欠けたピースとDestrudo 4/6
「だからなんです、僕はもう舞台に立てない。期待してくれた人を裏切ったんですから」
もちろんあの日以降も演技をしようと体を動かすことはあった。
でも何かを演じようとするたびにあの言葉が蘇る。
身体を動かそうとするたびに期待してくれた人、見に来てくれた人の視線が突き刺さる。
やっと普通になれたのに、待っていたのはただの生き地獄だった。
だから僕に残された道は二つだけ。
「自分が関わった証を残して死ぬ」か、「鬱屈としたまま何もなせずに生きていく」かのどっちかだった。
つまるところエイケンに所属しているのも、伊吹や東雲に頼んだのもそう。
あの日僕がやりたかったことを代行してもらうためだ。
「そうか、ごめんね。何も知らないのに気楽な事言って」
気が付けば京子さんの顔は今まで見た事がないくらい悲痛な面持ちに変わっていた。
「いいんです、もう過ぎたことですし何より悔やんだところで何も変わりませんから」
「でも、そんなの悲しいよ……」
それ以来京子さんはすっかり黙り込んでしまった。
僕も僕でこの状態で気の利いたことを言える気分でもなく、気が付けば日も沈みかけていた。
「すいません京子さん、せっかく誘ってくれたのに」
「いいよ、もともと私の不注意だもん」
それだけ聞くと踵を返して家路に向かう、今はとにかくこの場所を離れたかった。
「あのさ!」
それでも何かを決意したかのように声が響いて、その方を向いても。
「……ごめん、やっぱり何でもないや」
その表情も真意も読み取れないまま、ただ得も言われぬ悲しさだけが渦巻いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます