第9話 本番開始
白銀先生をハッピーエンドで終わらせた俺は、キズナと一緒に家に
時刻は夜の7時半過ぎ。
通学に使う電車の中で一組のバカップルと目が合った。
――見てんじゃねーよ童貞。
――童貞だから
ぶっ殺すぞこの野郎って思った。
「太陽、怒っちゃダメ。ちょっとやりすぎだけど、アレも一つの愛の形。いち天使として邪魔はさせません」
「わかってるよ。言われなくても」
――ねえ、なんかブツブツ言ってない?
――童貞だから妄想
「キズナ……モテホンに別れさせる機能とかないの?」
「あるわけないでしょ、そんな機能」
「じゃあカップルの女の方、モテホンの機能でNTRっていい? 男の目の前でNTRって、プライドズタズタにしてから高笑いしていい? そしてその後女をゴミのように捨てていい?」
「いいわけないっつーの!
チッ、仕方ない。
どうせすぐに降りるし我慢するか。
イチャつくバカップルをスルーし、、窓の外を
いつもと変わらない見慣れた景色だ。
こんな変なことが起こったと言うのに、表面上は何も変わっていない。
「キズナ、次で降りるぞ」
「りょーかいっ」
俺はキズナに声をかけ、一緒に近くのドアで待つ。
どうやらバカップルも同じ駅で降りるようで、俺の隣に並んでまた
「太陽、怒っちゃダメだぞ」
「……わかってんよ。ならキズナ、我慢する代わりにお前の写真を俺のスマホに転送してくれ」
「いいけど……何するの?」
「見てりゃわかる」
俺はキズナの写真が送られたのを確認すると、待ち受け画面に設定してから男に見せる。
バカップルがいきなり
「よし、着いた。行こうぜ」
「それはいいけど、どうして喧嘩なんか……」
「ああ、あの2人にお前の写真を見せたんだよ」
「それだけ? それだけでどうして急に喧嘩なんか」
「お前自分で言ってたじゃないか。自分のことをかわいいって」
俺もそう思うし、世間一般でもそういう判定だろう。
「男の方がお前の写真を見て――かわいい――って言っちゃったんだよ。あんだけラブラブなのに、他の女を見てかわいいとか言っちゃったらどうなるか?」
ちなみに答えはああなります。
ラブラブな空気は完全に消え、彼女にマウントポジションを取られて
「ぼ、ボクの写真をそうんな風に使うだなんて……どうしよう? これが原因で破局になったら給料引かれちゃう……」
「あ、そうなの? 悪い悪い」
「反応軽いね!」
まあ、結局のところ他人事だしなあ。
巻き込み食らわせて悪いとは思うけど、特にそんなに気にしていないし。
「まあいいじゃん、破局の一つや二つ」
「よくないよ! 天使的に絶対良くないよ!」
「若い時はな、そういうこともあるもんなんだよ。いろんな人と出会い、別れて、人はそうして運命の相手を見つけるのさ」
「あの二人……運命の相手同士なんだけど?」
「……………………マジで?」
「マジです」
「いかにも数か月ですれ違って別れそうな感じなのに?」
「なのにです」
「彼女の方、ヒョウ柄のパンツ履いてそうなのに? 男のほうは本命が別にいそうなのに? 2人とも遊びっぽいのに?」
「なのにです。2人ともお互いが本命で浮気なし。純愛100%です」
「天使の間だと男が女に腹パンしたり、
「しないよ! どこの世界にそんな純愛があるっていうのさ!?」
主に同人誌でそういう純愛があります。
「キズナ………………ごめんね?」
「ごめんじゃないよ! もう! ボク直してくるからここで待ってて!」
破局を防ぐため、キズナは大慌てで駅のホームへと戻っていった。
しばらくして
終わったのかな?
「ただいま。もう、余計な仕事させないでよ。疲れたじゃん」
「悪い悪い」
「急いだから汗かいちゃったよ。もう……」
「ならシャワー貸してやるよ。メシも出すからそれでチャラにしてくれ」
……
…………
………………
「あとどれくらい?」
「もうすぐそこだ。その角を曲がったところにあるデカい家」
「うわっ、デカッ!?」
俺の家を見た途端、あまりの大きさにキズナが驚いた。
「すっごい大きな家……。普通の家の4倍くらいない?」
「特に意識したことはないけど、まあ、あるかも?」
「どんな悪いことすればこんな家が建つんだろう?」
「天使がそんな人聞きの悪いこと言うなよ。両親がデカい会社の重役ってだけさ」
俺の家に初めて来るやつって、大体同じ事言うんだよな。
別に悪いことをしなくたって、真面目に働いて結果を出せば、このくらいの家だって建てれるさ。
ソースは俺の親父とおふくろ。
2人とも共働きで頑張って建てました。
「ほら、もう夜遅くなる入った入った」
俺の背より高い門を開け、手招きしてキズナを中に入れる。
しっかりと門の鍵を閉め、玄関のドアを開けた。
「ただいまー」
――シーン。
返事はない。まあ当然と言えば当然だな。
俺の家族は、現在俺一人を日本に残して海外にいるのだから。
返事があったほうが逆に不自然である。
「太陽って今一人暮らしなんだよね? 大変じゃない? こんなに広い家に一人って」
「別に。もう慣れたからな」
始めた当初は戸惑ったけど、慣れれば普通に暮らしていける。
人間の順応力を侮ってはいけない。、
「じゃあお邪魔します。早速だけど
「入ってすぐ右の部屋。部屋の中の者は好きに使ってくれ」
「わかった。ありがとー」
そう言って、スタスタと部屋へ赴くキズナ。
「さて、それじゃあ俺はメシでも作るか」
冷蔵庫の中身を確認しながら、頭の中でメニューを考える。
今日は久しぶりに2人前か。
「これからお世話になるわけだし、ちょっといいものを作ってやるか」
俺は冷蔵庫の中から、両親が送ってくれたブランドハムを取り出した。
そのハムを使ってチャーハンを作る。
チャーハンっていいよな。
簡単で美味しくて。
「お仕事終わりっ! うわぁ……美味しそう♪」
「いいハム使ったからな。好きなだけ食ってくれ」
「いいの!? やったーっ♪ いただきます! ……うん! 美味しい! 太陽って料理上手いんだ!」
「自分が美味い物食いたくて、自然とそれで上手くなった感じだな」
「見た目も悪くないし友達も多い、その上料理もできるのに、どうして彼女ができないんだろうね?」
「バグのせいってお前が言ったんじゃねーか」
そうじゃなきゃとっくに彼女できてるわ!
たぶん!
「ごちそうさま! さて、お腹も一杯になったことだし」
「そろそろ始めるか? 戦の準備を」
――さあ、運命と戦おう。
ノートを開き、ボールペンを握る。
書き換えるべき俺の運命を書き下ろすのだ。
さあ、自らの手で幸せな運命を切り開こうじゃないか。
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《あとがき》
ここから話がゆっくりと動き出します。
最後までお付き合いくだされば、きっと驚愕の展開が待っているとお約束します。
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