それからほどなくして伊吹が起きて撮影が始まったが、それでもさっきの会話がまずかったのか東雲の動きにも表情にもキレは無かった。

そしてその原因がさっきの会話にあるとわかったからこそお昼を過ぎたあたりで今日はお開きにすることにした。

（なんだか最近失敗が多いな）

ファミレスで頼んだメニューが来るまでの間、ずっと机に突っ伏してここ暫くの失態を反芻し続ける。

昨日の京子さんとの癇癪はもちろんのこと、今日だって余計な詮索で東雲を困らせてしまった、監督としてケアさえもできないなんて何のためにいるのやら。

（なんのためにか、ホントなんのためなんだろうな）

正直な所この映画が完成したところでそのあとどうこうしようというのは何も浮かんでいない。

伊吹ならもっとずっと多くのものを作って公開し続けるのだろうけど僕はこれが完成したところで何も変わらないだろう。

もう二度と舞台に立てず、演じることもできないのだから。

だったら何のためにこれを作る？何のために撮っている？

いったい何のために生きている？

それすらも今は分からないままだ。

（ダメだ、帰ったら少し寝よう）

このままネガティブに考え続けたところで事態は好転しないしむしろどんどん悪くなるような気がする。

それだったらいったん脳内をリセットさせた方がいい、それでもう一度考えよう。

それはそれとしてドリンクバーの飲み物を幾つかブレンドしたものを一気に煽るくらいの事は許してほしかった。

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