1.51、神野イェロゥ
ちょっと待ってくれ、そこな若人……あぁ、キミだよキミ、少しで良いから時間をくれないか?
――あぁ、ありがとう
大切な事を言うのを忘れてしまったんだ
――見てくれ、アレがこの世の果てだ
うん、あまり期待させたくないから断っておきたくてね
――はぁ、思ったより黒くないのね
とりあえず、救いは無い
――そうなんだ……で、此処でひっくり返すと……ほら、此処がこの世の最初になる
あと、思ったより面白く無い
――ほーん、で?
――いや、だからって訳じゃないんだけど、中途半端に翻せばあの世が消えるんじゃねぇかって
――……おバカなの?
それと、ご都合展開も無い
――果てねぇ……面倒だから説明は省くけど、球体だろうがドーナツ型だろうが多角形だろうが、果ては観測出来ないから結局、元の位置に戻るだけだぞ?
ついでに言うと、大体の期待には応えない
コレはとても退屈で、ただ長くて、起承転結がなっちゃないくっだらねぇ物語だ
それでも良いなら……どうぞ、この先へ
――夢が無いねぇ、嫌だねぇ
――あるよ多分
在ると良いね……キミの好きな物語
――へいへい……
「自分で言えば良いのに……」
「らしいと言えば、そうかも?」
食堂での一悶着の後、ユキは手に持った小型記録媒体を眺めながら廊下を歩く。隣りでマヒマは苦笑いを浮かべつつ「まぁまぁ」と言った感じに数分前を思い返していた。
あの後、ゼイラムから「これ、こん中に今後の予定が入ってるから皆と一緒に確認しといて」と雑に渡されたのが、今ユキが手に持っている直方体の何かであった。
「ゼイラム君らしいけど“んじゃ、俺は寝る”って、仲直りする気ゼロなんだねぇ……」
「まぁ私達からじゃないと、まともに聞いてもらえないかもだし、ね」
あのやり取りを見た以上、彼は誰からも理解されず拒絶されるだろう。厄介なのは、それを彼自身が望んで率先している点だ。一体、何が彼をあそこまで人間性を失わせたのか……
(ヒマもポールさんも言わないけど、二人は多分、理由を知っている……でも、きっとそれはゼイラム君にとって重要で、誰にも触れられたく無いんだ……)
思い返せば、この世界に来る前から彼は……いや、もっとよく思い返すと“戦友”と呼んでいた仲間の事を何一つ知らなかった、知ろうとしなかった自分に気が付いた。
ポールは何故、自分の為に命を投げ出したのか……ヒマは何故、自分を愛したのか……ゼイラムは何故、自ら苦難の道を突き進むのか……
(何も分かっちゃいないんだ、僕は……ただ言われた、ただ望まれた通りに戦っただけ……)
「でも、うん!私達の為だと思うから、ちゃんと応えないとねッ……て、思い上がりかな?へへ」
「そこは自由だよ、きっと」
(そうだね……ゼイラム君が悪目立ちしているお陰で、僕は皆に素直に受け入れられた気がする……それが狙い?いや、きっと僕の事はおまけだ。不思議だけど、ギリギリの所では一番信頼出来るって確信してる……ポールさんも何か、僕に敢えて言わない何かがある気がする。でも、それは善意だってのもどうしてか分かる……ヒマは)
横で平和を感じさせる笑みを浮かべる少女に、ユキはどうしても後一歩が踏み出せない。言うまでも無く、原因は元の世界での最期だ。アレが本性なのか、それとも追い詰められた末に生まれてしまった醜い部分なのか、最初から自分に対して恋慕など抱いておらず生き残りたいが為に男女の仲になったのか……今でもいつまでも、まるで呪いの様にユキの感情にへばり付いて拭えない泥炭だ。
だからか、その泥から眼を背ける様に話題を変える。
「にしても、相変わらずポールさんは面倒見が良いね。やっぱり素直だからかな?」
「んー確かに!昔馴染みだと当たり前に感じるけど、落ち着いて考えたら……うん、裏表も無いし。ユッキーが知ってるポールさんも似た感じなんだね」
「うん、新人の訓練にずっと付き合ったり、落ち込んでる時はよく励ましてたから……ただ、余りにも似過ぎてて、何だか混乱しちゃうんだよね」
「そっか……うん、私も同じ名前で同じ見た目で性格も同じだったら、アレ?どっちがどっちだっけ?てなると思う」
「いっその事……」
「??」
「いや、何でも無いよ」
思わず“いっその事、何もかもが違ったら良かったのに”と口走りそうになって止めた。すぐ横で歩く少女の過去と今が一瞬でユキの脳裏を横切り、何となく言ってはいけないと思ったからだ。
もう二度と、彼女をあんな醜態に陥れてはいけない、と改めて意を決する。
雑談しながら向かった先は医務室で、二人が「お邪魔しますぅ……」と余所行きの雰囲気で様子を伺う頃には既に、雪夏は冷静さを取り戻しており、待ち兼ねた様子で戦友が「どしたん?ユッキ」と手招きしていた。
「雪夏ちゃん、元気そうで良かったぁ」
「はい、先程はお騒がせしましたマヒマ先輩。思わず殺し切れませんでした、不覚です……」
「本当に元気そうで良かった……うん」
「ほいでユッキ、ドクターから伝言があるんじゃないか?」
「うん、コレを皆で確認してねって」
預かった記録媒体をポールに渡すと、彼は携帯端末に接続してプロジェクターを介し、壁面に電子文章を写す。そこには、時系列に沿ったフローチャートの図と説明文が載せられていた。
「ほんほん、一週間後に地球から出立。んで、順調に行けば二十日後に【ゲート】を通って土星圏内へ……まずは冥王星の財団基地を目指す訳ね」
「遅……あ、いゃ、これでも最短か」
「ごめんねユッキー、慣れて?」
「ハイ……えっと、この予定で行くと財団基地に着いてから艦載機とか色々造るみたいだけど、その前から始めた方が良いんじゃないの?」
「あーそれはですね、ユキさん。星間人類連盟の協約で【ゲート】周辺は非武装宙域に指定されているんです。なので、通過するには厳しい検問を受ける必要があって、動力以外の反応炉や掘削用途外の重機は勿論、護衛用武装も最小限しか基本的に認められていないんです……とは言っても、実際は賄賂や紛争利益をチラつかせれば見逃していますが」
「ふはいせーじ……ユッキーの世界じゃそんなの無いか」
「あははぁ、自棄になって不貞腐れる輩は無尽蔵に居たけどね……」
「とりあえず、騒ぎを起こしたい訳じゃ無し、それで時間ロスもしたくないから賄賂とかは無しで行こうと」
ポールが補足しつつチャートを順に確認していく。フローなので当然、その時々で想定される場合分けが記載されているが、いずれも不穏なモノばかりであった。
「えぇと?【ゲート】通過前後で武力干渉をされた場合、説得を優先しつつも10時間を超える際はコレを強行突破し土星軌道へ。土星のコロニー【マハト・パドマ】にて燃料や物資の搬入、現地駐在の財団員と合流。此処で武力干渉された場合、説得は前提とするが6時間を超える際はコレを強行突破し冥王星軌道の財団補給基地へ……ぇ、何でこんなドンパチが当たり前みたいな書き方なの?」
少し引き気味にユキがチャートを指さしながら疑問を口にする。その問いに、隣りで一緒に見ていたマヒマが答えた。
「競合他社がとにかく多いんだよ。宇宙資源はレアアースだけじゃなく、単純に領土拡大の目的もあってね……今に始まった事じゃないんだ」
「おまけに月面都市国家【セレーネ】、火星の【火星共存圏】、木星の【ジュピタリス連合群】、んで土星の【マハト・パドマ】の全部が防衛軍を抱えてる上に、“宇宙海賊”と見なされたら問答無用で攻撃して来るのよねぇ……」
「追加で補足すると、星間企業のほとんどが私設軍隊を持っていますし、自社で戦力を用意出来ない中小企業向けの民間軍事会社も多数存在します。宇宙海賊だけでなく、企業間や星間国家同士の争いも当然ありますので、こちらに交戦の意志が無くとも巻き込まれる可能性がある点が悩みの種ですね」
続いてポールと雪夏が簡単に情勢を話し、心底面倒臭い、と言いたげに溜め息を吐く。二人の言い方に気になる点があったので、会話を通して交流する事も兼ねて訊ねる。
「何か、前にも似た様な事があった、みたいに聞こえるんだけど……?」
「うん、あったんだよユッキー……それも何回も……」
その時の事を思い出してげんなりしたのか、マヒマも乾いた笑みを浮かべて溜め息を吐いた。
「宇宙開発を主業務にしている企業の半数は、通商組合に加入してるんだけど……コイツが厄介でねぇ。【Lex Stella】も加入してるんだが、優先的な宇宙開発の権利と引き換えに、星間人類連盟の国や自治領からの人命救助要請に応える義務があるんよ。正当な理由無しに拒否すると、除名処分と業務停止命令も在り得るから、知らぬ存ぜぬが出来ないのホント面倒臭ぇ……」
「誰かを助けるのは良いんだけど……実際は、自分達の軍事力を使い潰したくないって魂胆が見え見えでね。暴動鎮圧とかテロリストの制圧とか、そう言うのばかり押し付けられるんだぁ」
「……同じ生物の同じ文明で同士討ちしてる場合なのかな」
「ユキさんからしたら、馬鹿々々しいですよね。アタシ達ですらアホらしいって思いますし」
「たかが一恒星系の資源を奪い合うなんて、非効率的過ぎるよ……」
「ユッキからしたら、そう思うわな。土星や木星の衛星は、俺らの文明レベルからすると貴重な宇宙資源なんよ。前に【ゲート】周辺は危ない、て話したでしょ?そんな情勢だもんで、出入口の火星圏と土星圏は仲が悪くてねぇ。そのお零れに与ろうと、月と木星圏が互いの背後を狙ってて……まぁそんな感じで、いつ第二次宇宙大戦が勃発してもおかしくないのよ」
この世界は未だ人類以外の知的生命体と接触していない。故に、人類同士が資源を奪い合う歴史は23世紀を間近にして尚、連綿と続いている。22世紀初頭、人類の版図が土星圏まで拡大すると同時に地球、月面都市、火星、木星、そして土星で独立運動とその鎮圧に端を発した【宇宙大戦】で甚大な被害が出た。13年の戦争の後、独立の承認と宇宙資源の共有を目的とした【星間人類連盟】の設立により、終戦を迎える事が出来たが未だに怨恨は残っており機会さえあれば、と火種は燻り続けている。
「あ、この世界での宇宙用兵器って、どんなモノがあるの?」
「そう言やぁまだユッキは知らないっけか……えっと、最新鋭機の諸元は公開されてないから前の世代になるけど……コレが分かりやすいかな?」
端末を操作し、ポールは財団のデータバンクに保存されている近代兵器一覧を表示させた。そこには、大項目として【国家・自治領別】と【艦種別】が、小項目として【戦艦】【偵察艦】【補給・輸送艦】、そして【艦載機】と【その他】が写されている。それらの詳細を選択しつつ、簡単に説明していった。
「大きく分けると5種類かな。【戦艦】は名前の通りで、此処には小型の【高速艇】や艦載機運用の【空母】も含まれてるね。【偵察艦】と【補給・輸送艦】はまぁ、説明しなくても良いか……んで、【その他】は宇宙爆雷や無人防衛衛星みたいな設備全般ね。【艦載機】は個人で運用可能な小型戦闘兵器の事なんだけど、船に搭載されていないモノも含まれるかな?ユッキはどれから知りたいんだい?」
「それじゃあ……上から順番で」
「オッケー、なら土星の【マハト・パドマ】防衛軍で見よっか……まんず【戦艦】、分けると【戦艦】【巡洋艦】【高速艇】【空母】の4つね。標準的なサイズの戦艦なら【タイタン級】かな。全長1000メートル丁度で、円錐状の構造は他の艦船にも採用されている、まぁこの宇宙の人類で代表的な宇宙戦艦だねぃ。巡洋艦は【ガリア級】が一番艦艇数も多いね。全長は750メートル前後で、戦艦より二回り以上小さいけど、その分速度と小回りが勝ってる感じ。高速艇は更に小さくて、代表的なのは【パーリアク級】の全長300メートル前後。量産性と速度に優れていて、一番艦艇数が多い艦種だよ。空母は名前の通り、艦載機を積載し補給基地の無い宙域では移動基地として運用されてるね。代表的なのは【ヒュペリオン級】の全長1800メートル強で、最大搭載機数は100機程……」
「んん~……ッ、ゴホゴホッ」
外観を表示しつつポールが説明を進める中、ユキは思わず唸ってしまい咳払いで誤魔化そうとするも、友人に諭される。
「思ったまま言って良いんだぞー、ユッキ?」
「ぅ……」
「ショボい、ですよね……」
「ぅぐ……はい……」
「だよねぇ、こっちの一番デカい船でも2キロ以下、ユッキが乗って来た“艦載機”は50キロ以上、実際の【邪神】も数十キロ以上……どうしようもねぇなぁ」
「敢えてコメントは避けます……ん?財団が【邪神】と戦った時の戦力はどんな感じだったの?」
単純な大小で言えば圧倒的に不利。しかし、尋常ならざる犠牲の上で二度、ミレニアムは【邪神】の撃退に成功している。名前を出すとまた話が脱線するやもと思い、例の生存者については言及せずユキは訊ねた。
「一応、財団にも私設部隊がありまして。冥王星軌道の補給基地にはそれぞれ、巡洋艦や高速艇、それに僅かですが空母も配備されています。なので、その駐屯部隊で応戦したのですが……結果はご存じの通りです」
「そっか……」
「これでも、財団は資金に糸目を付けず最新鋭機を揃えてはいたんだよ?ただ、やっぱりサイズが、ね……」
気まずそうに雪夏が事情を話し、マヒマが補足しつつ配備されていた艦載機の諸元を表示させる。そこには二種類の可変戦闘機が写されており、高機動型の“レイバー”と重火力型の“ダイバー”、それぞれの戦闘機形態と人型形態の計4つの画像が見てとれた。
「レイバーは全高10メートル、ダイバーは12メートル。高機動型のレイバーの最大真空速度は秒速19キロメートルで、自力での太陽系脱出が可能だけど、武装が貧弱だよねぃ……」
「27ミリガトリング砲2門、110ミリカノン砲1門、超高振動ブレード2本、高機動多弾頭ミサイル計64本、電波欺瞞紙に指向性赤外線妨害装置。重火力型はそれに加えて重金属弾と放射性爆導索、反応弾やマスタードボム、化学焼夷弾、腐食性集束爆弾、カドミウム爆弾、OD弾に極小ブラックホールミサイルに……ユッキ、足りるぅ?」
「足りない……」
「だよねぇ……」
思わずユキは顔を伏せて落ち込んでしまう。今挙げられた兵装が全く効果が無い、と言う訳では無いのだが、やはり純粋な威力不足は否めない。重金属弾や反応弾、そしてごくしょうしかし、彼の知らない兵器に気が付きポールに「そう言えば」と顔を上げながら聞いた。
「腐食性集束爆弾とOD弾て、何?」
「えっとねぃ、金属性無機物に浸潤してぐずぐずにするクラスター爆弾で、炸裂後に装甲にへばり付いて腐り落とすのよ」
「……あぁ、僕らは【邪神】を有機無機物混合生体って言う認識だったから、そう言う視点もあるんだね……もう一つは?」
「えっとぉ、余り褒められた兵器では無いと言うか、色々と問題があったと言うか……」
歯切れの悪いマヒマに代わり、雪夏が話す。
「酸素結合破壊兵器の事です。元々は水中用だったらしいのですが、宇宙空間での実用化に成功しまして……とは言え、実験で想定以上の威力があったものだから禁止兵器に指定されちゃってますが」
「いやァ、まさか生物だけじゃなく基地どころか月面抉るとは思わなかったけど……」
ポール含め呆れ顔を浮かべる二人に苦笑いで返しつつも、聞く限りでは効果は見込める、とユキは考えた。名称も含め考えるなら、分子の結合を化学的に破壊する兵器なのだろう。
(重金属弾がもし、気化させた重金属をぶっ掛けるモノなら効果は一応、在る……人工ブラックホールは有効だし、ふしょくせー?も極小型の足止め位なら多分、可能)
「けどまぁ、OD弾だけじゃないよねぇ禁止兵器。宇宙限定で反応弾は使えるけど、他は大体ダメって言われてるし……カドミウム爆弾と極小ブラックホールはそもそも未認可だし……」
「知ってるけど知らない、て奴よなァ。表で使ったら間違い無くダメって言われる……いやちょい待ち、セレーネも土星も普通に使ってたよな?」
「はい、テロ鎮圧の救命活動中、普通に使ってました。直接は言われていませんが、あの時の報酬がやけに多かったのはやっぱり、口止め料込みですよね」
三人は互いに目線を交わしてしっかりと溜め息を吐く。何やらしがらみが多い様子で、ユキにはそれが理解出来なかった。
「禁止へーき、て使ったらダメなの?」
「うん、すんごい怒られる」
「何で?使えるモノは全部使わないと、とてもじゃないけど戦えもしないよ」
「そうなんですけど、実際に【邪神】を確認したのはアタシ達だけですし、まだ人類圏に実害が出た訳でも無いので……」
「だったら、もう一回同盟を組み直してルールを変えなきゃだよ」
「ユッキーの言う通りなんだけど、そうすると“誰が戦うのか”とか“資源の配分は”とか“民間人はどうするのか”とか、色々と出て来るんだ」
「生きてる癖に、そんなワガママをッ!?」
ユキからすれば、民間人と言う人種は居ない、全員が戦闘員だ。パイロットか整備士か、通信士か医療技士か、その程度の違いしか無い。死のうがユニットを交換して戦地へ、使い潰したら培養液にし後継の人工生命体の養分となって再利用するのが当たり前だ。だからだろう、彼にとって“誰が”だの“命が”だのは些事でエゴにしか見えない。
「ごめん、皆は悪くないのに……」
「いや良いんだユッキ、皆悪く無いから間違ってるのよ」
落ち込むユキの肩を優しく叩き、その過去に想いを馳せながら友人を労う。重い空気に何かを言う事も憚れたが、思い出したかの様にマヒマがやや不謹慎な事を口に出す。
「そう言えば今回の参加者は全員、遺書を用意してねってドクターが言ってたの思い出したッ!」
「……え、今?」
「ぅ、ごめんなさい……」
「ん?遺書って何?」
「あーユッキ、死ぬ前に残したいメッセージの事だよ。くたばってからじゃ遅いでしょ?」
「はぁ……こっちじゃ軍規違反じゃ無いんだ、そう言うの」
意図的な戦意沈着を招くとして多銀河間同盟では禁じられていた。戦死者の言葉とはどの様な形であれ、生存者に対し少なくない影響を及ぼす。事実、戦友や恋人の生前を否応無しに想起させ、消極的武装放棄によって被害が大きくなった過去があったからだ。故に、ユキには物珍しい文化とも言える。
「それ、僕も書かなきゃ?」
「多分?」
「こっちの言葉分かんないよ……」
「んー特に書く事無いんだけどなァ……」
「アタシも……もう家族居ないし」
全員では無いが、半数近くは既に書く相手が居ない事に気付き“必ず提出すべし”が枷となって出立の直前まで揃わず、近濠は頭を抱えるのだがそれは別の話であった。
――ペンは剣よりも強し、等と言う幻想は無い
――何故ならば、剣を振るった時点で負けているからである
――対処療法は敗北からしか始まらず、引き分けが最良の着地点だからだ
【TIPS】
<人類圏と星間開発財団【Lex Stella】の軍事力>
・土星【マハト・パドマ】
宇宙戦艦:タイタン級(全長1000メートル)23隻
宇宙巡洋艦:ガリア級(全長750メートル程)131隻
宇宙高速艇:パーリアク級(全長350メートル前後)900隻
宇宙航空母艦:ヒュペリオン級(全長1800メートル強)14隻
補給艦・輸送艦・偵察艦:多数
・星間開発財団【Lex Stella】
宇宙戦艦:ラナー級(全長820メートル)5隻 梵字:戦い
宇宙巡洋艦:ハタ級(全長490メートル)19隻 梵字:力強い
宇宙高速艇:ケセプルヤー級(全長275メートル)51隻 梵字:速い
補給艦・輸送艦:全長400メートル前後)30隻
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