ガラスの靴よ、いつかにさらば/第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部【二十首連作部門】

翠雪

ガラスの靴よ、いつかにさらば

手を握りヘルプを従え笑んだ君 も少しマメなら盲と知らずに


三十路前ものは試しと三千円 送り指名は声で選んだ


また来てと触れた体温低かった 優しい人だと勘違いした


沈むソファ俺にはお前だけだから 姫と呼ばれた胡蝶の夢


また来月 また来週ね また明日 払うも売るも真夜中の淵


好きだった御伽噺はシンデレラ ガラスの靴がボトルじゃ履けない


文集で「愛はお金じゃ買えません」気取る私に指を差される


ホワイトデー ナンバー入りした返礼品 割いた稼ぎは千分の一


「女性向け 定番ブランド」ヒットする私のコーデに合わない首輪


ヴァンクリの刻印知らない馬鹿じゃない ほらねやっぱり貴方嘘吐き


物の山 脚を丸めて眠る夜 豊富な巣材はコピー品


朝ぼらけ 被りの名前で呼ばれても修道女のふりは上手いの


カレンダー燃えないゴミの日今日だった 母の電話を洗面所で取る


過ぎし日に嫌い尽くした方言は十年経っても傍らにいた


これ下さい お久しぶりですスニーカー 一番アクセル踏みやすいから


「お祝いに」「待ちきれないか、バースデー!」高らか建てた泡の塔


LINE消し電話番号着信拒否 「それ割れ物です」「承知しました」


合鍵をキーホルダーから抜き去って君を取らない路を選んだ


ワンルーム 物を消したら広かった フローリングに素足吸い付く


田の匂い青い緑と一軒家 ラストソングを鼻歌にして

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