【#9】《掲示板》酒クズちゃん、奇跡の生還を成し遂げる

【速報】酒クズちゃん、SSSランクモンスター”ヘル・タイラント”と遭遇して生還する


1:名も無き探索者さん


 酒クズちゃん生きてたーーーー!!


2:名も無き探索者さん


 マジで!?


3:名も無き探索者さん


 ほい、ソース↓ (酒クズちゃんのD-LINEより引用)


《配信を見ていた皆さんへ》


 この度は心配させてすいません。わたし、天霧アヤカは無事です。


 あの時の状況を詳しく説明すると、ドローンが壊れたせいで配信が途切れまして、あれからずっと物陰に隠れていました。


 その後、ヘル・タイラントはわたしに気づかなかったみたいで、そのままどこかへと消えていきました(どうしてか分かんないですが……)


 とりあえず、そういうことですので!! これからも配信がんばっていきますのでよろしくお願いします!!


5:名も無き探索者さん


 >>3

 うおぉおおおおお、ナイスーー!!


6:名も無き探索者さん


 あぁー!! よかったー!! 


7:名も無き探索者さん

 

 あ、自撮りもアップしてるね

 「ギルドからの事情聴取終わったよ~♪」だってさ。一升瓶いっしょうびん片手に幸せそうな顔で


10:名も無き探索者さん


 >>7

 のんきだな!?


12:名も無き探索者さん


 >>7

 あんなヤバイ状況から生き残ってからすぐに酒を……?


15:名も無き探索者さん


 >>12

 まぁ、らしいといえばらしい


20:名も無き探索者さん


 しかし、配信止まった時はマジでダメかと思ったよ……


24:名も無き探索者さん


 >>20

 それな

 今アーカイブ見返してるけど、あんなに近くにヘル・タイラントいるの怖すぎるわ!!


27:名も無き探索者さん


 しかし、よく隠れきったよな?

 異世界で”生きる災害”とも呼ばれるヘル・タイラントは、一度暴れだしたら止まらないと聞くが


31:名も無き探索者さん


 >>27

 確かに

 あのダンジョンの限られた空間の中で、あんなヤバイモンスターから隠れきるのも結構大変な気がするなぁ


34:名も無き探索者さん


 >>31

 もしかして酒クズちゃん、意外とステルスの才能があったり?


38:名も無き探索者さん


 >>34

 あー、そうかもしれん

 普通に考えて、あのヘル・タイラントと戦うとかありえねーもんな


40:名も無き探索者さん


 >>38

 そりゃそうよ

 たった一人でSSSランクモンスターと戦う?? あんなだらしない酒クズちゃんが?? そんな事あったら神話レベルだよ


45:名も無き探索者さん


 >>40

 だよなぁ

 要するに今回酒クズちゃんが生き残れた理由は、隠れるのが上手いうえに運が良かった。それに尽きるな


50:名も無き探索者さん


 酒クズちゃん……とんでもないラッキーガールだぜぃ!!


◇◆◇◆◇


《東京中央ダンジョン・ギルド本部控室》


(よ、よかった……俺が戦った事はバレてないっぽい……)


 ギルドからの事情聴取が終わった後、俺はスマホでエゴサして安心していた。


 どうやら世間の認識では『ヘル・タイラントから隠れて生きのびた』……ってコトになっているようだ。まぁ、他に目撃者もいないんで当然ではあるんだが。


(今回一番”ラッキー”だったのは周りに見られてなかったことかも……)


 そうやってホッと一息ついていると、控室の中へ魔法陣が現れる。この感じ、まさか──。


「アヤカちゃん!? 無事~~~~~っ!?」


「うわっ!?」


 その直後、ティーシャが魔法陣の上から飛びついてきた!! そして、そのまま空中からダイブするように俺を抱きしめてきた!?


「あぁ~~!! よかったぁ~~~~!!! ちゃんと生きてたぁ~~~~~!!! うわぁ~~~~~~~!!」


 な、泣いてる!?


 感情をむき出しにしたように泣きじゃくってくるティーシャ。


 やば、女の子が泣いてる時の対応わからん!? とりあえず、謝っておくか……!?


「ご、ごめんなさい!? 心配させて……!?」


「もぉ~~~!! ホントだよぉ~~~~!!」


 ティーシャは俺の胸をポカポカと軽く両手で叩き、涙でうるんだ両目で俺の事を見上げてくる。


「ごめん……アヤカちゃんは悪くないよね。今回の件は完全に事故アクシデントだったわけだし……」


 その後、ティーシャは自分を落ち着けるように深呼吸して、俺の方へ気丈きじょうに笑いかけてくる。


「そうだ、せっかくだから今夜は何か美味しいモノでも食べに行こっか? ラビちゃん辺りも誘って♪ ──アヤカちゃん、食べたいものある? なんでも言っていいよ♪」


「え!? なんでも……」


 い、いいのかな? こっちが決めてしまって。


 俺はちょっと迷ったあげく、真っ先に頭に浮かんだものを口にした。


「や、焼肉とかどうでしょう? とにかく今はスタミナがつくモノを食べたいです……」


 やば……ちょっと女子っぽくなかったかな?


 「まさか地雷を踏んだか!?」と焦っていたのだが、ティーシャはニッコリ微笑みながら言ってくる。


「いいねぇ~~♪ それじゃ、今日はパーっと行きましょー!!」


「うわぁ~~!? ありがとうございます!!!!」

 

 ……こうして、今夜は焼肉に連れて行ってもらえることとなった。

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