第1話 茂手太陽は彼女が欲しい
4月28日木曜日。
桜が散りはじめ、出会いと別れの季節も終盤に差し掛かろうとしているこの時期――実にクソだ!
世の中というものは常にはっきりと
それを
エッチなビデオも借りられないくらい若いのにな!
「悪い太陽、これから俺デートなんだわ」
いかにも「俺って勝ち組いいいぃぃぃ! ウェェェェェェイ!」――といった感じの笑みを浮かべる我が友――
中学時代40人にフられたこの男は、かけらも悪いとは思っていない口調で謝罪する。
完全に俺を見下しておられる。
友から
「まあ、そういうワケだ太陽クン。理想の青春を手に入れるためには、もっと頑張ったほうがいいと思うよぉキミィ?」
友から宿敵に認定した。
「偉そうにっ……40人にフられた過去があるくせに…………」
「過去は過去、今は今だぜ。40人にフられた過去があろうと、今は一人の彼女がいる。その事実が最高に重要なのさ」
……ぐうの音も出ねえ。
ついこの前まで同じ位置にいたというのに、いつの間にかはるか先を行かれているような気がしてしまう。
まるで、友達同士でマラソン大会を走る時のようだ。
一緒に走ろうぜ!――と言ったのに、
この状況は人間は裏切る生き物だと悟ることになったあの時と似ている。
くそっ! まじでいつの間に!?
てっきり俺はいつものように、彼女がいない
今のあいつはゲームで寂しさを紛らわせるんじゃなくて、ゲームで青春をバラ色に染める側だというのか!?
具体的に言うとプリクラとかで!
俺たちの学校――都立
塚本は今日……やるつもりだ。
寂しさを紛らわす場所だったゲーセンを過去にするため、彼女とプリクラをキメるつもりなのだ。
――年齢=彼女イナイ歴
――合コンが終わると一人だけソロ
――100%の「お友達でいましょう」
これら
「なあ太陽、彼女の顔見たいか?」
塚本が余裕の笑みを浮かべてそう返してくる。
これは、相当に自信があるに違いない。
いまだ彼女がいない俺を見下すに
――ダメだ、見るな! 茂手太陽!
――見てしまったらお前は、きっと
――友達に可愛い彼女がいるのに自分は
――悪いことは言わない、やめるんだ!
心の中学2年生がそう
しかし俺は、その言葉に
可愛い女の子……それにはいかなる
男ってのは、そういう生き物なのさ……。
その結果――。
「どちくしょおおおおぉぉぉぉぉぉっ!」
全力で
……
…………
………………
「なんだよアレ!? なんなんだよ!? なんで塚本にあんなかわいい彼女ができるんだよ!?」
塚本の彼女を見てしまった俺は敗北感でいっぱいになり、心のダムが
胸から
「あの塚本だぞ!? 中学のプールの授業で
俺は、俺はてっきりあいつの
勝ち誇って俺を見下している塚本を見て、「ああ……そうか……。俺以上にモテなさすぎてとうとう脳が……」とか考えていたのに!
「畜生……世界って
去り際の、塚本の
「いやあ実はさあ、昨日たまたま隣町に行く用事があってさあ、帰り道に駅前のデカいゲーセンの前を通りかかったら、かわいい女の子がUFOキャッチャーの前で
「ゆ……UFOキャッチャーのアームが景品だけじゃなくて、こんなかわいい女の子のハートもキャッチしたっていうのか……?」
「その通りだ。チャンスは意外なところに転がっているもんだな」
ふふん……と、塚本がどや顔をキメる。
「まあ、そういう
勝ち誇った表情でそんなことを言いつつ、塚本は俺の前から消えた。
一人残された俺は、友に先を越されてしまった敗北感を胸に校門の前で
――何故、俺だけいつも取り残される?
――彼女イナイ歴が更新される?
――勉強も、スポーツも、人間関係だって頑張っているのに。
――どうして俺だけ春が来ない?
――どうして俺だけ彼女ができないんだ?
――なぜだ……? なぜなんだ……!?
答えの出ない問いを繰り返し
なぜなら俺が生きるこの世界は、不条理の塊なのだから。
理由なき理不尽に、不平等に溢れているのだから。
「もう……帰ろう…………。今日はもう……何もする気が起きねえ…………」
プライドが粉々に
駅に
「あ……やべ」
おまけにスマホも見当たらない。
あれがないと動画もWEB小説も見れないし、ソシャゲだってできない。
取りに戻る以外の選択肢などない。
「はぁ……めんどくさ」
心がえらいことになっているので余計に面倒臭く感じる。
駅から学校まで歩いても10分もかからないが、疲れているときにこの10分は
下手すりゃ心が折れる。
デート中の塚本を見たりしたら、たぶん死ぬかも。
「まじでかったるい……家帰ったらメシも作らなきゃいけないし超かったるい」
両親が海外
なので、家事全般は全部ひとりでしなければならないのである。
「今日はもうカップ
同年代の男女がイチャつく光景を
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《あとがき》
塚本くんにはモデルがいます。
ここまでのことはやってはいませんが……彼は色々な伝説を残しています。
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