幕間話 信と実

さて、今見えているものは正直なんかの間違いだと思いたい。

影から東雲の家を覗いてみればごく普通の一軒家だ。

とは言う物の10を超える数の幽霊がこの周囲に集まっているのははっきり言って異常事態でしかない。

変装として眼鏡と帽子を付けているが、そのレンズ越しでもうっすらと見えてしまう。


(幽霊たちと目が合ったらまずいな、認識される)


それを暈すために持ってきたというのにそれでも見えるなら、ちょっと霊感のある人ならすぐ見えてしまう。

そうなれば幽霊はずっとその人物に付き纏うことになるだろう。

事態は思っていた以上に深刻だ。

思案に耽っていると突如ドアが開きそこから見慣れた顔が現れた。


(東雲?こんな夜更けにどこ行くんだ?)


いつものシャツとジーパンという格好で行くのならランニングか?

ともかく後を付けよう、見つかったらその時にでもなんか言えばいい。

ついでに電柱の見えにくい所にお札を張って幽霊除けをしておく。


(悪いな、後でちゃんと除霊してやるからよ)


ともかく今はこの事件の中核にいるだろう東雲を探すことが最優先だ。

ただ行く当てがないのかよく分からないが当てもなくあちこちを歩き回ってはそれを繰り返す、放浪のようなものに近かった。


(ただのジョギングか?杞憂ならそれで構わねぇしそれに越したことはねぇけどよ)


そうじゃないと俺の勘が告げている。

それに今の東雲の顔は何処か焦りが浮かんでいる、あんな顔は一度も見たことがない。


「違う、ここにもいない」


そうつぶやくや否やまた別の所へ向かって駆け出す。

これを繰り返していることから誰かを探しているのは明白だ。


(……友達は疑いたくなかったんだけどな、東雲。お前が何らかの鍵を握ってるのは分かったぜ)


それを機に引き上げることにした、それが聞こえただけで十分だった。

まだまだ東雲の家に集った幽霊の除霊もしなきゃならないしやることは山積みだ。

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