6-超小咄【脱糞メイドのトリカちゃん】
「ボクは………ボクは───強くあらねばならない───ッ!」
生前は貴族のお坊ちゃまだったパルヴェルト・パーヴァンシーが声高らかに叫ぶ。廊下の端から端まで響き渡り少しだけエコーのようになりながら、世界に想いを伝えるが如く気高く宣言するパルヴェルトに、僕は小さく溜息を吐いた。
「………で? 片付けって何だよ」
目の前にあるのは部屋の扉、ルーナティア城内の賓客棟の一室。端的に言えば、パルヴェルト用に割り当てられた個室の扉だ。
「というかお片付けはトリカのお仕事では無いのですが………部下の娘たちをお呼びしますか? この時間ならラワトリー辺りが暇こいてるでしょうし」
身長三メートルを超えるクソデカメイドことトリカトリ・アラムが困惑した声色でそう聞くが、パルヴェルトは「駄目だ、良くない」とそれを一蹴する。
「………呼ぶ事は大した手間では無いので気にしませんし、呼ばれる事も仕事の一つなので我々は気にしません。むしろトリカはお掃除お片付けが苦手ですので、それを手伝わされる方が気になります」
けれど妙に頑として譲らないパルヴェルトにトリカトリも少しだけ意地を見せ始め………そんな二人の声を耳で楽しみながら、僕は個室の扉としては妙に大きいそれを眺めていた。
………まだまだ新米だった頃のトリカトリは何から何まで上手くいかなかった。何をしても失敗ばかりで怒られる日々に、少し鬱気味になって朝起きられなくなる時期もあったという。
そんなトリカトリが最も嫌っていたのが、各部屋のベッドメイキングだったそうだ。
何せまず部屋に入るのに四苦八苦する。トリカトリが勤め始めた頃のルーナティア城は何から何まで人間サイズにしか造られておらず、身長三メートルを超える大柄な種族であるトリカトリは自分の部屋にすらスムーズに入れず、心底疲れている時は大浴場の脱衣所で寝る時もあったという。過去を思い出し笑いながら「おトイレも大変でしたからね」と言うトリカトリに、聞いていた僕は正直胸が痛くなった。
トリカトリは何も悪くない。トリカトリの体に合わせていないルーナティア城が一方的に悪いのだ。にも関わらず、部屋に入ろうとした際にドア枠にヒビを入れればトリカトリだけが烈火の如く怒られた。城を壊して怒られたからと「部屋に入れませんでした」と素直に戻れば「それでも入れ、お前の仕事は何だと思っているんだ」と再び怒られる。
何をしたって怒られる。何をしなくても怒られる。生きているだけなのに、生きているだけで怒られる。
やがてトリカトリ・アラムは、就寝時間後にも関わらず当時のメイド長から長く理不尽な説教を受けている途中で『自身の一定範囲内での発声を拒否する』という
初めてそれを聞いた時は「そんな理由でかよ……」と思わず呆れた。
しかし今ではそんな事は思わない。
しかしトリカトリは
それはつまり、トリカトリはそれだけ辛く苦しかったという事。
死んでも尚変わらない程に強い思いという事は、今でも当然思いは変わっていないという事なんだ。
「それでもだ。それでも一介のメイドたちには手伝わせる事が出来ない」
そう、それでも。それでもパルヴェルトはトリカトリを呼んだ。
「僕だけで良いだろ。狭くは無いけど、広過ぎるって訳でも無いんだ」
「ブラザー一人では手が足りない」
「ヒカル様には……見られたく無いものも多いでしょうね。ジズ様では駄目なのですか?」
「ジズくんは面倒臭がりだ。ブラザーの事なら厭う間も無く動くだろうが、ボク如きでは手を焼く為に手を上げる事すらきっと嫌がるだろう」
「ポルカはどうなんだ? お前最近ポルカとよく喋るらしいじゃないか。ポルカと話すと結構お前の名前出て来るぞ」
「…………ポルカくんは、その………ちょっと気になってるから、余り見られたくない。………幻滅されたく無いんだ」
少しおどおどするようにそう言われ、僕とトリカトリは口を揃えて「「なるほど」」と呟いた。
幻滅されたく無い。
パルヴェルトのその気持ち、僕は痛い程に理解出来る。
だって僕はしくじって
心の病に苦しむものは、同じく心の病に苦しむものにしか理解出来ない。
けれど心の病に苦しむものは、周りの苦しみを理解してやる余裕なんて無い。自分の事で精一杯過ぎて………自分が生きる事すら投げ出してしまいそうな程に精一杯なのだ。
「………仕方無いな」
今の僕は比較的余裕がある。心に余裕があり、周りの為に体を動かせる。僕の言葉に何か思う所があったのか、トリカトリも「はあ」と小さく溜息を吐きながら「でしたらさっさと終わらせましょう」と少しだけ前向きになってくれた。
「恩に着る。…………では、頼むよ」
いつになく真面目な声色でそう言うパルヴェルトが重々しく扉を開き中に入ると─────、
「………………何これ、めっちゃ本多いな」
パルヴェルトの部屋の中は兎にも角にも本だらけであり、ものが置かれていないのはベッドの上だけというぐらいに狭苦しくなっていた。
その手狭さは本当に酷いもので、僕とパルヴェルトは何とか本の隙間に足を差し込んで入る事が出来たものの、身長三メートルに合わせて体のパーツ全てが
「………パルヴェルト様が様々な分野に挑み努力を怠らない方というのは存じておりましたが………ここまでとは思いも寄りませんでした。トリカ少し見直しました」
さっきまでの嫌がる気配が無くなったトリカトリが感嘆すると、パルヴェルトは「違うよ」と即答する。
「この部屋にあるのは九割がエロ本さ」
「もう二度と見直しません。トリカは今ここに誓います、真偽がはっきりするまで軽々しく見直すような事はしません。絶対です」
威風堂々、勇往邁進。そんな言葉が似合うようなキリリとした表情と声色で「全部シコいから捨てられなくてね」と言うムッツリボーヤに「堂々と言ってりゃ許されるってもんじゃねーぞ」とツッコミを入れるが、パルヴェルトは何も気にしていない様子で「ははは」と笑ってそれを流す。
「………これはトリカの手が必要ですわ、部下の娘たちでは手に余ります。というかこんな有様になってるなんて報告受けてませんよ………ラワトリーには少し言っておく必要がありますね」
「ジズは見た瞬間無言で帰るだろうし、光は確実にボロクソ言う。ポルカは何だかんだ優しくフォローしてくれそうだが………内心では光より数倍ボロクソに思ってるだろうな、あいつ腹の中で色々抱えるタイプだし」
僕らの言葉に「だろう? だからブラザーとトリカ嬢しか居なかったんだ。嫌な言い方だが、消去法みたいなものだったんだよ」と少しだけ申し訳無さそうな声を返す。
「つっても本は重いだろ。僕は中に入れるが力に自信は無いし………」
「力に自信のあるトリカはまず室内に入れません。入っても良いですが容赦無く本踏みますよ。数多の作品に対する強いリスペクト精神を持ちながらも結局容赦無く踏み付けますよ」
「だからといって部屋の主であるボクはどれもオキニ過ぎて一人では一冊も捨てられない」
「どん詰まりじゃねーか、どれもオキニじゃねーだろ言ってる場合か」
「焼きましょう。部屋ごと。金陽様をお呼びすればお城の一つ二つぐらい秒ですよ」
「やはり……そうか。焼くしか無いのか」
「いや城ごと焼くなよルーナティア城が原爆ドームみたいな鉄筋剥き出しになるだろうが、他にもあるわ馬鹿か」
「でもお城が焼け落ちれば戦争は終結、平和になったトリカは実家に帰る口実が出来ます。最近ずっと実家帰りたくて仕方がありません。退職届書いたら「涙で滲んでる部位が読めない」って受理されませんでした」
「………トリカ、今度仕事の愚痴とか僕が聞くよ、一緒に話そう」
「トリカ惚れっぽいのでご遠慮致しますわ。ちょっと献身的にされたらすぐ好きになってしまいます」
「トリカ嬢が誰を好きになろうがそれは自由なのでは無いかい? ボクだってブラザーの事が好きなんだ、友人としても同性としても」
「同じだからな? 友人としても同性としてもって本来全く同じような意味だからな?」
「実害は出していないつもりだよ。ブラザーの部屋の扉に時間が経って透明化した謎の液体が付着しているような事は無いだろう? そう、思うだけなら良いんだ、そこからエスカレートしなければね。誰かを愛する事はこの世で唯一、誰しもが平等に行えるものだよ」
「ストーカーって自分が相手にとってどれだけ迷惑な存在なのか自覚して無いから怠いんだよな。死ねば良いのに」
「因みにトリカがタクト様を異性として見ないのは股間の大きさが最たる理由です」
「頑張れブラザー。ボクは無責任に頑張れというのは本当に嫌いだけれどね、これに関しては頑張れとしか言えないんだ。だから頑張れブラザー」
「任せろ相棒、エロ雑誌の後ろの方にある胡散臭いサプリメント飲みまくって馬並みちんちんを目指すぜ」
「………あくまでも妥協値ではありますが、そうですね。タクト様が太さ四十五センチ、長さ七十センチ程度のおちんちんになったらトリカはその日の内に求婚致しますよ。まあ妥協値なのでトロ顔ぐらいで終わると思いますが……このサイズでアヘ顔は多分無理ですわ」
「トリカ、それは
「登場初期のジャ◯ク・ハ◯マーぐらいの感覚で陰茎増大サプリを食べないといけないね。さよならブラザー、キミはボクの知らない世界に行ってしまうようだ」
「フィストファック通り越したアームファックぐらいになって「んー……ちょっと細いね。でも長さは悪くないよ、結構好みかな」と冷静に分析する風俗嬢のような反応をすると思います」
「僕はそんな風俗嬢が居る世界には行きたく無い。人のちんちんを冷静に分析する暇があったら嘘でも良いから喘いでくれ」
「理想はタクト様が丸ごとトリカのアソコに入ってくれる事でしょうか。壁が押し寄せてくる罠に耐えるみたいな感じでおま◯この中で両手を突っ張ってくれれば、多分トリカもGスポ刺激されて潮ぐらい吹けると思いますわ」
「やめてください、窒息してしまいます」
「というかゲームブックやTRPGの押し寄せる壁のトラップみたいな感覚でGスポットを刺激しないでくれたまえ」
「タクト様は賢明に叫びました。『僕に構わず先にイけェッ!』と。……はい、取り敢えず1d6でダイス振ってください。結果でアヘ度が変わります」
「「このメイド最悪だよ」」
声を揃える僕らに「ふふふふふ」と微笑むと「それはさておき」とトリカトリは話を戻し始める。
釣られて僕も向き直る。そしてすぐに目を逸らしたくなってしまう。
「…………このままずっと馬鹿話していたかったな。今が一生続けば良いのにって、僕生まれて初めて思ったよ」
「残念ながらそれは無理だよブラザー。何せまだ四千文字程度だ、一話の平均が二万八千文字だとして、残り二万四千足りない」
何やらメタい事を言うパルヴェルトに「他が多いんだからもう良いだろ。お前は辞書でも書く気か」とメタを被せるが「取り敢えず作戦はもう決めてある」と完全にシカト。
「作戦……ですか? この汚部屋を片付けるのに作戦も何もありそうに無いのですが………」
「ボクが捨てるべきか悩んだ本のタイトルを言っていく。ブラザーはそれを聞いて、捨てるべきか判断してくれ。トリカ嬢にはそれをまとめて欲しい」
「………まあ、そういう感じになりそうだなーとは思っておりました」
少し飽きれたような声色でそう言うものの「まあそれぐらいしかありませんからね。やりましょう」とトリカトリは袖を捲って気合を入れる。
そこに僕が「待て」と冷静かつ冷淡な事実を冷ややかに突き付ける。
「その作戦だと僕の性癖もバレるんだが」
「ではサクサク始めましょう。世界の時間は無限でも、
「おい僕の性癖」
「膨張途中のビッグバンが収縮………何かセックスみたいだね。いつ男がイって膨らんでいた股間が縮まるか分からない………つまりボクのちんちんは宇宙だったという訳か? 凄いや感慨深いね」
「ボコるぞお前」
「名前は「ギャラクティック・ちんちん」と「コズミック・ちんちん」の二択ですかね。トリカ的には前者が良いです、後者は何だか細そうで」
「お前はカラーコーンでも突っ込んで先端のバリで怪我してろ」
「では始めようか」
「ボコるわお前。終わったら覚えてろ、お前が泣いても殴るのをやめない」
慣れた足取りでスイスイと部屋の中を進んでいくパルヴェルトが手頃な本をガンガン手に取りその題名を読み上げていく。
………ルーナティア国で使われている言語は少なくとも日本語や英語とは異なるのだが、割と勤勉で努力家であるパルヴェルトは既に現地の本を読めるぐらいには識字能力が高まっているようだった。
そうして読み上げられた本に僕がジャッジを下しつつバケツリレーのようにトリカトリへ流し、Newスーパーマ◯オブラザ◯ズのミニゲームにあった「タッチペンでボ◯兵を分けるアレ」のように分別、要る要らないを分けていく。一旦本を全て部屋から出したのにまた戻すのは二度手間に思えるが、出せるスペースがあるのなら出した方が最終的に「あれはあそこに置こう。んでこれはこっち」という風に目測で算段を組めるようになる。手狭になっている部屋の中で全てを完結させようとすると結構ごっちゃになり、余計に手間も時間も掛かる場合が多いのだ。
「行くよブラザー、『新人メイド調教録-ご奉仕編』」
「待ってくださいまし、のっけから何か悪意を感じます。トリカに対する悪意を感じますわ」
「要る。メイドといえばご奉仕だよな」
「要りません要りませんわ。「といえば」じゃないんですよ捨てなさい」
「次、『新人メイド調教録-肉便器編』」
「捨ててください、後生ですから捨ててくださいまし」
「要る。実際中身はただの緊縛肉奴隷系なんだろうけど、メイドってだけで最高にシコい。絶対要る」
「捨てろォッ!」
「次、『街中痴漢百連発』」
「要らない。シコいのは否定しないけど、
「……おお、タクト様って意外と常識的だったんですね。開幕メイドものでいきなり攻めてきたから不安でしたが………トリカ見直しました」
「次、『新人メイド調教録-嫌々お触り編』」
「要る。嫌がる子って最高にシコい。ニラマレもっと流行って欲しい。そう考えるとやっぱ痴漢系って強いんだな、さっきのやっぱキープで」
「………学んだのになあ、トリカさっき真偽がはっきりするまで見直さないって学んだのになあ……クズ共がよお……」
「次、『昼下がりの濡れ濡れ団地妻』」
「要らない。僕浮気マジで嫌い。食い逃げと同じぐらい常識外れ、離婚届出してからにしろ」
「基本良い子なのにぃぃぃ………ッ! このクソ愚者がよぉぉぉ………ッ!」
「次、『田舎娘の乳搾り』」
「要る。芋い娘はたまに見ると激シコ。そのまま都会に出て薬漬けになってゴミ捨て場に放置される描写があれば尚良し」
「わざとですか? トリカの実家が
「次、『ぴちぴちギャル媚薬オイルマッサージ』」
「要る。白黒問わずギャルはシコい。実際付き合うとクソ怠いけど見てる分には最高にシコい」
「………そういうもの、なんですかね。男の人は分かりませんわ」
「次、『ア◯ルブレイカー隼人-ガンギマリチャンピオン・地獄姉妹決戦編』」
「要る。チャンピオン編ってだけでも胸熱なのに地獄姉妹って何だよ凄え気になる。後で貸してくれ」
「いやほんッと男の人って分かりませんねッ! 捨てろそんなものォッ!」
「次、『あまあまルニカは甘えたい』」
「……………………い、要る」(頬を染めながら)
「ア◯ルブレイカーで喜んでた奴がイチャラブ系で照れんなッ! 逆なんだよ逆ゥッ!」
「次、『行き遅れOL食べ比べ』」
「スーツの描写は? 着衣? 脱衣?」
「最終的に脱衣だよ。熟れた体の描写が妙にリアルだった」
「要らない、ゴミ。メイド服脱がすメイドものと同じぐらいゴミ」(ちらちら)
「…………トリカ見ながら言わないでくださいまし。本職メイド馬鹿にされてる気しかしませんわ」
「次、『親の居ぬ間に犬と居間』。………元気っ娘な妹モノだね、リビングでの全裸調教がかなり良かった」
「要らない。タイトルの語呂合わせに囚われて肝心の中身がスッと分からないのはナンセンス。元気っ娘もありふれてるし……病弱系だったり内気系だったりしたら妹のワンちゃん化はワンチャンあった。次回作にご期待下さい」
「タクト様は何様なんですかね。タクト様か。………取り敢えず後で犬系のトト様にごめんなさいしましょうね」
「次、『緊縛電流人格破壊』」
「要らない。超シコいけどヌキ終わってから電流での後遺症とか色々気になっちゃう。上原◯衣さん無理しないで欲しい、体に気を遣って長生きして欲しい。貴女が元気なのが一番シコい」
「……基本良い子なんですよ。タクト様って。そう、基本的に良い子なんですよね」
「次、『強制浣腸黙示録〜イキみ過ぎて脱肛イキ』」
「要る」(真顔)
「基本的には良い子なんですけどねぇ───ッ! 基本じゃない部分が歪み切ってるのが問題なんですよねぇ────ッ!」
「次、『死姦大全-長期保存から処分まで』」
「要る。絶対要る」
「……………トリカは心配です。タクト様の性癖が歪み過ぎてドリルみたいになってて心配です。主にジズ様や光様の命が心配です」
「次、『笑顔で微笑む君が笑う』」
「………名前的にロリ?」
「ロリだよ。でもレイプ系や調教系じゃあ無いね、かなりイチャイチャする」
「なら要る。ロリロリしてるロリは守備範囲外だが僕は甘々系に弱い。エロシーン飛ばせば楽しめそうだ」
「……………ジズ様とお付き合いしている方の台詞とは思えません。ジズ様ロリ体型の極地みたいなお方でしょうに」
「次、『のじゃロリババアと夏休み』」
「要らない。どっかの首折れるお婆ちゃんがちょっとトラウマ気味。怖い」
「トリカ側頭ぶん殴られて一発で意識飛びましたからねえ……。…………あのお方、スタミナの概念無いから無限にセックス出来るそうですよ」
「次、『お漏らしメイドのトリカちゃん』」
「──────はぁっ!? え、………はァッ!? え何ですかそれっ!?」
突然飛び出たタイトルにトリカトリが絶叫する。
「この部屋にある本はルーナティア国で買ったものだからね。トリカ嬢を推してる誰かが書いたのかもしれない」
「トリカ目立つからね。毎日朝から買い出し行くし、市場でも元気だし、大体いつもにこにこしてて愛想良いし…………その、か、可愛いし」(照れ照れ)
「書くなッ! トリカのエロ本なんて勝手に書くなッ! トリカ許可出してません肖像権の侵害ですッ! つか照れながらこっち見るな凄い腹が立つッ!」
「おっと勘違いは良くない。この本のヒロインは作中で「トリカちゃん」か「トリカ」としか呼ばれていない。ルーナティア城に勤めているメイドさんのトリカトリ・アラムだという明確な根拠はどこにも無い訳だ。よって無効」
「ものは言いようですッ! そんな言い分が通じるならネズミの神様は白黒の猫に裁判で負けてませんッ!」
「因みに『◯◯メイドのトリカちゃん』としてシリーズ化されている」
「するなッ! 打ち切れッ!」
「要る。………後で貸してくれ」(ちらちら)
「要らねェッ! 貸すなッ! こっち見んなァッ!」
「次、『イチャイチャメイドのトリカちゃん』」
「パルヴェルト、部屋の奥に隠しとけ。イチャラブ系は絶対要る」
「アイサー。………世界に足りていないのは
「く……ッ! 受け取ったら破いてやろうと思ってたのにぃ……ッ!」
「次、『脱糞メイドのトリカちゃん』」
「絶対要る」
「オラ退けェァッ!」
シリーズものだから同じ場所に置いてあったのか、連続して『トリカちゃんシリーズ』の名を挙げたパルヴェルトに、遂にトリカちゃんが憤慨。僕を押し退け扉の枠をメキメキとぶち壊しながら『脱糞メイドのトリカちゃん』をむしり取ったトリカちゃんはその場でそれをビリビリと破る。思わず「「あーッ! 絶対要るのにィッ!」」と叫んだ僕とパルヴェルトだったが、有り得ないぐらい怒りに満ちたトリカトリの瞳にビビり散らし、二人揃ってその場で失禁。恐怖に負けてジョビィィィィイイイイッ! と派手におしっこを漏らしてしまった事により、部屋の中に散らばっていた大量の本はほぼ全て水没。ふにゃふにゃになってしまった。
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