熱が呼び覚ます Wish of Day 7/7
「……何やってるんだろ、私」
どうして連絡なんてしてしまったのか分からない。
伊吹には無理でももしかしたら連にならなんて思ったりしたのか?
浅はかにもほどがある、そもそも連に幽霊なんて見えない。
私は呼び出した側だから彼女の姿は見えるけどそうですら無いんだから見えるはずもない。
(結局のところ、私がやるしかないんだ……!)
寝そべっていた身体を起こしてまた出かけようとした時、また眩暈が襲ってくる。
視界があの日に戻る、上手く立ち上がることが出来ない、それに何より切り捨てられたはずの幻聴が今も離れてくれない。
気が付けばあの光景に立ち戻っていた。
酒瓶を振り上げる糞男と一瞥すらせずパソコンを眺める糞女。
そして、私を庇ってそれを受け続ける彼女。
(止めろ、止めろ!やめてよ!!)
声をあげても届かない、庇おうとしてもすり抜けていく。
そこでの幼い私は、いつだって泣いているだけだ。
(やめて、もうおねがい、おねがいだから……)
視界が反転する、水の中みたいに上下の間隔がつかめない。
そしてそれが収まったときにようやく、まだ自分がベッドで寝そべっていたことに気が付いた。
窓から外を見れば今も血のように赤い夕陽が空を染めている。
夕日は嫌いだ、あの日を思い出す。夏は嫌いだ、それは何もかもを奪っていく。
親愛も、幸せも、私も、全部全部全部!
もう奪われたくないのに、もう何もなくしたくないのに。
(大丈夫、まだ動ける)
震える身体に鞭打って、また何とか立ち上がろうとする。
私が助けたいのは彼女だけだ、その為ならこんな身体なんて幾らでも差し出してやる。
(ごめんな蓮、その劇は最後まで演じきれそうにないや)
蓮には悪いけど代役を立ててもらって、その人に撮影を依頼してもらえばいい。
(伊吹、お前は絶対怒るだろうな。こんなものに手を出したなんて知ったらさ)
ベッドの下で紫色に光るそれは霊を呼び出すアイテムだ。
たしかウィジャ盤とか言ってたか、霊と交信してこちらに呼び出すための道具。
これを使ってからこの街の何処かに現れたみたいだけど一向に見つかる気配はない。
おまけに体はどんどん重くなっていく、とんだ不良債権だ
だけどどこかに彼女がいるというのが今の私の希望だ。
(……探さなきゃ、彼女を、そして謝らなきゃ)
身体を引き摺って外に出る、結局のところそれしかできないのだから。
体に当たる涼しい風が少しだけ虚ろな心を満たしてくれるような気がした。
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