熱が呼び覚ます Wish of Day 3/7

近くの商店街を当てもなくふらふらついていても何も得るものは無かった。

まぁこうしているのも爺さんから頼まれた霊を呼び出すウィジャ盤捜しのためでもあるのだが、やはりというかなんというか手掛かりらしきものは無い。


(蓮に聞いてみても反応がなかったってことは知らないよなぁ、まったくお手上げだぜ)


それに曰く付きのものをうっていると噂のリサイクルショップや古物商などを当たってみてもそれらが売られていたことは無いというのだから難易度は上がるばっかりだ。

ヒントもない中から物を探し当てろと言われてもクソゲーが過ぎる。


(それにしても暑いな、まだ8月入ったばかりなのにもう33℃超えかよ)


昔から暑いのは苦手だ、イライラするし考えもまとまらない。

やはり人類はこんな炎天下の中で何かをしようなどとは思っちゃいけない。

文明の利器を頼るのが賢い人間のやり方に違いない。

具体的にはクーラーの利いた部屋でPCやスマホを使って情報を集めればいい。

うんそれがいい、さっそくそうすることにしようか。


(それにしても今日の東雲ちょっと様子がおかしかったな)


蓮なら気が付いていただろうけどどこか心ここに非ずといった感じだった。

聴けば仮眠とっている間に漣と幽霊について話していたみたいだったがそこからだったらしい。


(お盆に会いたい人がいるってことは故人なんだろうな)


経験上そうなんだとわかる、そういう人を何人も見てはきた。

そしてその経験がどんどんといやな予想を加速させていく。

爺さんから贈られてきた資料にも厄介なことが書いてあった。


(呼び出した霊が悪霊に変わるとかふざけんな、あっちゃならねぇんだよんなもん)


幽霊と悪霊じゃわけが違う、あれは人を破滅に導くものだ。

人の精神に干渉して破滅へと導きかねない、そんなものに成ってしまうもの。

そこに故人としての尊厳も何もありはしない、ただ生者を破滅へ導くだけの笛吹人。

そんなものが出てきたならもう人としての輪廻には戻せない。

だからそれが悪さする前に何とかして除霊するしかない。

それが人にとっても幽霊にとっても最良の道なんだから。


(とりあえず帰ったら爺さんにも聞くか、今は少しでも情報が欲しい)


僅かばかりの期待を込めて少し足早に寺へと帰る。

門の前では爺さんが暇なんだろうか放棄で掃除をしていた。


「よっす、帰ったぜ爺さん」

「おうよ、なんか掴んだか?」

「無しのつぶてだよ、そっちはなんか無いの?」


そう言うと少し爺さんは考え込んでいたがやがて重い口を開く。


「お前、東雲ってばあさん知ってるよな?」

「あぁ、この前相談受けたしな。何かあったのか?」

「そのばあさんから相談があったんだよ、何でも最近夜中に出歩いてて何処に行ったか聞いても教えてくれねぇって」


たんに夜涼みなんじゃねぇかとも思うがまぁ確かに心配でもあるな。

幽霊は悪霊でもない限り人に害は与えないがそれとは別に事故にあったりはするだろう。

アイツもうら若き女子高生なんだから少しは気を付けろっての。


「分かった、それとなく伝えとくよ」


それだけ伝えるとさっさと自室へ戻り一息つくことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る