観客のいないelegy 3/4
応対を終えて部屋に戻ってから考えを纏める。
婆さんの名前から察するにおそらく娘とはシノの事だろう。
前におばあちゃんっ娘に反応してたしそれは間違いない。
だけど昨日の撮影を見る限りじゃそんな素振りは見せなかったし、一旦連絡でも入れてみるか。
スマホを取り出して個人向けのチャットで東雲に幾らか打ちこんでみる。
【よす、最近どうよ】
【昨日も会ってるし最近も何もないでしょ、何?】
ここは少し悩む、少なくとも依頼があったことを悟られちゃいけない。
【いや最近あちーじゃん?昨日も撮影あったし熱中症でもなってねーかなって思ってさ】
【おせっかいだよ、水分補給はしてるし伊吹こそそう言う管理はしてるの?】
【あたぼーよ、なんせさっき起きたところだしな!】
【不摂取まっしぐらじゃん、いつか倒れるよ?】
それはお前だろと言いたくなるのを抑えて続きを書いていく。
とはいえ返す言葉も少し悩む、こういう依頼のやり取りは苦手だ。
【まぁまぁ、そんときゃ助けてくれよ。俺もシノが倒れたら助けっからさ】
【……余計なお世話、それより自分のことを心配しなよ】
【してるぞ?それ以上にシノも蓮も大事なんだよ】
こういう稼業だ、明日には二人がトラブルに会っててもおかしくはない。
だからそう言う時はすぐに助けに行きたいしそうでなくても傍に居たい。
俺にとって二人はもう欠かせない仲になってると思うから。
【そう、まぁ私は大丈夫だから。何かあったら連絡するよ】
それを最後にメッセージは送られなくなった、シノの話したいことはここでお終いというわけだ。
(とはいえやっぱ簡単には吐かねぇか……)
直球で聞けるのならそれに越したことも無いが、それがうまくいった試しもない。
それにシノから踏み込んでこなければ意味がない、そうでなきゃわざわざシノの婆さんが来た理由が無い。
(こりゃ本当に近いうちに行った方がいいかもな、少し心配だ)
それまでに幾らか連絡を取って直接聞けるのならそうした方がいい。
だけどそれでもダメそうならシノには悪いけど少しだけ調べさせてもらおう。
「ついでに原稿も進とくか、はーまったく兼任作家は忙しいぜ」
どんな時でもスマホ一台あれば出来るのは大助かりだ。
合間合間で書いても次の撮影までには間に合うだろう、こっちも気合いの入れどころだ。
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