【#4】配信者デビュー

 そうして、ティーシャの家で俺のデビュー配信をすることになったのだが。


 【天霧あまぎりアヤカの酒クズチャンネル・配信開始!】


「「みなさん、こんにちわー♡」」


 撮影用ドローンのカメラに向けて、並んで手を振る俺とティーシャ。


 すると、初配信にも関わらず──とんでもない量のコメントが押し寄せてきた!! い、いきなりこんなに来るの!? 追いきれない!?


"うぉぉお!! 酒クズちゃんだーーー!?"

"おいおいおーい!? しかもティーシャと一緒じゃねぇーか!?"

"つか、二人とも酔ってないか!?"


「「酔ってまーす♡」」


 そう、まさにご指摘の通りだった。


 配信開始前。『初めてで緊張してるだろうから』とティーシャにお酒をたくさん飲まされた。


 その結果がこれだ。昼間から飲んだくれる女子二人。


「ほらほら〜♡ アヤカちゃーん、みんなにご挨拶しなよー?」


 ティーシャも酔い潰れたせいか、ピッタリと俺に身体をくっつけてくる。


 正直それだとよけいに緊張してくるんですけど……まぁ、いいや。


「えーっとぉ、は、初めまして!! 天霧あまぎりアヤカですっ!! 昨夜の一件でご存知の方もいると思いますが……この度、ダンジョン配信者としてデビューさせていただく事になりましたっ!!!」


"なん……だと?"

"酒クズちゃんが!?"

"大型新人すぎる!!"

"うおーーーー!! 酒クズ系配信者の爆誕だーー!!"

”オドオドしてるの初々ういういしくていいな……”


 うっ……やっぱ緊張しているように見えるらしいな。こうなったら──。


「ティーシャ!! 追加のお酒を貰ってもよろしいでしょうか!?」


「はいはーい♪」


 ティーシャが持ってきたボトルを受け取り、俺は豪快に飲み干した。


”すげーーーーーーーー!?”

”いい飲みっぷりだな!? 酒豪すぎる!?”

”こんな逸材が野に隠れてたなんて……” 


「ふふふっ♪ もうヤケクソで~~す♪」


 更に酔っぱらってきて、気分も良くなってきた。ひょっとしたら俺にとってはこれぐらいがちょうどいいのかも。


 そんなテンションも上がってきた頃、ティーシャが司会のように進行を始めた。


「とりあえず、今日はみんなにアヤカちゃんについて詳しく知ってもらおうかなーってね。──アヤカちゃん、ステータスは出せるかな?」


「わかりました~」


 そうして、俺はステータスの呪文を唱えて、魔法文字をカメラに向かって見せた。


【名前】天霧あまぎりアヤカ(♀)


【クラス】サムライ【装備】呪われし妖刀


【スキル】酔剣すいけん→酔えば酔うほどパワーアップ!


     鋼の肝臓→酒を無限に飲む事ができる


”【酔剣】? なにこのスキル?”

”酔えば酔うほど強くなる?? 変なスキル~”

”なんかお酒関係のスキルばかりだな!!”

”まさかのスキルまで酒クズっぽいというか”

 

 コメントからも察するに、やっぱり俺だけしかないタイプのスキルらしい。……まぁ、こんな変なスキルの持ち主が何人もいても困るけど。


 やがて、ティーシャは楽しそうに笑いながら進行する。


「それじゃ、次の質問~。アヤカちゃん、ダンジョン歴はどれくらいなのかな~?」


「どれくらいと聞かれると……実はティーシャと会ったあの日、初めて入りました」


 すると、ティーシャはビックリした顔で言ってくる。


「えぇっ!? じゃあ、昨日が初めてなの!? あれだけ動けてたのに!?」


”え? ウソでしょ?”

”酒クズちゃん、迷惑系の奴らを軽々倒してたような……?”

”おいおい、話盛っちゃダメだよ~~?”


「ホントなんです~~!? 信じてください~~!?」 


 それから俺はティーシャに会うまでの経緯を話した。


 ダンジョンの隠し通路で妖刀を拾った事。それから身体に変化が起こり、さっき見せたようなスキルを得ていた事を話した。


 ……もちろん、妖刀で女体化した事だけは伏せた。これだけは絶対に誰にも話せない秘密だった。


「ふーん、なるほどなるほど。その妖刀、何かありそうだねぇ」


 ティーシャは納得したように頷いて、俺の腰に差さっている妖刀を見てくる。


「アヤカちゃん、ちょっと調べてもいいかな? ほら、その呪いが危険なものだったら大変でしょ?」


「え、えぇ。それもそうですね……」


 や、やばい。やっぱこの妖刀を怪しんでるみたいだ。でも、断るわけにもいかない流れだし……。


 ティーシャに妖刀を貸し出すと、彼女は【スキャン】の呪文を唱えた。だが、そこに表示された魔法文字は──。


《呪われし妖刀》


 ******(詳細不明)


「あれ? 詳細不明……?」


(?? もしかして、みんなには読めていないのか……?)


 おかしいな、俺にはちゃんと『所有者の性別を”女”へと変えてしまう』という情報が見えているのに。


 それからティーシャは俺に妖刀を返してきた。


「ごめんね。あたしの力でも分かんないや。でも、呪いの力は特に感じないから、たぶん何かのきっかけで消えたんだと思う。だから、安心して使っていいと思うよ!!」


「よかったー! ありがとうございます……!!」


 俺はホッと胸を撫で下ろして、ティーシャにお礼を言った。


 ……とりあえず、女体化している事はバレる心配はないらしい。あぶないあぶない。


 ◇◆◇◆◇


 そうして、しばらくティーシャとのトークに夢中になっていると。


「あっ、そろそろ買い物行かなきゃ」


 ティーシャが時計を見ながら言う。どうやらそろそろ締めに入るようだ。


「ハーイ。そういうワケでねー、アヤカちゃんはあたしと一緒の事務所に入ることになります。あー、それとね──」


 そして、次の瞬間。ティーシャはとんでもない発言をぶっこんできた。


「アヤカちゃん、この家に住んでもらうから♡」


「──えっ!?」


 ちょっと待って!? それは俺も聞いてないんですけど!?


"!?"

"どどど同棲!? ティーシャとぉ!?"

"頼む!! 説明してくれぇーー!!!"


 すると、ティーシャはわざと涙ぐむような演技で説明する。


「さっきアヤカちゃんからお話聞いたんだけど、今は色々あって今は帰れるおウチがないらしくてね……そういうの聞くとやっぱほっとけなくてさ」


"良い子だ……"

"流石はティーシャ! マジ天使!!"

”百合ハウスキターーー!!”


「なんかもう一緒に住むの決まった流れになってますけどー!?」


 その流れにストップをかけると、ティーシャが二の腕を引っ張って不安げに言ってくる。


「……もしかして、あたしと住むのイヤ!?」


「なっ!? そんなワケないじゃないですか!?」


 や、やべっ!? そんなショックな顔されるとは思わなかった!?


「もちろんイヤじゃないですよ!? むしろティーシャと住めるなんて身に余る幸せというか……!! でも、ホントにいいんですね!?」


 慌ててフォローすると、ティーシャはホッとしたように胸をなでおろした。


「いいに決まってるじゃ~ん? じゃあ、決定ね〜!! 今日からアヤカちゃんはここの住人でぇ~す♪」


 さらに酔いがまわってるらしく、ティーシャは俺の肩に頭を乗せてニヤニヤと言う。


「ふっふ~ん♪ アヤカちゃんと一緒に暮らすの楽しみだなぁ~♪ これからたっぷりお世話してあげるね〜♡」


「あわわわ……!?」


”これ!! 世紀の大事件だろ!?”

"こりゃティーシャの新しい決定だな……"

"いいなぁ〜。オレも養ってもらいたーい"

"酒クズちゃん、ホンマに羨ましすぎる……!!"


 俺だってこんなの予想外だよ!?

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