第11話 天使からのサービス

 翌日、早朝――


「ん~~……」


 布団の中で目覚めたキズナは大きく伸びをした。

 ボーッとした意識のまま足をずらし、床につけて立ち上がる。


 太陽から借りた少し大きめのシャツのすそから、むちっとした肉付きがほどよい脚が、朝日を浴びて色気を放った。


「あれ? ここ……そっか、来たんだっけ」


 見慣れぬ部屋に多少戸惑とまどうも、すぐに思い出して納得なっとくする。

 そうだった。自分はもう来ているんだった。

 仕事のため、人間界に。


「あ、そういえば昨日シャワー浴びるの忘れちゃってた」


 天界からの移動と、その後の仕事で疲れ切っていたので、すぐに寝たことを思い出した。

 別に一日くらい入らなくても問題はないけど、これって女子的にどうなんだろう?


 キズナは自分の女子力に少し疑問を抱いた。


「よしっ、借りちゃお。目も覚めるし一石二鳥だしね♪」


 そう呟き、キズナは部屋の中を物色した。

 幸い、お目当ての物はすぐに見つかった。


 キズナはバスタオル片手に風呂べへと向かう。

 キズナは身につけているものを脱ぎキレイにたたむと、温かいシャワーを浴びるべく風呂のドアを開ける。


 先客がいた。


「!? ブゴォッ! ガボオォォグオァブォッ!」

「ひゃあああぁぁぁぁっ!? た、太陽、なんでいるの!?」


「そ、それはこっちのセリフだバカ! 俺の服が見えなかったのかよ!?」

「え、服!?」


 洗面所を振り返ると、たしかに太陽の服が合った。

 しかもわりと目立つところに。


「男が入っているのになに入ってきてるの!? 天使じゃなくて、男の裸に興味津々のエロエロ淫魔様ですかコノヤロー!」


「だ、誰が淫魔だよ!?  この輪と羽が見えないの!?」

「見えるよ! むしろ輪っかと羽どころか全身見えてるよ!」


「うわぁっ!?」


 そういえば今は全裸だった。

 輪と羽どころか全身余すところなく見られちゃってた。


「い、いやああぁぁぁっ! み、見ないでっ! 見ないでよぅ!」


 たわわに実った胸と下半身を隠しながら、キズナはそううったえた。

 端的たんてきに言ってめっちゃエロい。


「と、とりあえず外に出ろ! 俺、目をつむってるから! タオルで目隠しもするから! 早く!」

「う、うん!(うぅ……太陽に見られた。ボクの裸、見られちゃったよぅ……)」 


 太陽の言葉にしたがい、キズナは急いで風呂場から出て服を着た。

 そのまま居間に移動し、何故なぜか正座で待機たいき


「……………………あ、空いたぞ」


 バスタオルで髪の毛をきながら太陽が登場する。


「え、と……新しくお湯張っておいたから、使ってくれ。シャ、シャワーよりたぶん疲れが取れる」

「あ、ありがと……」


「その、キズナ……………………ごめん。起き抜けで眠くて気づくのに遅れた」

「ううん、ボクのほうこそごめん……脱いだ服に気づけなくて……」


「い、いや、気にしないでくれ。見られて困るモノでもないから……」

「ボクも、気にしないで。それなりに自信あるから……って、今のナシ! 全部ナシッ! もう、ボクってば何言ってるんだろうね!? ははっ……」


「お、俺も何言ってるんだろうな!? 俺の言ったことも忘れてくれ! な!?」

「う、うん、わかった……」


 気まずい空気が二人の間に流れる。


「じゃあ、ボク行くね? お風呂もらう」

「ああ……その、行ってらっしゃい」


 視線を合わせずにそう言う二人。

 お互い忘れるようにお願いしたが、そんなことそもそも不可能なわけで。


「………………………………(お、男の人のアレってああなってるんだ)」

「………………………………(キズナの身体、すごかったな)」


 二人は先ほど見た光景を、脳にしっかりと焼き付けていた。






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 《あとがき》

 今回はサービス回となります。

 キズナ側での三人称

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