第17話 ワイトキング召喚!
side 精霊術師エメリア
「はじめてこの領域に入ったが、リア……キミの精霊術は強力だな」
私たちはアイアントレントに加えてメタルトレント、ミスリルトレントなどをサンダードレイクの雷撃やレオの魔法剣などによって蹴散らしながら進んで行きます。
レオの剣技も私にとっては新鮮で、とても強力に思いますが、レオからするとサンダードレイクの雷撃一発で複数のトレントたちが焼け落ちていくのが衝撃的だったようです。
私にとってはさりげなく私の少し前で歩きやすいように枝などを切り払ってくれるレオがとても素敵です。
「精霊術というのは凄まじいな」
「ありがとうございます、レオ。でも制約はあります。今回も複数の精霊がついてきてくれましたのでこのように戦えていますが」
私ははっきり言って精霊術に自信を持っていますし、力を貸してくれている精霊に感謝もしていますし、精霊たちも気持ちよく付き従ってくれています。それでも限界はあって、精霊たちが行きたがらない場所や、精霊たちの力を封じるような場所もあります。
今後の探検で突然そう言った場所に出くわしてしまうことなどを考えて、本来はもう少しパーティーを補強すべきなのですが、レオとの冒険が楽しくて後回しにしてしまっています。
でも、ちゃんと考えるべきですね。アホ勇者たちとのロデリグ大陸攻略においては精霊たちを連れて来なかったので失敗しました。この失敗を繰り返してはいけません。
対策としてついてきてくれる精霊を募っていますし、もし精霊が不利な場所に遭遇してもちゃんとその対策も考えています。
それでも想定外のことが起こる可能性があるので、戦力は充実させるに越したことはありません。
「ロデリグ大陸の解放に向けて進んで行くのであれば、パーティーメンバーを補充することも考えるべきだと思います」
今回の冒険を終えたらちゃんと考えましょう。
フリではないですよ?
「そうだな……リア?」
レオは周囲を警戒して歩きながら、同意してくれました。大きな魔物でも通ったのか、歩きやすくなっている場所に出たので、私はレオと手をつないでみました。少し照れているレオは可愛いですね。
ドゴーーーーーン!!!
「「!?!?」」
突然大きな音が……なにかを叩きつけるような音がしました。楽しい気分だったのに、まったく……。
「あっちだな。どうする? 行ってみるか?」
レオは方角を見定めつつ、行くかどうかを迷っているようです。
険しい視線を森の奥へ向けています。
「行ってみましょう。なにかが起きているのかもしれませんし」
迷っていても何も始まらないし、ここに何かが襲ってくるような雰囲気はないので、私は提案します。
「わかった。警戒しながら行ってみよう」
レオは気配察知のスキルを向ける方向を音が聞こえてきた方に限定したようです。
ドゴーーーーーン!!!!!
進んで行くと、また音が聞こえました。
近づいたせいか音が大きくなっています。
「この音は森を抜けた先から聞こえてきているようだ」
レオが進む先を指さしながら私に告げます。
たしかに、明るく光る場所が見えます。そこは森がきれているのか、光が差し込んでいるようです。
ドゴーーーーーン!!!!!!!!
「あれは!?」
「巨大なトレントが枝を叩きつけているようですね。何かと戦っているのでしょうか?」
「行ってみよう!」
今度はとても大きな枝が振り回されているのが見えました。
もしかしてアホ勇者たちと戦っているのでしょうか?
それならあまり遭遇したくはありませんが。
ドゴーーーーーン!!!!!!!!!!!
「ぐぅ……」
そして森の切れ間の広場に辿り着いた私たちが見たものは、枝を振り回す巨大なトレントと、その攻撃を防ぐ戦士……
「ディルク???」
アホ勇者パーティーの中で唯一まともな戦士・ディルクがトレントの枝の攻撃から身を守っていました。ディルクは明らかに満身創痍です。魔力も失っています。なぜ1人で?
「エメリア様? こっちに来るな! こいつはプラチナトレントだ! 魔法耐性(大)と魔力吸収を持ってる!」
ディルクは私を見ると、焦った様子で警告をしてきました。自分もなんとか耐えているという様子なのに、こちらを心配するとは。やはり彼はアホ勇者パーティーの良心ですね。なぜ1人なのかはわかりませんが、まさかアホ勇者は彼を置いていったのでしょうか?
それなら本気で軽蔑しますが……。
ただ、ディルクから聞いたその特性はかなりやっかいですね。
確かに広場に入ったと同時に魔力を吸われはじめています。
「レオ、周囲を警戒していてください。あれとは相性が悪いはずです」
魔法使いや魔法剣士の天敵のような存在です。
「確かに相性は悪いが、どうするつもりだ、リア?」
レオは私を心配して尋ねてきます。
「レオは森に戻ってください。私はワイトキングを召喚してからディルクを連れて森に入ります」
「しかし……」
レオは心配した顔のままですが、あまり考えている余裕はなさそうです。ディルクはボロボロです。
魔力吸収が発動されているせいで、回復魔法を使っても届かないでしょう。
「お見せした方が早いですね。おいでください、ワイトキング!」
私が呼ぶと、中空に黒い魔力の塊が現れ、そこからワイトキングが出てきます。
ワイトキングは死してなお魔法を探求し続ける魔導士が精霊化したものです。見た目はどう考えても悪霊や魔族の類でちょっと怖いですが、性格は温厚だし、私には優しくしてくれます。そして、その身には信じられない量の魔力を有しています。
ワイトキングの登場と同時にプラチナトレントの魔力吸収は私やレオには届かなくなりました。ワイトキングの魔力保有量が多すぎてプラチナトレントでは吸いきれないためです。プラチナトレントの標的がワイトキングに変わったようで、ディルクに振り下ろしていた枝の動きが止まりました。
「ディルク! 森へ入ってください!」
「……助かる」
ディルクは無表情ですがその声音には微かに感謝が感じられました。彼は昔からぶっきらぼうですし、なかなか素の表情を見せませんが、本当は仲間想いで自らの犠牲を厭わないカッコいい性格であることを私は知っています。
「レオも!」
「……わかった」
レオはしぶしぶ森に入ります。
もしかして私がディルクを助けたのが気に入らないのでしょうか?
嫉妬でしょうか……?
可愛いですが、すみません。ディルクはアホ勇者パーティーで唯一私が信頼していたメンバーなので、許してください。あとでいっぱいお話ししましょうね♡
『なかなか面倒な魔物のようだが、弱点属性があるなら簡単なものよのう……』
顕現したワイトキングはプラチナトレントをその空虚な瞳……があった場所で見つめています……。
「倒せそうですか?」
『問題はない。魔法耐性(大)で減じられるだろうが弱点属性の魔法攻撃は通せるだろう。ただ、念のためサンダードレイクの雷撃も合わせてもらえるかのぅ』
ちなみにワイトキングは非情に慎重です。そして、省エネルギーを地で行く方です。とてもありがたい方です。
『グギャアァァアアア!!!』
『ミソロジー・サンダー』
私がサンダードレイクを再度召喚して雷撃を使わせるのに合わせて、ワイトキングはとても強力な雷魔法を放ちました。
視界一杯にひろがる雷撃……。
とてもきれいなそれが全てプラチナトレントに襲い掛かります。
ちなみに音が大きすぎて耳がおかしくなりそうです。
そしてあっさりとプラチナトレントを倒しました。
えぇと……
「やりましたわ!」
私はレオとディルクの方を向いて、小さくポーズを取って宣言しました。
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