明かされたTruth 3/4
さてどうしたものだろうか。
昨日のあの様子じゃ東雲は間違いなく幽霊に関係している。
それは自宅周辺に大量の幽霊がいたことからも間違いはない。
幽霊と幽霊はいわば磁石のようにお互いを引き寄せるからそこに一点集中するなら必ず何かがあるということになる。
(それに東雲のプロフィール見てもどうにも妙なんだよな)
元々この家に住んでいたわけではなく15歳のころにここに引っ越してきたらしい。
しかしそこには当然いるはずの両親という存在がどこにも見当たらない。
そもそも東雲からそういった話を聞かないのもあるが至極当然のようにおばあちゃん子と言ってた以上、ある程度の推論は可能だ。
(夜逃げってやつか?家庭内で何らかの事件があって分散したとか)
もちろんただの推理でしかない、それにつながる物はすべて途絶えているのだから。
(……家庭の崩壊か、どんな気持ちなんだろうな)
少しだけこの目を知った時の事を思い出す。
小さいころから見えて当然で、何ならたまに声もかけられてきた。
俺にとっては自然なそれが他人に見えないというのは優越感以上に孤独な物でもあった。
誰とも話があわず、気が付けばクラスで孤立していた。
近づいたら呪われるなんて一方的な偏見でありもしないレッテルを張るだけの奴ら。
そんなのに迎合する気もなかったが、両親だけは違った。
両親も見えてこそいないが何かが違うということは理解してくれたし、時折それに合わせてもくれた。
だから俺は両親の事を尊敬してたし守りたいとも思った。
ただ、それを決定的にしたのは交通事故が発生するまでの話だった。
たまたま家族でレストランに行って帰りが遅くなりがちだった日、なんだか嫌な予感がした俺はいつもは曲がる道を駄々をこねてまで遠ざけさせた。
その結果そこでは交通事故が起きてそこに居なかった両親は救われた。
その事で感謝もされたし疑っていたことも謝られた。
だけどその日から少しずつ俺の周りを幽霊が漂うことが多くなり、自分の周りで事故が多発した。
祓う手段も知らなかった俺はただそれに翻弄され続けて、いつしか本当に孤独になった。
その時に出会ったのが今の寺の爺さんだった。
霊を見るなり一喝して祓ったときには寺育ちって本当にすごいと思ったぐらいだ。
その後に幽霊に関していくつか教えてくれた。
「幽霊どうしは惹かれあい、救いを求めてやってくる」
それが彼らのどうしようもない習性なのだと教えられた。
彼らとて傷つけたくて集っているのではない、そうするしかないからなのだと。
それを聞いてから小学校を卒業し両親と話をしてその寺に住まいを写すことを決めた。
要するに俺がここに居たら二人に迷惑が掛かるからという事だ。
今でも手紙でのやり取りはしてるしお盆が終われば会いに行こうとも思っている。
離れてても繋がる物はある、それが家族の絆だと俺は信じてた。
(だが今回はそのケースじゃない、何もんなんだよ東雲)
ある意味で幽霊以上に影のつかめない相手に少しだけいらだちが募ってくる。
そんな時に不意にスマホが震えた。
【伊吹、次の脚本って出来てる?】
目を通せば蓮からで次の脚本の催促だった。
(やっべー、ここしばらく殆ど書けてねぇや)
こっちの事は秘密にしている以上何処かでブーストしなきゃならんかったがそれにしてももうか。
【いやまだだな、どうしたよ催促なんて珍しい】
【昨日から少し自分でも演じてみたくて、そうすれば東雲にも伝わりやすいでしょ】
何というか、情熱的な奴だ。
自分で演じたいというならこっちも何か見繕ってみるか。
1日あれば大体の物は書けるし夕方にでも届けてやればいいかもしれない。
【それならさ、明日ちょっとしたコピ本渡すよ】
【いいのか?脚本も忙しいのに】
【いいってことよ、それに実を言うとちょうど行き詰っててな。新しい風穴が欲しいんだよ】
それに書くことで多少なりリフレッシュもできる。
ここ暫くまともに休んでなかったし息抜きにはちょうどいいかもしれない。
【それならさ、伊吹にも紹介したい人がいるんだ】
【なんだ?彼女でもできたのか?】
【違うよ、とても大事な人】
それを彼女っていうんじゃねぇかなと打ち込みかけたが野暮だ、そう言うことにしておこう。
【おっけー、なら明日な】
それを打ち込んでからもう一度東雲の家の周囲を見渡す。
さいわい昨日張ったお札がまだ効いているのか幽霊は近寄ってはいなかった。
(ひとまずここを離れるか、あぁ言った手前何もなしは無いからな)
明日は久しぶりにのんびりとできる日になりそうだった。
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