は咄嗟に耳を押さえた。


 頭がぐらぐらする。

 

 なんだ?


 なんの裁判だ?


 僕のか?


 ここはなんだ?


 見渡しても誰もいない。


 なのに何かを呟くような声が聞こえる。


 まるで声が天から降り注いでいるようだ。



 


 僕がなにをした?


 お前は何を呟いている。


「おい!答えろ!」


 僕は叫ぶが何も起こらない。


 呟きも止まらない。


 そして……


「ふむ。強い怨念が消えておらぬな。これは惑うことなく地獄行きじゃ!!!!」


 凄まじい大声がまたも振ってきた。


 なにか金属のようなものを打ち鳴らす音も聞こえる。


 

 

 ふざけるな!


 僕がなにをした!


 僕はただ、魔族と戦っただけだ!


 それでなぜ地獄行きなんだ!?


 それなら世界中の人々が地獄行きになるだろう!?


 なのになぜ、ここには誰もいない。


 なぜ僕だけが裁かれなければならないんだ!?


 多くのモンスターを殺したからか?


 ならエメリアは!?



 あいつこそ


 

 ぐっ……



 そう思った瞬間何かに潰された僕は……





 ------------------

 ここまでお読みいただきありがとうございました。

 ということで、もの凄いぶつ切りな感じですが、これで第二章終了です。

 ライエルの魂はどうなったのでしょうか……。


 少しでも多くの方に見て頂くためにフォローや☆評価(☆☆☆→★★★)を頂けると、とても、とってもありがたいです。

 どうかよろしくお願いします!


 次回からは新章がスタートします。

 引き続き、どうぞお楽しみいただければと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る